開発者インタビュー

GRMN SPORTS HYBRID Concept II

GRMN

ハイブリッドシステムを搭載した、次世代スポーツカーのカタチ

GRMN
開発者
開発者金森 信明氏の写真
金森 信明氏
トヨタ自動車株式会社
スポーツ車両統括部
最初のクルマはダイハツのコンパーノ・ベルリーナで、その後は初代スターレット、マークIIワゴン等を乗り継いでいく。マークIIワゴンにはカートを乗せてカート場まで行くなどクルマは趣味を楽しむために使うものと話す。
開発者北川 文雄氏の写真
北川 文雄氏
トヨタ自動車株式会社
スポーツ車両統括部
トヨタ入社後購入したカリーナGTではダートラなどを楽しみ、思い出のクルマでもあるという。国産、輸入車を乗り継ぎ、現在はスーパーチャージャーを搭載したトムスバージョンのレクサスISを愛用している。

2010年1月の東京オートサロン2010で発表されたオープンミッドシップ・ハイブリッド「GRMN SPORTS HYBRID」。その第2弾として昨年6月にドイツで開催されたニュルブルクリンク24時間耐久レース会場で発表された「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」。前モデルからより進化しているものの、まだまだ開発段階という。今後、新たな境地を開拓するモデルとして注目されるこのクルマについて、開発担当者2人に話を聞いてみた。

──昨年の東京モーターショー2011にも展示され、国内外のお客様の注目を集めていた「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」ですが、この後の展開に興味を持っている人も多いと思います。
まずは、お二人のことを知る上で、若い頃から乗ってきたクルマを教えて下さい。

北川 文雄氏(以下北川):

学生の頃にホンダN360からスタートしてジムカーナを楽しみ、その後は会社に入ってカリーナGTでダートラみたいなことをやっていました。トヨタ社内にもトヨタ・オートスポーツ・クラブというのがあって、そういったクラブで活躍していたクルマを真似て改造を施し、ドライビングを楽しんでいました。会社では試作車の耐久試験などを担当していましたが、元々クルマを運転するのが好きなので、楽しい仕事でしたね。

開発者金森 信明氏のインタビュー写真

金森 信明氏(以下金森):

ダイハツのコンパーノ・ベルリーナが最初のクルマです。次が就職して買った初代スターレットでクーラーが付いていたのが自慢でした(笑)。その後はファミリア、マークIIワゴンなど乗り継いできましたが、当時は趣味でカートをやっていたので、マークIIワゴンに積んでサーキットまで行っていました。その趣味がスキーに変わると今度は四駆に買い替えたりしました。私の場合はクルマで遊ぶというよりは、趣味のためにクルマを使うというのが主流でしたね。

──お二人の人となりが分かってきたところで、まずは「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」にお二人はそのように関わっているのですか。

金森:

企画全体とプロジェクト統括を担当していますが、決してメンバーは多くありません。私と北川さんを含めて数人といったレベルで、それぞれの得意分野を生かして開発に携わっています。普通のクルマの開発のように、さまざまな機能ごとに何十人、何百人が関わって作るという形態ではありません。

開発者北川 文雄氏のインタビュー写真

北川:

私は製作関係を担当しています。今までの経歴が、新しいクルマを世に出す為に認証関係で法規に準ずるクルマかどうかチェックする立場でしたので、その経験を活かしてカスタマイズ車の製作を担当するようになりました。ガズーレーシングでは、「iQ GAZOO Racing tuned by MN」(2009年発売、限定100台が1週間で完売となった)も担当しました。「GAZOO Racing」ができて、そこに社内のクルマ好きが集まって“味探し”をしようとしていた時で、その先頭に立っていたのがマイスター、成瀬弘さんだったのです。この「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」も成瀬さんがベースを作って、それをどんどん味付けしていって現在に至っているのです。

──オープンミッドシップ・ハイブリッドの開発はいつごろから始まったのですか。

金森:

8年前から開発を始めています。最初のモデルは、MR-Sのボデーにハリアーに搭載していた3.3Lのハイブリッドシステムを逆さまに載せて、外板はブリキ細工で作ったようなものでした。そして、ニュルブルクリンクでのテスト走行も行いましたが、その写真が自動車雑誌にスクープされたりしたこともありましたが、決してカッコいいというデザインではなかったですね(笑)。その後、ちゃんとデザインしてコンセプトカー「GRMN SPORTS HYBRID」として2010年に発表しました。2010年までの間、開発が滞っていた時期もあるのですが、ハイブリッド車が全盛となり、エコが声高に言われるようになりましたが、エコ一辺倒に染まってしまうのもいかがなものか・・・、クルマ好きとしては、これからも走る楽しさをアピールしたい。というのが開発のテーマと言えます。特にトヨタはハイブリッド先駆者の自負もある。ハイブリッドでスポーツを楽しめるモデルを作ってみようということになったのです。

──オープンミッドシップ・ハイブリッドのコンセプトは。

金森:

カッコいい言葉は考えていません。何せ技術屋の集まりですから、そういったコンセプトとかは得意としないので(笑)。ただ、オープンカーで、ハイブリッドで、ミッドシップで、スタイリッシュなクルマなので、色んな人の意見や発想も加味しながら考えたいですが、どんなシチュエーションにもマッチするオシャレなクルマを基本としています。海辺に行けば、風の音、波の音を聞きながらEVで静かに走れるように、そして山道では足回りもしっかりしていますので、ワインディングを楽しめる。ただ、サーキットをガンガン走れるような仕様にするつもりはありません。どんなところにも溶け込めるハイブリッドスポーツカーがコンセプトといえばコンセプトですかね。
まだあまり実走テストができないので大風呂敷を広げるわけにはいきませんが、「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」ではレクサスRX450hのエンジンを使っています。しかし、車重はRX450hより600kg軽いので、燃費も加速も結構良い値を出すと思っています。

──レクサスRX450hのパワーユニットをミッドシップに搭載していますが、フロントもモーターで駆動する4WDとしていますが、この狙いは何ですか。

金森:

「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」は車重約1500キロのクルマに300馬力近いユニットを搭載しています。その駆動力を十分に生かすためには4WDが良いと判断しました。

金森:

ミッドシップにハイブリッドのユニットを搭載するとリアが重くなる。特殊走り方をする人には面白いクルマだけど、幅広いドライバーに運転できるようにするためには、4WDにしてクルマが暴れるのを抑えられるようにする必要がありました。その解決策の一つが4WDだったのです。

北川:

最近のスポーツカーなどにも4WDが採用されているように、パワーがあるクルマの場合は暴れを抑えるには4WDが効果的なのです。そのため、RX450hのパワーユニットをConcept Iと同じように逆さまに搭載することで、4WDとしているのです。

開発者北川 文雄氏と金森 信明氏のインタビュー写真

──ハイブリッドシステムでスポーツカーを作ることで、メリットとなることはどんなことがあるのでしょうか。

金森:

ハイブリッドの一番のメリットは、出だしが速いことが一番に挙げられます。動き始めはモーターで加速しますが、モーターは一気にトルクが出るため、力強い加速感が味わえます。元々、3.5Lでもそれなりに速いのに、モーターの後押しがあると結構な加速力となります。
デメリットはハイブリッドシステムで使われているギアは無段変速機なので、スポーツカーとしてはアクセル操作に対するレスポンスが良くありません。無段変速機はギアチェンジのショックがないことがメリットですが、それが逆にスポーティーさに欠けると感じる部分ではあります。ただ、それも感覚の問題とも言えますし、改善策も考えているところです。

──他に「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」でこだわった部分はあるのですか。

北川:

カラーですね。このクルマはまだショーカーのレベルなので、鮮やかなカラーで人目を引くことを考えて、6月にニュルブルクで発表した時から同じ赤でも色を変えています。ただ、このカラーリングを実際に量産車で作れるのかというとそれは難しい面もあります。
写真ではなかなか再現できない色なので、実車で見て欲しいですね。

──「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」は今後、どのように開発が進められるのでしょうか。将来的には販売なども期待して良いのでしょうか。

金森:

コンセプトカーとしては、着実に熟成されてきています。ただし、販売となると、今の状態でもまだまだです。さまざまなお客様に、長くこのクルマを楽しんでいただけるようにするには、まだ多くの時間が掛ると思いますし、解決しないといけない問題もあります。私たちとしては、これからも開発を続けていく情熱もありますし、もっと進化させる自信もあります。ですから、今できることはイベント会場に展示して、お客様の反応や声を頂くことが、今後の「GRMN SPORTS HYBRID Concept II」の開発にとって、とても重要なのです。

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