2012年9月14日(金)~16日(日)、国内で開催される唯一の国際格式ラリー「アジア・パシフィックラリー選手権第5戦」との併催イベントとして開催された全日本ラリー選手権第7戦「RALLY HOKKAIDO」は、すべての走行距離が1000.61km、スペシャルステージ(SS)の走行距離が220.48kmと、国内では最も距離が長いラリーだ。順位により獲得できるポイントが2.5倍となるため、シリーズチャンピオンを争う上でも最も重要な1戦となる。
2日間にわたって競われるラリーのスペシャルステージ(SS)本数は18本。かつてはWRCラリージャパンで使用した30km近い距離のSSも数多くあり、タフでハードなグラベル(未舗装路)ステージでリタイア車両が続出するサバイバル戦ともなった。
金曜日の夕方にラリーの拠点となる北愛国サービスパークで華やかなセレモニアルスタートが行われ、その後、サービスパークに隣接する特設コースで足慣らしともいえるスーパーSSが行われた。
土曜日からは本格的なラリーが始まり、序盤は奴田原 文雄(三菱ランサーエボリューション)が各ステージで好タイムを連発してラリーをリードするが、僅差で奴田原を追う石田 正史(三菱ランサーエボリューション)がSS8で逆転を果たす。2日目に入っても石田の勢いは止まらず、一時は2位の奴田原に20秒以上の差をつけ、ラリーをリードする。終盤に入ると奴田原がペースを上げ8.5秒差まで迫るが、石田が逃げ切り4年ぶりとなる全日本ラリー優勝を果たした。
2位には奴田原、3位にシリーズポイントトップの勝田 範彦(スバル・インプレッサ)が入賞し、勝田と奴田原のシリーズポイント差は0.5ポイントにまで迫った。
クラス別順位結果(上位3クルー)
※クラス区分の説明については、こちらを参照クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
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JN4 | 1 | 石田 正史/宮城 孝仁 | 三菱ランサーエボリューションX |
2 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX | |
3 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ | |
JN3 | 1 | 三好 秀昌/谷内 壽隆 | トヨタ86 |
2 | 香川 秀樹/浦 雅史 | トヨタ86 | |
3 | 村田 康介/平山 真理 | ダイハツ・ブーン X4 | |
JN2 | 1 | 天野 智之/井上 裕紀子 | トヨタ・ヴィッツ RS G's |
2 | 川名 賢/小坂 典嵩 | トヨタ・ヴィッツ RS | |
3 | 南野 保/ポール・サント | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 山口 貴利/山田 真記子 | ダイハツ・ストーリア X4 |
2 | 葛西 一省/安田 弘美 | ダイハツ・ストーリア | |
3 | 高篠 孝介/山岸 毅厳 | トヨタ・ヴィッツ |
国内最長のSSで戦われるラリー北海道は、走るステージがハードなことから、リタイア車両が続出するサバイバルラリーともなった。そのなかには、昨年優勝の柳澤 宏至(スバル・インプレッサ)、海外ラリーの経験が豊富な鎌田 卓麻(スバル・インプレッサ)、ランサーからインプレッサに乗り換えた福永 修(スバル・インプレッサ)といった優勝候補たちが次々と姿を消していった。そのなかで「自分のペースで丁寧に走ることを心掛けています」という石田が、ベテランらしい強さと速さを発揮し、ラリー北海道では3度目となる優勝を果たした。
第4戦の洞爺では三好 秀昌が2位、第6戦の京都では筒井 克彦が2位と、全日本ラリー初優勝まであと一歩まで迫ったトヨタ86が、最も攻略が難しいと言われているRALLY HOKKAIDOでついに頂点に立った。SS2のロングステージでベストタイムをマークした三好 秀昌は、その後もコンスタントにベストタイムを刻み、一度もトップの座を譲ることなくトヨタ86を全日本ラリー初優勝に導いた。2位にも最後まで三好を追従した香川 秀樹のトヨタ86が入賞してワン・ツーフィニッシュを達成。トヨタ86初優勝に華を添えた。
JN4クラスと同様にリタイア車両が続出したJN2クラスは、約220kmに及ぶSSで安定した速さを発揮した天野 智之のヴィッツRS G'sが、今季2勝目を挙げた。また、2位にはシリーズポイントトップの川名 賢が入賞し、シリーズリーダーの座を死守した。また、終盤までもつれた3位争いは、増川 智のヴィッツRSが最終SS手前のSS17で痛恨のリタイアとなり、マシントラブルを抱えて苦しい戦いとなっていた南野保のデミオが3位に滑り込んだ。
ターマック(舗装路)ラリーよりもタイヤのグリップ力が弱いグラベル(未舗装路)ラリーは4WDやFFよりも不利と言われていたFRだが、その下馬評を覆し、2台のトヨタ86が表彰台のトップを奪った。優勝したクスコレーシングのトヨタ86を駆る三好 秀昌は、「トヨタ86はクルマ全体のバランスが良いので、そういった面では不利というよりも逆に有利だと思っていました。距離が長くてスピードの高いラリーは乗りやすいことが重要ですから。チームでも当初からラリー北海道で勝とうという目標があったので、目標通りに勝てたのは本当にうれしいですね」と、ラリーを振り返る。一方、2位に入賞したGAZOO Racingトヨタ86の香川 秀樹も「2戦ぶりのラリーだったので序盤は慎重に走りましたが、特に高速コーナーでの安定性が高いので中盤からは気持ち良く走ることができました。僕が2位に入賞できたのはトヨタ86のおかげだと思います」と、高速グラベルでのスタビリティの高さが長所と語る。今回の優勝でシリーズチャンピオンの可能性も出てきたトヨタ86、残り2戦のターマックラリーも全力で戦っていく。
ラリーの拠点となる帯広市郊外の北愛国サービスパークには、GAZOO Racingブースが出展され、2012年のニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したLFAとGRMN Vitz Turbo Conceptが展示された。LFAはエンジンスタートのデモンストレーションも行われ、ひときわ高く響くレーシングサウンドは、会場を訪れたモータースポーツファンの注目を集めた。また、ステージではトヨタ86でラリー北海道に出場する哀川 翔選手やGAZOO Racingトヨタ86のドライバー香川 秀樹選手、ヴィッツRS G'sでラリーを戦う天野 智之選手、2年連続チャンピオンの勝田 範彦選手たちによるミニトークショー、さらにはトヨタ86でラリーに出場するラックスポーツとクスコレーシングのチーム監督同士によるトークバトルなど、ラリーの魅力を紹介する数多くのイベントが開かれ、訪れたファンを楽しませていた。