Team Land Cruiser TOYOTA AUTO BODY 冒険は止まらない TLC国内訓練レポート 強さの秘訣はチームの熱き想いにあり

2009/11/17

01 5連覇に向けてのプレッシャー

浅間コース訓練全景車両チェック風景、訓練走行シーン

すでにスタートまで2ヵ月を切ったダカールラリー2010。市販車部門5連覇を目指す「TLC」の準備は着々と進行中だ。今回は10月某日、群馬県は浅間で行われたドライバー・ナビゲーター・メカニックの訓練現場を訪れて、TLCの最新チーム状況について話を伺ってきた。

2010ダカールラリーに使用するランドクルザー200ラリー車は11月下旬に行われる確認走行に向けて、現時点ではフランスの車両製造部門のもとで製作の最終段階にある。「ランドクルーザー200ラリー車」のデビューイヤーである昨年は、実戦を含めたヨーロッパと中東でのテストを実施していた。だが今年は、一通りの車両開発を終えているので、そういった実戦には出ていない。TLCは海外での訓練やテストではなく、国内でできる事を工夫して実施している。

作業走行シーン 小川エンジニア
小川エンジニア
三橋ドライバー
三橋ドライバー

それでも常勝のTLC、ランドクルーザーを開発/生産するトヨタ車体の社内チームであるTLCには、再び部門優勝の至上命令とファンの期待がプレッシャーとしてのしかかる……。ランドクルーザー200のラリー車両開発に3年間携わってきた小川エンジニアと、今回もドライバーを務める三橋選手は、いろいろ工夫して参戦準備している現状をこう語ってくれた。

「2009仕様をほぼ踏襲している点で、機械的な信頼性と耐久性に大きな不安はないけれど、やはり場数を踏んでおきたかった思いはあります。ですが同時に、TLCがもっとも勝利に近い位置にあるとの確信もあるんです。ランドクルーザー200の操縦安定性の高さは今回もまた群を抜いていると自負しているし、市販車部門を4回連続制してきたわれわれは勝つために現場で何をすべきかを十分理解していますから。」(小川エンジニア)

「実戦に近い状況でのトレーニングは日本では難しいから、ラリーそのものは一年ぶりのぶっつけ本番という感はある。でもそれって、海外のドライバーの多くも抱える悩みなんですよね。それだけダカールラリーは過酷かつ特殊ってこと。車両性能の優位性は絶対的です。勝てるクルマを任されていることは、誰よりボクがわかってるんです。」(三橋ドライバー)

02 TLCが強いチームである理由

車両整備に余念がないチームメンバー達
車両整備に余念がないチームメンバー達
小川エンジニア
小川エンジニア

常勝チームでありながら、チームスタッフたちのモチベーションは今回も高い。それはスタッフがトヨタ車体やトヨタ系ディーラーの社員で構成されており、その誰もが社命ではあるが、自らの強い意志でチームに参加しているからこそ。モータースポーツへ の想いとダカールラリーへの憧れを実現してくれるのが彼らにとってのTLCであり、それゆえにTLCで過ごす一瞬一瞬に対して貪欲になる。つかんだチャンスは絶対ものにするという気迫がチーム内には漂っている。

小川エンジニアにとって2010年は5回目のダカールラリー。ランドクルーザー200ラリー車をデビューさせ、フランスの車両製造部門との間に強い信頼関係を構築しながら、TLCでエンジニアとして活躍している。

「本音ではこの先ずっとダカールラリーに関わっていたい。だけど、同年代のエンジニアたちが一般車の開発に四苦八苦しているのを尻目に、自分だけエンジニアとしてモータースポーツにかかわるという夢を実現し、華やかな舞台でスポットライトを浴び続けるのは申し訳ないという気持ちも。もちろん勝って当たり前的なプレッシャーにさらされながら、緊張の日々を送ってるんですけどね(笑)。今回も勝ちたい、ランドクルーザーを開発している以上、勝たなければならないのです。」

三浦ナビゲーター
三浦ナビゲーター
福岡トヨタの精鋭メカ達
福岡トヨタの精鋭メカ達

2009年ダカールラリーで、フランス人ドライバーのニコラ・ジボンと組んで2号車を優勝に導いたナビゲーターの三浦選手も、入社5年目のトヨタ車体社員であり、入社から1年後にTLCに加入している。

「ダカールラリーに参戦していることが、実はトヨタ車体への就職動機でした。自分も関われるんじゃないかと淡い期待を抱き、それが実現したわけですから、自分は最高に幸せ者だと思います。社員の代表として良い戦績でゴールし、会社でがんばっている仲間(12,000人の社員)にも元気をあげられたら、すごくうれしいです。」

前回に続いてアルゼンチンに渡る堺メカと今年から加わった松本メカは、実戦ではラリー経験豊富な5名のフランス人メカニックと組みながら、エンジン制御に関する情報のリーダーとしての役目も果たす。二人とも福岡トヨタ自動車の社員。日頃はそれぞれディーラーのサービス業務をこなし、テストと実戦の場ではいわゆるラリーメカニックへと変身する。

堺メカニック
堺メカニック
松本メカニック
松本メカニック

「当社(福岡トヨタ)からTLCにメカニックを派遣すると決まった時には、密かに社長の英断を称えましたよ。子供の頃にテレビで観たルマン24時間の映像に憧れてメカニックを目指し、福岡トヨタに入社したのは、すべてこのためだったんだと思いました。自分が選ばれてもいないうちから。」(堺メカ)

「外国人メカとのコミュニケーションは不安ですが、言葉ではなく作業で語るメカニック特有の言語がありますからね。私もクルマとモータースポーツへの関わりを探るうちにメカニックになった人間ですから、このチャンスはフルに活かしていきたいと思います。」(松本メカ)

彼らの思いはとにかく熱い、そばで話を聞いていると肌がチリチリ灼けてくるほどに。もしかしたらTLCのチームとしての強さは、トヨタ・チームアラコ時代から15年に渡って積み重ねてきたダカールラリーの経験やランドクルーザーの優れた安全性・信頼性・走破性などよりも、彼らスタッフたちの熱さにこそあるのかもしれない。

(文=松村俊司)