レーシングドライバー木下隆之のクルマ連載コラム

297LAP2021.8.23

男女混合耐久レース開催!!

「SDGs」の機運が高まっている。ならば、モータースボーツにも男女混合耐久があってもいい。木下隆之が男女混合モータースポーツの将来を期待する。

SDGsが世界を動かし始めている

「SDGs」という言葉を耳にすることが多くなった。SDGsとはSUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル デベロップメント ゴールズ)の略で、2015年に国連総会で採択された。世界が心を一つにして、地球のために、地球に住む人々のために、持続可能な開発指標を定めたアジェンダであり「2030アジェンダ」とも呼ばれる。2030年までに、国がそれぞれ進めなければならない具体的な指標のことだ。
全部で17の目標が掲げられている。その1は世界の貧困を終わらせることであり、その2は飢餓を終わらせ、食糧の安全や栄養改善、農業の促進などが掲げられている。もちろん紛争の終結や、地球気候変動への対応、グローバルパートナーシップなど、人類として果たさなければならない目標がリストされているのだ。
その中の一つに、「GENDER EQUALITY」が掲げられている。つまり、性別の平等だ。すべての女性と女児に力を与えると補足されている。

トヨタももちろん、SDGsには積極的な姿勢を示している。なおかつダイバーシティ&インクルージョンにも力を入れる。性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、性的指向、性自認、障がいの有無、配偶者や子の有無などに関わらず、多様な才能や価値観を持つ人材が最大限能力を発揮できる社会を目指しているのだ。
女性管理職数を2025年には2014年時点の4倍にするとか、新卒採用時の女性比率の引き上げなど、具体的な数値目標も推進される。すべてを列挙することはまたの機会にゆずるが、ともあれ、SDGsが掲げる性別平等をトヨタとしても前向きに参画すると公言しているのだ。

モータースポーツでもSDGsに貢献できるはずだ

というような資料を読み進めているうちに、すでにスポーツの世界も、その5にあるような「GENDER EQUALITY」が進んでいるように感じたのだ。
女性の社会進出はスポーツの世界でこそ顕著だ。先の東京オリンピックでも女性の活躍がめざましかった。「GENDER EQUALITY」、つまり、男女平等というならば、特に印象的だったのは男女混合競技の充実である。
東京オリンピックは過去最多の33競技339種目が行われた。その中でも、前回のリオデジャネイロ大会の2倍に増えたのが「男女混合」である、東京五輪の最大の特徴であろう。
硬い話はここまで…。

モータースポーツもすでに男女平等が進んでいる。というより、かつては珍しかった女性ドライバーの存在も、最近では馴染みつつある。TOYOTA GAZOO Racingに所属する佐藤久実選手は、日本を代表する女性レーシングドライバーとして活躍している。
「KYOJO CUP」、つまり、女性に限定した競争女子レースの開催も今年で5年目になる。ここから世界に巣立つ女性ドライバーも現れ始めた。
実は、僕らも女性の速さには戦々恐々で(笑)、後塵を浴びせかけられる場面も少なくない。過去に何度か佐藤久実さんにタイムで負けたことがあるほど(極秘)なのだ。
女性は体力や感覚、DNAの点で不利なことがあるかもしれないが、一般的に軽量である点など、男性よりもモータースポーツに適した能力を備えているのも事実であろう。殺伐としたモータースポーツの世界に女性がいることで、サーキットが華やぐのである。

男女混合耐久レース開催

SDGsの機運が高まった今、モータースポーツに男女混合を取り入れてはいかがだろうか。耐久レースならばその可能性は高い。たとえばニュルブルクリンク24時間レースのチーム構成を4人とし、男女それぞれ2人ずつ。それぞれ義務周回数を規定すればいい。
すでに2021年のニュルブルクリンク24時間では、女性だけのレーシングチームが活躍。すべてのドライバーが女性なのはもちろんのこと、メカニックも監督も女性である。
しかも驚かされるのは、話題性を狙ったプロモーション企画ではなく、真剣に勝負に挑んでいたことだ。
日本のスーパーフォーミュラには女性ドライバーが参戦している。女性限定の競争女子カテゴリーも人気である。というように、女性がモータースポーツ界で活躍して久しい。男女混合耐久レース開催のハードルは低い。そもそも、新たな施設が必要なわけではなく、規則を変える必要もないのは都合が良い。ただ単純に、男女混合クラスを設定すればいいだけなのだ。スーパー耐久での開催など、明日からでも可能なのである。
もともとモータースポーツは、道具を使う競技という性格上、陸上や競泳などとは異なり男女の力差は少ない。身体的に過酷なスポーツであることに疑いはないが、パワーステアリングやブレーキブースターなど、筋力の差を埋める技術が充実しつつある。体重が軽い傾向にあるぶん、あるいは女性は有利なのかもしれない。だから男女混合耐久レースは今日にでも開催できるのだと思う。
モータースポーツは競技の特性上、男女が同乗することができない。ラリーではドライバーとコ・ドライバーの性別を分けることが可能かもしれないが、いかにも混合競技らしいスタイルにするのには更なる知恵が必要だろう。
国連総会でSDGsが掲げられ、世界の国家や企業がそれに向かって先陣を切るなか、モーターポーツが率先して「GENDER EQUALITY」を進めることは意義深い。
その最初の一歩が、「男女混合耐久レース」にあるような気がする。

キノシタの近況

東京五輪に参加したサントメプリンシペの代表選手を激励してきました。スーパー耐久に参戦していたサントメプリンシペM4GT4とのご縁で、表敬訪問です。サントメプリンシペは西アフリカの共和国です。知名度低いですよね。最貧国だから代表は3名。これまでのメダル獲得数は0だけど、明るく前向きでしたね。

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