343LAP2023.07.05
「男女混合レース」
最近の女性レーサーのレベルは、日増しに上がっている。KYOJO(競争女子)をはじめ、女性限定のレースが発足し始めているし、女性だけのレーシングチームも少なくない。転じて他のスポーツでは、男女混合の競技が現れはじめている。すわ、レースでも?古くから「男女混合レース」を提唱している木下隆之がその魅力を語る。
男女混合バレーボール
「男女混合スポーツ」がじわじわと広がりはじめている。それを実感したのは、「男女混合バレーボール」の世界大会を観たときである。卓球やバドミントン、テニスなどには混合ダブルスの例があるが、バレーボールでも男女混合が成立することを証明してくれたようで、とても嬉しかった。
僕はかねてから、「男女混合耐久レース」を企画、提唱してきたが、自分の力不足もあり、それを実現させることができずに今に至っている。だが、男女混合バレーボールが盛り上がるその様子を見て、レースで成立しないはずはないという確信を得たのである。
バレーボールはバドミントンやテニスのように、ネットで隔てられた敵と味方が戦うという点で共通している。ただ体格差がプレースタイルに影響するという点で、バドミントンやテニスとは事情が異なるかもしれない。背の高いプレーヤーは圧倒的に有利だし、つまり、総じて高身長の男性が有利だ。
その点を特別ルールとすることで、男女混合バレーボールを魅力的なものにしている。通常は男女同数の6人制で、男女が交互に配置、ローテーションする。つまり、前衛は「男1女2」と「男2女1」に常に変わる。身体能力差を考慮して、ジャンプサーブやバックアタックは禁止されている。スパイクはもちろん許されているが、ボールは表面がスポンジ素材で20グラム軽いのだそうだ。安全面を考慮しての措置である。
これがなかなか面白い。男性のスパイクを女性が拾う場合もあるから、ゲームとしてエキサイティングなのだ。
スパイクが決まると、男女が喜ぶ姿も清々しい。男女共同参画社会らしく…などと時代の正当性を語る気はないが、これをレース界へ応用するのはアリだと思えたのだ。
高評価な女性レーサー
「VITA」をベースにしたKYOJO(競争女子)も盛り上がりを見せているし、レース界で人気のおぎねえ(荻原なお子さん)がチーム代表として進めているドリームエンジェルスレーシングは、女性ドライバーだけで構成されている。ニュルブルクリンク24時間では、チーム監督からメカニックからもちろんドライバーまで、すべて女性だけで戦うチームが注目を集めている。しかもマシンは最速クラスのGT3というから凄まじい。
ヨーロッパでは、次世代の女性F1ドライバーを創出するための、女性限定フォーミュラレースも盛況だ。F4に似た本格的なオープンホイールのマシンで、熱戦が繰り広げられている。
モータースポーツは過去のアノマリーから言うならば、男女の身体的な能力差が現れるようで、女性の活躍はごく一部の特異な才能に恵まれたドライバーに限られていた。だが、ニュルブルクリンク24時間にも参戦歴のある佐藤久実選手のように、男性に混じっても引けを取らないばかりか、男性のプロドライバーを負かすことも少なくない女性ドライバーも存在する。
あれほど重かったハンドルはパワーステアリングの普及によって軽くなったし、操作系も格段に優しくなった。マシン性能が高まったことで、身体的なストレスやフィジカルへの不安は軽減され、これからはますます体力的に差のある女性の活躍が期待できる。さらには、VITAやヤリスといった軽量コンパクトなマシンでは、女性ならではの軽量さが有利に働く。男性を上回るラップタイムを叩き出す女性が増えてきたように思う。
であるならば、男女混合レースが成立しない道理がない。
そもそもレース界は、男女の区別がないままに長い歴史を積み重ねてきた。先のKYOJOは特異な例だが、基本的に性別によってハンディキャップが与えられることなく今日に至っているのだ。規則をそのままに、「男女の組み合わせに限る」とルールブックに一文を添えれば、それで成立するのである。
すでに土壌はできあがっている
時代は、混合モータースポーツ化の傾向にある。プラチナ/ゴールド/シルバー/ブロンズといったドライバーズカテゴリーが定着しつつある現在、「プロクラス」や「アマクラス」だけではなく、プロドライバーとアマチュアドライバーを組み合わせた「プロアマクラス」も設定されている。
そこに「男女混合クラス」があっても、まったく不自然ではない。女性が男性よりもドライビングスキルで不利だとは思わないが、現実的に体力的には男性の方が有利となる場合が少なくない。ならば、これまでの実績と実力でプラチナからブロンズまでのカテゴリー分けが成立している今、「男女混合クラス」がないことの方が不自然なのだ。
障害者スポーツの一つである「車椅子ラグビー」はパラスポーツの中で唯一、選手同士の接触が許されている。車椅子が激しくぶつかり合い、選手が横転することも少なくない。それほど過激なコンタクトスポーツであるのにも関わらず、車椅子ラグビーには男女の区別がないと言うから驚きである。
大概のスポーツは、男女分かれて競技が行われる。だと言うのに、モータースポーツだけが男女の区別がないことに驚かされるのだが、もっと男女の体格差が現れる車椅子ラグビーが男女混合とは…。だとしたら、レースで男女混合チームがないことの方が不自然なような気がするのだ。
実は僕はいま、男女混合レースの設立に向けて企画をしている。男女の体格の違いによりレース参戦を諦めている女性ドライバーにとって、壁を取り払うことに繋がるのであれば嬉しいし、それによって新たな企業の参入を促すかもしれない。もちろん、長年男女混合レースを提唱している僕にとっては、大いなるやりがいになるはずなのだ。
キノシタの近況
8月のK4-GPにはじめて参戦します。軽自動車の10時間耐久レース。エコラン色が強いという。Team TOYOTIRES からGRコペンで戦います。タイヤはトーヨータイヤの「プロクセスTR1」です。遊びでも真剣に、が信条だから、本気で勝ちを狙いますね。