• モタスポコラム その66-璧を全うして頂きを目指す!36号車圧巻の走りでファンを魅了!~SUPER GT 第7戦オートポリス~
    (写真提供 GTアソシエイション)

璧を全うして頂きを目指す!36号車圧巻の走りでファンを魅了!~SUPER GT 第7戦オートポリス~

モタスポコラム その66 2023.10.27

タイトルは、本当は完璧而帰(璧を完うして帰る)ですが、まだ目的は果たしていないので、帰らないで頂上を目指すと、勝手な造語…です。レース終わった時、この言葉が浮かびました。完璧の語源です。

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    (レースも終わり、優勝記者会見も終わりようやくチーム関係者も安堵の時)

そして、What a RACE!これぞレースという意地を見たオートポリスでした。どのチームが勝っても思うことは、レースっていいなと思いますが、何より真っ向勝負の感動をしっかりとファンの心へ届けた一戦となりその場に居られた事がうれしかったです。

では振り返ります。あ!今回飛行機は無事に熊本空港へ着陸しましたよ。穏やかな気候の中で、阿蘇のミルクロードもオートポリスも機内からとてもきれいに見えました。

〇搬入日

あれもこれも追いかけたくなったオートポリス。こんな事だと二兎を追う者は一兎をも得ず…でだいたい失敗します。それがオートポリスでした…。今から謝っておきます。

木曜日に熊本に入ったのですが、肥後大津はそこまで寒くなく…。翌朝、阿蘇のオートポリスに入ると、これが思いの外、冷えていまして寒い…。風があると、日陰はさらに寒く、ちょっと辛い?と思いながらサーキット入りをしたら、半袖のメカたちに遭遇しました。だいぶ朝の早い時間でしたので驚きましたが、100号車STANLEY NSX-GTのメンバーでした。100号車と言えば、前戦での大クラッシュから今季欠場のアナウンスのあった山本尚貴選手のチームです。急遽、木村伊織選手の参戦となって、短い期間の中でほぼ全損となってしまったクルマを修復。そして、木村選手の参戦の準備もしてオートポリス入りですね。

いろんな想いをそれぞれの立場で背負い、ここに来られたんだなあと思いながら、あみちゃんマネに声をかけました。ずーっとこのチームで山本選手のお世話をして来られた方です。声をかけた瞬間、大粒の涙がこぼれ、私はもらい泣きしてしまいました。気持ちを切り替えなきゃという心持ちでこのオートポリスに来られた彼女。チームのみなさんの山本選手への想いを感じました。優しいスタッフのみなさんと山本選手のお人柄、まさに仲間ですよね。そして、クルマにメッセージがあると教えてくださったメカさん。小島監督のご意向とのことで、チーム愛を感じました。山本選手には、来春ぜひ元気な姿を見せてくださることを祈念します!まずは、カラダの心配が一番ですのでしっかり静養なさってください!みんなが待っていますからね!フッカツヲマツ!

サーキットでみんなの様子を見るものの、私は、何か緊張感を持ってしまっていてね…。それはタイトル争いの事を考えていたからです。3号車Niterra MOTUL Zは、今回のサクセスウェイトでは、燃料リストリクターが1台だけ外れませんでした。それだけシーズンを牽引して来たということですね。しかし、速いんだよ3号車。昨年のそうだけど侮れない全く。日産勢は、マシンを日産Zに変えてから好調というと語弊があるかな。サイズが小さくなったクルマは、大活躍です。昨年のシーズンを考えても、今季の活躍は当初から予想できましたね。

そして後半戦でタイトル争いに加わった16号車ARTA MUGEN NSX-GT!今季は2台体制となりましたが、その良さを活かしモリモリ躍進中。36号車au TOM'S GR Supraも開幕戦こそ落としましたが、サクセスウェイト0で臨んだ富士で優勝し、今季の坪井翔、宮田莉朋コンビの強さを思う存分発揮していますね。

このオートポリスでサクセスウェイトは半減するので、戦いは激化。そして、やっぱりトップ3は強いというレースウィークとなりました。

搬入日、寒いし陽が落ちるのも早いし、運転もあるので(ほんとは異常なくらい暗いとこが怖い)18時くらいだったかな。早めに退散させていただきました。夕暮れのミルクロードは美しかったですが、運転しているので写真を撮れないのが残念。ミルクロードは県境で交通量も山の中なのに結構あるんです。だから車に付いていけば山を下れる(怖くない)ので初日は問題なくホテル着。山からたった30㎞の道を下るだけなのに、肥後大津まで来ると暖かいんですよね。金曜からはガツガツ仕事。木曜日にマストの馬刺しは、いただいておきました。

そうそうサーキット内のイベント広場、パドックに向かうみんなの目に止まる車道の脇に大きな横断幕がありましたね(こちらは写真ナシ)。立川祐路選手の引退を惜しむものです。オートポリスさんが準備されていてね、感激しました。これも「愛」だね。

〇予選日

サーキット周辺の混雑を考え、早めに出発。まだ真っ暗でした。これが日本の西にいると感じる瞬間です。暗い中、コンビニに寄ってからGO。サーキットに向かう関係者のクルマもちらほら見受けられますが、FIA F4の関係者でしょうか。出発時間が早いから。でも土曜日は、9時過ぎに走行があるからみんな早いのか。準備があるので2時間前に到着していますからね、チーム関係者は。早いので混雑もなくサーキットへ到着。うっ寒い…。そらそうだ、以前は10月でも雪の心配もしてオートポリスへ行っていましたからね。。

さあ、走行開始!想定した気温よりも低かった様子で、どの陣営も持ち込みタイヤが発動しないと。ツライけどそれはそれで、みんなイコールコンディション。そんな中で、37号車Deloitte TOM'S GR Supraが練習走行トップタイム!サクセスウェイト9kgですので、ここはもう奮起してもらわないとです。2台体制のARTA、ニスモ、トムス、計6台ありますが、今季は37号車以外5台全てが優勝をしているというシーズン。だからとにかく頑張って!でした。

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    (相変わらず仲良しな二人 国本雄資選手とパパになった阪口晴南選手)

厳しい路面コンディションの中、ヨコハマタイヤの19号車WedsSport ADVAN GR Supraも頑張りました。予選2位。朝だったかな、マサ(坂東正敬)監督は、この状況で決勝の組み立てをこう考えているんだけど~と、話してくださいましたが、みんな初めての450㎞レースは試行錯誤。とにかく知恵を絞っていました。レースを見ると、あちこち戦略の違いがわかりましたよね。こういうの楽しいわ。あたりだったりハズレだったりしますが、それも見る側の醍醐味ですからね。

〇サーキットサファリ

仕事の関係で、サーキットサファリに乗車。取材でよく乗りますが、SUPER GTでは久しぶりでした。私の乗ったバスは、オートポリスのラウンジのお部屋のチケットにオプションとしてサーキットサファリがついていたそうですが、そのバスに乗車させていただきました。

ゲストガイドによる解説付きなのですが、解説はサードの脇阪寿一監督でした。お客様も大喜びです。ドライバー目線でお話しされたり、得意のジョークで笑わせてくださったり、適任なのですが、そうですサファリの時間は、サードのクルマも走っています。セッション中なのですよ。ヘッドセットもつけたまま、解説をしてくださいました。

脇阪監督が現役時代は、サーキットサファリのバスに速度を落として近寄って手を振ってくれたりもよくありましたね。彼のファンサービスのひとつだったかも。一緒に走るのももちろん良いのですが、全開でバスの横をすり抜けるのも迫力が伝わるのでどちらもありですね。

乗車されたお客様は、楽しそうでね。バスに乗れるだけでも良い経験になります。チケット激戦ですので大変かと思いますが、機会があれば一度参加していただきたいコンテンツです。各サーキットによって、内容が異なりますのでぜひお調べになってご参加くださいね。

〇予選

今回は、Q1で日産勢が全車沈みました。意外でした…。TGRでは、好調なまま37号車がQ1をトップタイムで通過。そして驚きだったのは、36号車が12番手で脱落したことでした。アタック出来てない状況だったそうです。残念…。これが翌日、決勝での闘志にさらに火をつけることとなりました。Q2へは、TGRは5台進出とこれまでなかった展開?でちょっと驚きました。

GT300クラスで、2号車muta Racing GR86 GTを駆る若手コンビ、堤優威選手、平良響選手、加藤寛規選手がポールポジションを獲得!頑張りました。300 もタイトル争いにからむクルマが上位に来ていました。31号車のapr LC500hも3番手に付けました。嵯峨宏紀選手、小高一斗選手、根本悠生選手組ですね。前戦の菅生での大クラッシュを取り戻したいですよね。

GT500クラス予選3番手に入った39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra。ここんとこ調子が良いですよね。今季体制が変わって、新たにお迎えした柏木良仁エンジニアがどんどん良い仕事をしています。トラックエンジニアでもベテランですので、ライバル陣営からの移籍で担当されるクルマは変わりましたが、本領発揮でしょう。

そして、多分初めてと宮本チームマネ―ジャーがおっしゃっていましたが、関口雄飛選手がクルマの仕上がりをとても良いと褒めたそうです。予選前に伺いました。ここ数年39号車は苦労していましたので、この進化はうれしいですね。チームそのもののアップデートにも繋がりますよね。その結果が予選3位というカタチになりました。

予選日の帰路(今回一人移動の私にとって大問題)は、少しだけサーキットを出る時間が遅くなりましたが、誰かのクルマについて行こう作戦!で出発。途中、前と離れてしまってひとりぼっちの区間が長く失敗。ハイビームにしないと灯りがないので道路が見えません。何も見えない癖に何か見えるんじゃないかの妄想おばさんは恐怖の中運転。そしてミルクロードは、クルマ酔いすることが多いのですが自分で運転しているのに酔うという経験を初めてしました(笑)。昼間、サーキットサファリの時に、脇阪監督をずっとスマートフォンで動画を撮っていたのですが、注視しすぎたのがいけなかった。あれから一日中ぐるぐるで。ホテルに到着して、寝るしかなかったです。おやすみなさい。

〇決勝日

ほんと昨晩のクルマ酔いぐるぐるレポとか何もいらない、あの決勝ですよ、決勝!ご覧になりましたか?記憶に深く刻まれた素晴らしいレースとなりましたよね?みなさん! ライバルであっても、36号車の走りは天晴れと思う戦いでした。タイトルを争うトップ3の車両、やっぱり強い! 3号車、16号車と36号車の真っ向勝負は、これぞSUPER GT!

シーズン中、車検で違反が見つかったりなどもろもろ後味の悪い事が結構あった異例の「シーズンで(みんなは真摯に戦っているんだけど)、あのバトルに泣きそうになりましたね。このコラムをご覧の方は、あのレース展開を知らないということはないと思いますので遠慮なく割愛。坪井翔選手が素晴らしい追い上げをしたにも関わらず、莉朋の走りに魅了されているのがわかりましたよね?ピットでの表情が素でレースを楽しんでいる感じで、トップドライバーがかわいらしく見えました。坪井選手の悔しさを晴らすのがチームメイトの役目と莉朋。ほんと彼は真っすぐでやってのけました。驚異ですよね、12番手スタートから、申し訳ないけど勝つなんて思ってないし(ごめん)。坪井くんが7台抜いてくれれば優勝できると思っていたなんて言えます?これができる実力があるのが、プロなんでしょうね。

タイヤに厳しいサーキットですので、タイヤを持たせたもん勝ちのオートポリス。早目のピットが多かった中、3分の1まで引っ張って頑張った坪井選手の頑張りから、残りの爆速オーバーテイク祭りへと繋がった二人の走り。サクセスウェイトも全く気にならないクルマの仕上がりもびっくり。これはライバル3号車も16号車もそうで、こんな表彰台。やっぱ強い3台だわ。

3台どのクルマも勝ちそうなので、撮影のタイミングを考えていましたが、レース残り10周でトムスがぐんぐん伸びて行ったのでピットに向かいました。吉川マネは途中から見ていられないとピットの外に居たり、チェッカーを受けてからの準備に取り掛かったり。彼女を何年も見ていますが、見ていられないという気持ちは母のようで、みなさんもよくわかりますよね。大所帯の切り盛りする頼れるベテランマネージャーになりました。って書くととっても私偉そうに書いていて嫌ですが、前も書いたかな?彼女が学生時代、専門学校のインターンとしてメカニックでサーキットに来ていました。その頃から知っているので、娘みたいなコですが大好きなんですよ、頑張り屋さんでね。だからその母みたいなコの母だから許してね(笑)。学生時代の彼女は、ツナギ着てタイヤ運んでたんだよね。

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    (レース終盤、やっとお昼のカップラーメンをすするチーフメカニックサミ)

せっせと朝から休まずに働いていたのでしょう。ようやくお昼も食べずに仕事をしていたチーフメカのサミがカップラーメンをすすったのは、決勝残り10周を切った時でした。お疲れ~の意味でパチリ。ホントみんな働きものです。

自チームがトップを走行している時ほどさっさと終わってと言う気持ちにスタッフはなると思います。77周で3号車をパス、87周で16号車をパスし残り10周となると、メカたちもそわそわ。テレビが目の前にあるのに立ち上がって別のモニターを見たり…。まあ、そうなりますよね。そんな様子を優勝やらタイトル争いやら、長年見て来ましたがとても良いものですね。

ふと5月の第2戦富士のレースを思い出しました。36号車が勝利した時、チェッカー直前で、GT500クラスで優勝するのが初めてなんです!と言って来たメカがいました。ハンヤくん。他チームから移籍して来た彼のうれしそうな顔は今でも忘れません。「初めて」は誰にでもあるもので、その感動は一勝忘れないと思いますし、自身のキャリアにも勲章が増えます。あの時は、そう声をかけてくれた事で自分のことのようにうれしくなりました。ハッピーなことはみんなでシェアすると倍になるとはこういう事だなって。

某チャンピオンチームの強面の工場長さんは、20年以上前に初めてお目にかかった時、お酒の場だったので、ゆるゆる話をしていたら〇年のチャンピオンメカニックだよと話してくれたのを記憶しています。あの時から、メカは戦績が勲章なんだなと学びました。チームの歴史という感覚だったんです、戦績は。「違い」をとても感じました。勝ち取ったという意味で。

おはよう!なんて気軽に挨拶できるスタッフがあちこちに増えた昨今、仕事なのに応援だけの為にサーキットに行ってる感があります(ごめんなさい)。がんばって!と声をかけると何倍もの元気なお返事が返って来るんです。ほんと清々しい瞬間で若者の頑張っている姿に元気をもらっています。もちろん我々シルバーチームも頑張っていますけどね(笑)。

〇立川祐路選手 ラストランが近づきました

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    (動画は笑っているのが沢山あるのですが、すみません写真はイケメン成分のみです)

残り2レースだなんて嘘でしょ?という圧巻の走りを見せた立川選手。ここんとこ気づいた変化があります。このオートポリスは特に感じたのですが、ファンサービスがハンパないんです。時間を惜しむことなく、笑顔いっぱいでファンとの交流を楽しんでいます。レースをやりながらですので、「引退」とかなくてもレースウィーク大変だと思うんです。しかし、立川選手は楽しんでいます。さみしくなるのも承知でね。きっと彼のファンで良かったと思う方が増えているはず!

そして、今回も予選Q1を担当したチームメイトの石浦宏明選手。ほっと胸を撫でおろしていました。サクセスウェイトも半分になるオートポリス、激戦でとても緊張した中での予選だったと思います。いつも笑顔でお話ししてくれますが、いつも以上に笑顔でした。さて最終戦は、予選Q1、また石浦選手なのかしら?そして、サーキットで引退セレモニーも土曜日からありますよ!ここお見逃しなく!いろいろ立川選手の為に準備をしている情報が入って来ております。すべて取材出来たらいいけど、無理だろうなあ。これだけ偉大なドライバーだからね。

次は、ありきたりのフレーズが心に沁みますが、泣いても笑っても最後のレース! それぞれのクルマがそれぞれのシーズンを終えます。ぜひ現地で感動を味わって欲しい。来られない方もぜひ、戦いを見て欲しいですね。最後は3メーカーの闘志がみなぎるラストレースになります!お楽しみに! 

大谷幸子の近況

シーズンもラストスパート。日々バタバタしておりまして、休みたいけれど、オフになればたくさんお休みはあるしと、頑張っております。バタバタ時間が過ぎて行くのがもったいないです…。もっと味わいたいですが仕方ない。そうそう、ようやくこのコラムのことを気づいてくれる方が増えました(笑)。細々頑張っております。ありがとうございます。

そして、20年あまり通って初めて食べたオートポリスの牛串は、他にないお味でした。サードさんありがとう!やわらかい…ヤバい美味さ。熊本の赤牛は美味しいのよね。来年も食べられたらいいなあ(笑)。ほな、また!

(写真 GTアソシエイション、大谷幸子)

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