TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかる、山本雄紀が、4月18日(木)から21日(日)にかけてクロアチアの首都ザグレブを中心に開催された、FIA世界ラリー選手権(WRC)第4戦「クロアチア・ラリー」に、GR Yaris Rally2で参戦。Rally2車両で初めて出場したターマック(舗装路)ラリーを走破し、山本はWRC2カテゴリー11位で、小暮は12位で完走しました。
2021年に初めてWRCの一戦として開催されたクロアチア・ラリーは、非常に難易度の高いターマックラリーとして知られています。ステージは全体的に道幅が狭く、ハイスピードなコーナーもあれば、曲がりくねったテクニカルなコーナーもあるなどバラエティに富んでいます。また、クレスト越えやジャンプなど、クルマが上下方向に大きく動くステージも多くあります。ターマックとはいえ舗装の状態が悪い区間が多く、舗装が崩れたところを異なる材質で補修し、凸凹になっていたり、グリップが異なったりするなど、このラリーに初めてRally2車両で出場する小暮と山本にとっては、非常にチャレンジングなイベントでした。
クロアチアは路肩をインカットできるコーナーも多く、出走順が後方の彼らは、前走車が路肩から掻き出した泥や砂利で非常に滑りやすくなった路面を走ることになりました。また、ステージが始まる前に走行して路面の状態をチェックし、ペースノートの情報をアップデートする役割を担う「グラベルクルー」と仕事をするのも今回が初めてでした。彼らにとってはあらゆる要素が新しく、そのため今回はできるだけ多くの経験を積むことが最大のテーマでした。
競技初日、金曜日のステージは順調に進みましたが、午後の最後のステージでふたりはスピン。山本はそのまま走り続けることができましたが、小暮は不運にもコーナー内側のバンクにクルマが当たり、ラジエターが破損したためデイリタイアとなりました。小暮は翌日のデイ2で再出走し、午前中には小さな技術的な問題に見舞われましたが、ミッドデイサービスで解決。午後は両者とも最初のステージでスピンを喫しましたが、ステージを重ねるごとにスピードを高め、自信をつけて行きました。しかし、午後の最後のステージで、山本はフィニッシュまで2km弱のところでコースオフ。デイリタイアとなりました。山本は最終日のデイ3で再出走し、WRC2カテゴリー11位でフィニッシュ。一方、小暮はWRC2カテゴリー12位でクロアチア・ラリーを走破。非常に難易度の高いこのラリーで、多くの貴重な経験を積みました。
小暮ひかる:
これまでで最も大変な週末でした。金曜日の午前中は、夜中に降った雨のせいでコーナーのインカットによって出た泥がぬかるんで非常に滑りやすく、かなり注意して走りました。午後は路面が乾いてきて自信を持つことができたので、少しプッシュすることができましたし、タイムも良くなって行きました。残念だったのは最後のステージで、グラベルが多く出ているコーナーに少しオーバースピードで進入してスピンし、コーナーイン側の土手に接触してラジエターを壊してしまったことです。それでも、自信とペースが日に日に上がっていったのは良かったと思います。学ぶことが多く、特にグラベルクルーとの仕事は、今回のラリーで僕らにとって新しい要素のひとつでしたし、将来に向けて全てがいい経験になりました。
山本雄紀:
今回のラリーでは本当に多くのことを学びました。クロアチアが本当に厳しいラリーだということは知っていましたが、最初のステージは泥が多く、最もトリッキーだったので、これは本当に難しいチャレンジになると実感しました。しかし、ラリーを終えた今、このイベントに対する自分のアプローチには満足しています。最初の2日間は、ペースがどんどん良くなって行きました。残念だったのは土曜日の最後のステージで、クレストを超える際にスピードが速すぎて、コースアウトしてしまったことです。それでもほぼすべてのステージを完走することができましたし、インカットやグリップの変化、グラベルクルーとの作業など、本当にいい経験を積みながらほぼ全ステージを走ることができたので、いい週末になったと思います。
ユホ・ハンニネン(インストラクター):
クロアチアに来る前から、我々のドライバーたちにとって大きなチャレンジになることは分かっていました。プレイベントテストではとても好調でしたが、天候が良すぎたため、ラリー本番で初めてマディで滑りやすいコンディションに直面することになりました。タイヤの組み合わせなど、彼らにとっては全てが初めて経験することだったので、ラリー中にそのようなコンディションでのドライビングを学ぶのは難しい作業だったと思います。かなり忍耐が必要なラリーでしたが、彼らのアプローチは非常に良かったと思います。ふたりとも小さなミスはありましたが、経験が浅いが故にそのようなことは十分起こり得ると予想していました。いくつかのコーナーを除き、彼らが基本的に全てのステージを走り切ったことを本当に嬉しく思います。そして、コンディションが少し易しくなった時の彼らのパフォーマンスは、トップタイムから1kmあたり1秒少々遅れという、とても勇気づけられるものでした。最も重要なのは、彼らがここに来て多くの経験を積んだことにより、次回はもっと楽に走れるということです。そして、このようなWRCイベントで学ぶべきことが沢山あるということに、彼らが気付いたことです。
クロアチア・ラリーの結果(WRC2クラス)
1 Nikolay Gryazin/Konstantin Aleksandrov (Citroën C3 Rally2)
2h49m44.9s
2 Yohan Rossel/Arnaud Dunand (Citroën C3 Rally2)
+38.2s
3 Pepe López/David Vázquez (Škoda Fabia RS Rally2)
+2m41.0s
4 Nicolas Ciamin/Yannick Roche (Hyundai i20 Rally2)
+3m00.7s
5 Eyvind Brynildsen/Jørn Listerud (Škoda Fabia RS Rally2)
+5m24.3s
6 Lauri Joona/Janni Hussi (Škoda Fabia RS Rally2)
+6m31.7s
11 山本 雄紀/マルコ・サルミネン (Toyota GR Yaris Rally2)
+22m36.8s
12 小暮 ひかる/トピ・ルフティネン (Toyota GR Yaris Rally2)
+23m47.4s
■次回のイベント情報
小暮と山本の次戦は、5月9日から12日にかけて、ポルトガル北部のマトジニョスを中心に開催されるWRC第5戦「ラリー・ポルトガル」です。ポルトガルは路面のコンディションがステージの1回目の走行と2回目の再走時で大きく変わるのが特徴です。1回目に走行する際は多くの砂利や砂に覆われていますが、2回目では砂が掃けて下から硬い岩盤や石が現れることが多く、経験の少ないドライバーにとっては学ぶべきことが多くあるラリーです。
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