3月4日(土)〜5日(日)にかけて、愛知県新城市を拠点に2023年シーズン全日本ラリー選手権(JRC)第2戦「新城ラリー2023 Supported by AICELLO」が開催され、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS Rally2)は最終日にリタイア、眞貝知志/安藤裕一組(GR YARIS GR4 Rally DAT)は、JN-1クラス5位で完走を果たしました。
「人材育成」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の実践を目的に、全日本ラリー選手権に参戦するTGR。GRヤリスをベースとする「GR YARIS GR4 Rally」の2シーズンにおよぶ参戦を経て、2023年から新たに勝田/木村組がGR YARIS Rally2、眞貝/安藤組がGR YARIS GR4 Rally DATのステアリングを握ります。
勝田選手が走らせるGR YARIS Rally2は、WRCをはじめ世界各国のラリーで多くのカスタマーが使う「Rally2」車両の開発テストを目的としたものです。車両は現在開発中のため、全日本ラリー選手権の規定に合致していない部分があることから、今回は賞典外のオープンクラスでの出走となりました。一方、眞貝選手が運転するGR YARIS GR4 Rally DATは、新開発中の次世代スポーツ自動変速機DAT(ダイレクトオートマチック)を搭載しており、全日本ラリー選手権には初参戦のクルマです。
チームはこれら新型車の準備に専念するため、開幕戦「Rally of Tsumagoi 2023」への参戦を見送り、舗装のスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間)を舞台に行われる新城ラリーで、2023年の初戦を迎えました。20周年記念大会となる今回、新城ラリーは4年ぶりに有観客開催を実現。サービスパークが置かれた県営新城総合公園では、TGR-WRTの豊田章男会長、ヤリ-マティ・ラトバラ代表、勝田貴元選手らが参加して、大観衆のなかデモンストレーションランも行われました。
3月3日の夕刻に新城市内の新城文化会館で行われたセレモニアルスタートに続き、翌4日に行われたラリー初日。新型車の習熟に努めた勝田選手はスピンに見舞われる局面がありながらも、JN-1クラスの2番手に相当するタイムで走り切りました。眞貝選手も様々なセッティングを試しながら、JN-1クラス7番手につけています。
ラリー最終日、前日に続き自身のペースで走行を続けていた勝田選手は、ウェットコンディションとなったSS10でコースオフを喫し、車両のフロント部にダメージを受けたため、ラリー続行を断念。すべてのSSを走り切ることはできませんでしたが、GR YARIS Rally2のデビュー戦で貴重なデータを収集しました。眞貝選手はこの日、クラス7番手からスタート。徐々にペースを高めていき、ふたつ順位を上げたクラス5位で完走を果たしました。
■豊岡悟志(TGRチーム監督)
今年は、新しいクルマを2台投入するという大きな変化の年です。走行のための準備も大変でしたが、開発中のクルマを走らせるためにJAFや主催者をはじめとする多くの関係者にご理解とご協力をいただき、感謝しています。また、久々の有観客開催ということもあり、非常に多くの観客の方から応援をいただき本当にありがたかったですね。選手はもちろんのこと、私たちにとっても大きな励みとなります。実際にラリーを走って2台とも様々なトラブルが起きてしまいましたが、勝田選手/木村選手、眞貝選手/安藤選手から数多くの改善点をもらい、今後に向けて実のある参戦になったと思います。今回のラリーでは、フィンランドからメカニックとエンジニアに来てもらったことで、一段高いレベルの考え方や動きを目の当たりにすることができました。全日本ラリーでともに戦ったメカニックやエンジニアがTGR-WRTに行って成長して、再び一緒にクルマを走らせる。こうした取り組みはチームにも刺激になりますし、とても良いサイクルになっていると感じています。切磋琢磨が生まれる良い環境を、チームや会社の中に根付かせていきたいですね。
■勝田範彦(ドライバー)
ラリーを通じて少しずつドライビングにも慣れてきたのですが、ウェットコンディションのSS10において、予想と違う挙動に対応しきれず、クラッシュしてしまいました。今回、サポートとしてフィンランドからエンジニアの方がチームに加わり、ラリー中もこれまで経験したことがないほどのレベルで細かくセッティングの調整を行ってくれました。私自身もまだまだクルマに慣れておらず、“対話”できるレベルに至っていないのが実情ですが、将来GR YARIS Rally2を世界中で使ってもらうための、まさにここがスタート地点だと実感しています。今後も走行を重ね、開発を進められるようチャレンジを続けていきます。
■眞貝知志(ドライバー)
今大会から、次世代スポーツ自動変速機のDATを搭載したGR YARIS GR4 Rally DATでラリーに参戦します。初戦を5位で完走し、貴重なデータを数多くチームに持ち帰ることができました。事前のサーキットテストでは出なかったような課題が次々と発生して、やはり実戦は多くの学びがある場だとあらためて実感しています。また、様々なコンディションの道を走ったことで、足まわりのセッティングに関して多くの仕様を試すことができましたし、課題を改善するヒントを得ることができました。今後に向けてポジティブな内容の一戦になったと思います。
■丸田智(チーフメカニック)
チーフメカニックとして、自分を含めて10人のメカニックチームを取りまとめます。昨年までは2台のGR YARIS GR4 Rallyを並べていましたが、今年はまったく違うクルマなので、それぞれ集中して取り組めるよう人選しました。まだ2台とも走り始めたばかりで色々な課題が見えてきた段階ですし、様々なデータを持ち帰ってきてくれる選手の皆さんには感謝しています。メカニックの顔ぶれは昨年のメンバーが全員残って、そこに新メンバーが加わるかたちです。ラリーの動きも分かっていますし、昨年の成長分に、さらに上積みができると考えています。今大会は車両が到着して間もないタイミングでしたが、今後はGR YARIS Rally2の整備に向けた訓練も進めていきます。
■飯田直樹(勝田号メカニックリーダー)
今季も引き続き、勝田選手のクルマのメカニックリーダーを担当します。車両がRally2に変わりましたが、フィンランドのTGR-WRTからエンジニアとメカニックが来日し、サポートをしてくれています。今はWRTのメカニックの方に指導してもらいながら、クルマのことひとつひとつ習得している状態です。クルマはあらゆる部分が整備性の向上や性能を出すための作りになっていて、そういったクルマを整備できることにも感謝しています。情報共有もスムーズにできていますし、助言を得ながら作業ができた点は、メカニック全員にとって自信を持てたポイントだと思います。次戦以降に向け、いい感触を得ることができました。
■升田孝輔(眞貝号メカニックリーダー)
今年から眞貝選手のクルマのメカニックリーダーを担当しています。一昨年は眞貝選手、昨年は勝田選手のクルマのメカニックを担当していました。GR YARIS GR4 Rally DATは、ベースこそこれまでと同じGRヤリスですが、DATはオイルの調整などもこれまでと異なりますし、これまで45分でやれていたことが現時点ではできていないという場面もあります。ですので、作業の手順についても試行錯誤しながらメカニック全員でレベルアップする必要性を感じています。新メンバーも加わりましたし、リーダーとしてメカニックチームを引っ張り、皆を巻き込んでいけるリーダーになりたいと思っています。
■行木宏(GRヤリス Rally2 プロジェクトリード)
2021年にはTGRチームのエンジニアサブリーダーとして全日本ラリー選手権に帯同しており、現在はフィンランドのTGR-WRTでGRヤリス Rally2の開発を担当しています。GRヤリス Rally2はヨーロッパの道で多くの走行テストをしていますが、日本の実戦で走り、整備を行うことで、新たな気づきが得られると考えています。勝田選手と木村選手、日本のメカニックのみなさんと協力して開発を進め、世界中のカスタマーに乗っていただけるクルマに鍛えていきたいと思っています。今回のラリーでは日本の道に合わせたセットアップも試すことができました。今後もウェットなど異なる路面条件での知見を蓄積し、開発に活かしていきたいと考えています。
■皆木俊(レクサス性能開発部)
DATの制御開発を担当しています。昨年もラリーチャレンジなど走行負荷のかかる状況でテストを重ねてきましたが、将来の量産化に向けてDATをさらに鍛えるべく、全日本ラリー選手権に初めて投入しました。眞貝選手がクラス5位完走という結果でしたが、ドライバーの意図にあった変速ができていない場面や、温度管理など様々な課題が見つかりました。これらのデータをひとつひとつ解析して、それをフィードバックしていくことが大切だと考えています。ATでもこれほどの性能を出せるということを多くの方に知っていただきたいですし、ATならではの使い勝手の良さと性能を両立させ、多くの方に楽しく乗っていただけるものにしたいと思っています。
全日本ラリー選手権第2戦 新城ラリー2023 Supported by AICELLO
JN-1クラス最終結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川 紗衣(シュコダ・ファビアR5)
44:42.1
2 福永 修/齊田 美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)
+1:50.1
3 鎌田 卓麻/松本 優一(スバルWRX STI)
+2:11.4
4 新井 大輝/金岡 基成(プジョー208 ラリー4)
+2:23.0
5 眞貝 知志/安藤 裕一(GR YARIS GR4 Rally DAT)
+3:24.1
6 新井 敏弘/保井 隆宏(スバルWRX STI)
+3:36.8
7 小濱 勇希/竹下 紀子(トヨタGRヤリス)
+4:20.2
8 松岡 孝典/北田 稔(トヨタGRカローラ)
+6:50.2
9 金岡 義樹/朴木 博則(シュコダ・ファビアR5)
+12:53.6
参戦9台、完走9台
JN-1 OPクラス
R 勝田 範彦/木村 裕介(GR YARIS Rally2)
TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGR YARIS GR4 Rallyで全日本ラリー選手権に参戦し、将来の車両開発に活かします。
TOYOTA GAZOO Racingの全日本ラリー選手権(JRC)における活動は、パートナー企業の皆さまによって支えられています。