昨年の成績が証明する安定感
最終戦の舞台は2年続けて鈴鹿サーキット。2014年の最終戦はウエットレースで、すでにチャンピオンを決めていた谷口信輝選手が独走し、元嶋佑弥選手が予選7位から追い上げて見事に2位表彰台を獲得した。
プロフェッショナルシリーズのエントリーは43台。これは第3戦や第7戦の富士スピードウェイと同数で、今シーズンのプロフェッショナルシリーズを戦ったドライバーたちが集結した形だ。しかしフルグリッドが40台となる鈴鹿サーキット。プロフェッショナルシリーズ創設以来初めて3台が予選落ちとなる。
すでにシリーズチャンピオンは#1谷口信輝選手に決まっているものの、プロドライバーにとっては成果を残すための最後のチャンスでもある。熾烈な戦いが予選から始まっていた。
予選は雲り空。開始早々に#60服部尚貴選手が2分31秒を切る驚速のラップタイムを記録。結果的にこれを上回るタイムは出せず、第3戦富士スピードウェイ以来のポールポジションを獲得した。2位には#17織戸学選手、鈴鹿を得意としているという#370元嶋佑弥選手が一発の速さを発揮して3位。この3人がコースレコードを記録した。
日曜日の決勝レースは、予報通り雨となった。未明から降り続いていた雨は、決勝が始まる直前までは小康状態となっていたものの、フォーメーションラップがスタートすると同時に、再び強い雨が降り始めていた。
スタートはクリーンだったが、すぐに織戸選手がトップに立った。しかし130Rでは服部選手を交わした元嶋選手が追い付き、ストレートで横に並ぶと、1コーナーにトップで進入したのは元嶋選手だった。
織戸選手の反撃が弱いはずもなく、ピタッと元嶋選手の背後に付け、強烈なプレッシャーをかけ続ける。しかしその後、織戸選手が大きく姿勢を乱してタイムロス。2台の差は拡がった。
元嶋選手は織戸選手の見えないプレッシャーを感じ続け、ギリギリの走りを続けていく。しかし雨と鈴鹿が得意という元嶋選手は、大きなミスをすることなくトップチェッカーを受けた。2013年から参戦し、昨年の2位の鈴鹿で初めての優勝を勝ち取った。
2位には織戸選手、3位には予選13位からジャンプアップに成功した#7山野直也選手が入った。不安定なウエット路面で多くのドライバーが安定感を欠く中、ジムカーナで鍛えた巧みなマシンコントロールで10台をオーバーテイクするという、見事な走りだった。
また#906阪口良平選手は、予選19位からスタートし10位でレースを終えた。これによって阪口選手は、今シーズン8戦全てでポイントを獲得した唯一のドライバーとなった。
決勝結果 プロフェッショナル
- Rank
- Driver
- Car name
- Total time
- Gap
-
- 1位
- #370 元嶋 佑弥
- GY RACING 86
- 22'07.980
- -
-
- 2位
- #17 織戸 学
- モルフォ頭文字DサミーK186
- 22'11.101
- +3.121
-
- 3位
- #7 山野 直也
- CABANA P.MU 86
- 22'11.485
- +0.384
-
- 4位
- #34 佐 々木 雅弘
- asset・テクノBS86
- 22'24.049
- +12.564
-
- 5位
- #11 Charles Ng
- BRIDE ADVAN86
- 22'25.982
- +1.933
他カテゴリーのライバル同士の戦いにも注目
プロフェッショナルシリーズには、ベテランのメジャーなプロドライバーだけでなく、他のカテゴリーで活躍し将来を有望視されている若手ドライバーも数多く参戦している。#370元嶋佑弥選手(中央)、#97近藤翼選手(左)、#87久保凛太郎選手(右)の3人は、若手の登竜門として注目されているワンメイクレース、ポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン(PCCJ)でもライバルとして戦っている。今回のレースでは3人とも、トップ10入りする活躍を見せた。近藤選手にそのライバル関係を聞くと「ボクはPCCJで勝てなかったんですが、86/BRZレースではランキングは一番上で、という感じで、これからもお互いに競い合ってレベルアップしていきたいですね」。元嶋選手は「2人とも速いので、いつも目一杯で戦っています。PCCJではチャンピオンを取れましたが、86/BRZレースでは今シーズンはイマイチだったので、最後の最後に勝てて良かったです」。エンジンパワーは200psで、86/BRZは決して速いマシンではない。しかし多くのプロドライバーが揃って口にするのは「ワンメイクで言い訳ができないから、ガチのレースができる」ということ。速さではなく、真剣勝負にこそ、注目してもらいたい。
応援する形も様々
#30青木孝行選手のチーム、ケー・エム・エス レーシングは、埼玉県さいたま市の金型のおも型を作っているメーカーが母体。応援団が駆けつけるのが恒例で、富士スピードウェイでは60名以上が集まる。チーム監督でもある北見雄一さんは「金型というのはモノ造りの基本で、7~8割は自動車関連の仕事です。実際に86でも、ドアミラーやサウンドクリエーターなどに関わっているんですね。でも若い人はクルマに興味がない、走る喜びを知らない。それでウチの会社の従業員だけでなく、取引先を含めて、レースを見てもらいたい、一緒に応援しようよ、ということでやっています」。その効果は明らかだという。今回応援に来た松梅友之さん(左)は「もう10回くらい応援に来ています。初めて来た時はタオルを使った一体感のある応援で、ビックリしました。応援も楽しいですが、自分でできれば一度走ってみたいと思っています」。レースを観るのは勝ち負けだけではない。クルマの持つエネルギー、走る楽しさもぜひ感じてもらいたい。