メニュー

1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
第5回:JGTC 1999年 第5戦 富士 決勝

栄光の向こうにあった勝利 No.6 ESSO Tiger Supra 野田英樹/ワイン・ガードナー 1999年8月8日 JGTC 第5戦 富士 決勝

栄光を獲得した男は、自信があった。だが、そのスタイルが上手くいかないとなれば、どうするのか? 栄光を汚さないためにも"辞める"という手もあったはず。だが、彼は走り続けた。日本で応援してくるファンのため、支えてくれるスタッフのため、そして自分のために。新しい走りを見つけ、我慢の末に得た勝利は、あまりにあっけないものであった。

大人気の世界チャンピオンがJGTCに参戦

 4輪レースの世界と同様に2輪、オートバイの世界にもワールドグランプリがある。このグランプリの最高クラスGP500(現在はMotoGP)で世界チャンピオンとなり、その後に全日本GT選手権(JGTC)でも優勝を手にした男がいるのをご存じだろうか?
 その男、ワイン・ガードナーは1996年にJGTCに参戦。TOYOTA TEAM SARDのスープラをドライブした。4輪ファンの間では「誰?」という知名度だったが、彼を応援するために2輪レースのファンが数多く来場し、関係者の間では「さすが世界チャンピオンだ」とも囁かれていた。そう、ガードナーは1986年に2輪グランプリの世界チャンピオンを獲得している。だが、彼の人気はそれだけではない。日本で行われる2輪の祭典「鈴鹿8時間耐久レース(通称:8耐)」で4度の優勝を飾っており、彼のメジャーデビューも日本の有力プライベーターと言うこともあり、日本での人気は他のトップライダーを引き離していた。
 1992年に2輪グランプリから引退したガードナーは、故郷オーストラリアの4輪レースを経て、隆盛を迎えている日本のJGTCに誘われた。この年はマクラーレンF1GTRが席巻していたが、ガードナーとパートナーのアラン・フェルテは、参戦2戦の富士で3位表彰台を獲得。しかし、以後は思うような結果を残せずにいた。

JGTCドライバーとして自分の役割を見つける

 そしてJGTC参戦3年目のシーズン。ガードナーは、TOYOTA Team LeMansに移籍して野田英樹と組む。そして、第3戦SUGOでは野田がポールポジションを獲得。レースでも野田がトップでガードナーにステアリングを渡し、スープラにとって1年半ぶりの優勝が目前になった。だが、無情にもマシンにトラブルが発生し、ガードナーはマシンをコースサイドに止めざる終えなかった。「ほんとうにほんとうに、ほんとうにガックリだよ。クルマの調子はどのセッションもよかったし、ノダも速いし。信じられない。すごくいいチームだし、クルマはすばらしいし、ドライバーも速い。勝てるチームなんだ。でも...」とアンラッキーを嘆いた。
 しかし第5戦富士に、そのチャンスが訪れた。ポールポジションからスタートしたのは、カストロール・トムス・スープラの関谷正徳。だが、関谷のスープラはタイヤがコンディションに合わなかったのか、思うようにペースアップできない。これに対し、予選4位から確実に順位を上げた野田は11周目にトップを奪った。2番手に20秒近いマージンを築いた野田は、ガードナーにESSO Tiger Supraを託す。全車がピットインを済まし、再びトップに立ったガードナーは競り合う2番手集団を尻目に独走。最終的には30秒もの大差を付けて、野田と共にJGTC初優勝を飾った。
 当初は2輪やオーストラリア時代の名残りか、荒っぽさからトラブルを呼ぶことが多かった。だが、この年はスープラのテストも手掛けていた野田をリスペクトし、元世界チャンピオンはセカンドドライバーに徹し、確実な走行に終始した。
「正直なところ、"やっと"というのが感想なんです。SUGOのレースとか何度も近いところまでいって手からすり抜けるということが多かった。今日の私の仕事は、ノダが作ったマージンを最大限に利用してクルマをゴールまで持ってくることだけでした。チーム全体、トヨタをはじめサポートしてくれたみんなの勝利だと思います」。初優勝に酔うことなく、ガードナーは静かに語った。
 そして次のレース。パドックに現れたガードナーを見て、皆は目を見張った。「富士では本当に勝ちたかったから、チームのみんなと賭けをしたんだよ。勝ったら髪を短く刈るって」。そう言って、さっぱりした頭を撫でた。そこには過去の栄光を背負うライダーではなく、1人のJGTCトップドライバーが存在していた。

写真協力:GTアソシエイション

  • レース序盤、先行する3台のトムス・スープラを追う4番手の野田のESSO Tiger Supra。背後にはデンソーサードスープラGTとRAYBRIG NSXが続いた。

    レース序盤、先行する3台のトムス・スープラを追う4番手の野田のESSO Tiger Supra。背後にはデンソーサードスープラGTとRAYBRIG NSXが続いた。

  • カストロール・トムス・スープラを抜き、トップに立った野田は後続を引き離して十分なマージンを得て、ガードナーにステアリングを渡した。

    カストロール・トムス・スープラを抜き、トップに立った野田は後続を引き離して十分なマージンを得て、ガードナーにステアリングを渡した。

  • 後半にトラブルがあった第3戦とは違い、このレースはまったくのノートラブル。2位に30秒もの大差を付けて2人は初優勝の表彰台に上がった。

    後半にトラブルがあった第3戦とは違い、このレースはまったくのノートラブル。2位に30秒もの大差を付けて2人は初優勝の表彰台に上がった。

  • 「トムスは柔らかいタイヤだったのかな? 我々はパーフェクトでした」と野田。ガードナーも「本当にいいクルマだった」と満足げだった。

    「トムスは柔らかいタイヤだったのかな? 我々はパーフェクトでした」と野田。ガードナーも「本当にいいクルマだった」と満足げだった。

  • チームと賭けをしたというガードナー。次戦のピットに現れた彼は、見事に短く刈り上げたヘアースタイルだった。

    チームと賭けをしたというガードナー。次戦のピットに現れた彼は、見事に短く刈り上げたヘアースタイルだった。


JGTC 1999年 第5戦 富士 決勝レース結果

順位No.C-Po車名ドライバー所要時間/差タイヤウエイト
16500-1ESSO Tiger Supra野田英樹
W.ガードナー
1:26'41.511BS20
218500-2TAKATA 童夢 NSX脇阪寿一
金石勝智
0'30.577BS20
31500-3ペンズオイル・ニスモGTRE.コマス
本山 哲
0'32.212BS60
436500-4カストロール・トムス・スープラ関谷正徳
黒澤琢弥
0'32.336MI30
512500-5カルソニックスカイライン星野一義
影山正美
0'37.023BS10
638500-6FK/マッシモセルモスープラ竹内浩典
立川祐路
0'39.255BS20
7100500-7RAYBRIG NSX高橋国光
飯田 章
0'43.417BS50
864500-8Mobil 1 NSXT.コロネル
光貞秀俊
0'47.911BS20
916500-9Castrol 無限 NSX中子 修
道上 龍
0'52.828BS70
1039500-10デンソーサードスープラGT土屋圭市
影山正彦
0'57.575YH20
113500-11ユニシアジェックススカイライン長谷見昌弘
田中哲也
1'12.102BS
122500-12ARTAゼクセルスカイライン鈴木亜久里
M.クルム
1'29.020BS
1335500-13マツモトキヨシ・トムススープラP-H.ラファネル
山路慎一
-1lapMI30
1430500-14綜警 McLaren GTR山田洋二
岡田秀樹
-1lapBS
1537500-15カストロール・トムス・スープラ鈴木利男
片山右京
-1lapMI60
1611500-16エンドレス アドバン GTR和田孝夫
木下みつひろ
-1lapYH
1726300-1STP アドバンタイサン GT3R松田秀士
D.シュワガー
-4lapsYH
1888500-17ノマドディアブロGT-1和田 久
古谷直広
-4lapsTY
197300-2RE雨宮マツモトキヨシRX7松本晴彦
山野哲也
-4lapsYH20
2061300-3テイボン・トランピオ・FTO中谷明彦
R.ファーマン
-4lapsTY
2181300-4ダイシン シルビア福山英朗
大八木信行
-4lapsYH50
2225300-5モモコルセ・アペックスMR2新田守男
高木真一
-5lapsYH80
2314300-6ホイールショップアルタシルビア古在哲雄
小宮延雄
-5lapsYH
2455300-7アドバンタイサンポルシェRSR須賀宏明
田嶋栄一
-5lapsYH
25910300-8ナインテンアドバンポルシェ余郷 敦
D.マラガムア
-5lapsYH20
2621300-9BP-トランピオ-BMW一ツ山康
伊藤大輔
-6lapsTY
2786300-10BPアペックスKRAFTトレノ田中 実
雨宮栄城
-6lapsTY
2870300-11外車の外国屋アドバンポルシェ石橋義三
P.ヴァン・スクート
-6lapsYH
29355300-12イエローマジックF355GT井上隆智穂
高橋 毅
-8lapsYH
3072300-13オークラRX7石川 朗
平野 功
-8lapsYH
31911300-14ダイヤモンドポルシェ石原将光
野地廣行
-8lapsYH
3210300-15アビリティ・マリオポルシェ麻生英彦
桧井保孝
-9lapsYH
33111300-16JIM GAINER F355井倉淳一
真希遊世
-9lapsYH
3499300-17大黒屋ARCぽるしぇ吉富 章
日置恒文
-11lapsDL
3577300-18クスコスバルインプレッサ小林且雄
谷川達也
-13lapsYH20
3671300-19シグマテック911城内政樹
河野尚裕
-17lapsYH10
20300オートレット セリカ松永雅博
佐藤久美
30lapsYH
15300ザナヴィARTAシルビア土屋武士
井出有治
24lapsYH80
32500cdma One セルモスープラ木下隆之
近藤真彦
9lapsBS
19300ウエッズスポーツセリカ織戸 学
原 貴彦
3lapsYH70