1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
第3回:JGTC 2002年 第3戦 SUGO 決勝
"強い"ドライバーを表す言葉に"優勝請負人"という称号がある。苦境に陥っているチームに請われて、チームやクルマに"勝利"をはじめとする結果を残していく。まさにプロフェッショナルなイメージがある。LEXUS Racing陣営のベテランにしてESSO TOYOTA Team LeMansで1度、TOYOTA TEAM TOM'Sで2度のチャンピオンに輝いている脇阪寿一は、そんなイメージをまとう男だ。
"速い"から"強い"へ変貌を遂げた一戦
ホンダに在席していた時は、"速い"というイメージが印象深かった脇阪。その彼は、2001年にトヨタ陣営に移籍し、ESSO TOYOTA Team LeMansでJGTC(全日本GT選手権)に挑んだ。そして、2レース目の富士で早くも優勝を飾っている。さらに6月にセパンで行われた特別戦でも勝って、そのポテンシャルを見せつけた。ただし"取りこぼし"も少なからずあり、シリーズではランキング6位に留まっている。
そんな脇阪が"強さ"を開花させたのが翌、2002年シーズンだ。新しく飯田章をパートナーに迎えると全8戦中7戦でポイントを獲得。内5戦が二桁ポイントとなる上位入賞だった。
そしてそのシーズン、第3戦のSUGOで挙げた唯一の勝利も、"強さ"を遺憾なく発揮した。公式予選では赤旗中断の影響もあって、会心のアタックができなかった脇阪は6番手と僅かに出遅れた。決勝レースでは、スープラとNSXが上位を分け合うグリッドの3列目からスタート。飯田が前半、脇阪は後半を担当することになった。後半勝負と見越して一度は9番手までポジションを下げたものの、スティントの後半にはタイヤの厳しくなった上位陣が後退。飯田は結局5番手で脇阪にクルマを渡した。
脇阪は走る前から、前戦の富士500kmと似た展開になると予想する。前戦ではレース中にハプニング&アクシデントが続出し、都合6回もセーフティカーが導入された。そんな荒れたレースになるだろうと。そして飯田の走りを観て、この日選んでいたタイヤの使いかたを読み切り、無理をせずセーフティカーが導入されれば、そこで詰めるという作戦で行くことを決心する。スポーツランドSUGOは高速サーキットである割にはコース幅が狭く、レース中に何度もセーフティカーが導入されることは珍しくない。"魔物が棲む"と言われる所以だが、言ってみれば脇阪は、その"魔物"を利用しようと考えたのだ。
セーフティカー導入のタイミングでポジションアップ
タイミング良く2回目のセーフティカー導入時に予定のピット作業を終え、飯田と交代。コースに出た脇阪は、マシンやタイヤ、そしてレース展開に対する自らの"読み"が正しいと実感したはずだ。上位陣のオーダーは、36号車トクホン トムス スープラがトップを逃げ、その後方で2台のNSXがバトルを繰り広げ、その後方で25号車FK/マッシモADVANスープラが隙を窺っていた。脇阪はその後方、5番手につけていたが、この日のマシンのパフォーマンスでは、上位陣をパスするのは困難に思えた。
レースはさらに荒れ、この後もセーフティカーが2回コース上に入る。脇阪は、そのたびに間隔を詰めて行き、その後は上位陣に食らいつく...。
そんなレースを繰り返している内にNSXの1台と25号車が接触して後れ、もう1台のNSXをパスした脇阪は2位に進出する。残りは11周。これで決まり、と思われたが最後の最後で36号車がピット出口の信号を無視していたとペナルティを受ける。魔物は脇阪に微笑んだ。
このシーズン、SUGOの後は優勝こそなかったが、5戦中3回の二桁ポイントを挙げた脇阪と飯田は、共に念願の初チャンピオンを手に入れる。
波乱が連続する展開だった2002年第3戦SUGO。そのレースは"優勝請負人・脇阪寿一"が誕生した瞬間であった。
写真協力:GTアソシエイション
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ポールポジションは8号車NSXが獲得。脇阪たちの青い6号車スープラは中段の6番グリッドに着けていた。
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6号車はタイヤ温存作戦で無理をせず。一時ポジションを下げたが、5番手まで盛り返し、後半の脇阪に託す。
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荒れるレースと予想したとおり、後半もSCカーが入り、トップ36号車をSCカーが先導することになる。
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SCカー導入時のピットインはいつも以上に慌ただしい。それでも定評あるTeam LeMansスタッフはミスなくこなした。
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予選6位からの逆転勝利。ライバルのペナルティがあったとは言え、荒れたレースを巧みに乗り越えた。
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脇阪はこれで通算4勝目。この優勝を弾みとして脇阪/飯田組は、2002年は初のGT500チャンピオンに輝く。
JGTC 2002年 第3戦 SUGO 決勝レース結果
順位 | No. | C-Po | 車名 | ドライバー | 所要時間/差 | 周回 | ベストラップ | タイヤ | ウエイト |
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1 | 6 | 500-1 | エッソウルトラフロー スープラ | 脇阪寿一 飯田 章 | 2:07'09.240 | 81 | 1'20.757 | BS | 40 |
2 | 100 | 500-2 | RAYBRIG NSX | 加藤寛規 光貞秀俊 | 0'09.929 | 81 | 1'20.177 | BS | |
3 | 16 | 500-3 | 無限NSX | 伊藤大輔 D.シュワガー | 0'16.294 | 81 | 1'20.692 | BS | 40 |
4 | 23 | 500-4 | カストロールピットワークGT-R | 影山正美 E.コマス | 0'16.930 | 81 | 1'21.576 | BS | |
5 | 37 | 500-5 | ZENT トムス スープラ | 黒澤琢弥 P.モンティン | 0'17.168 | 81 | 1'21.001 | MI | |
6 | 76 | 500-6 | イエローコーンマクラーレンGTR | 服部尚貴 田嶋栄一 | 0'25.409 | 81 | 1'21.602 | DL | 20 |
7 | 22 | 500-7 | ザナヴィ ニスモ GT-R | 本山 哲 M.クルム | 0'25.566 | 81 | 1'20.708 | BS | |
8 | 12 | 500-8 | カルソニックスカイライン | 星野一義 田中哲也 | 0'26.707 | 81 | 1'21.962 | BS | +1 |
9 | 33 | 500-9 | United UKYO SUPRA | 片山右京 近藤真彦 | 0'33.745 | 81 | 1'22.207 | BS | +1 |
10 | 36 | 500-10 | トクホン トムス スープラ | 土屋武士 W.ガードナー | 0'40.376 | 81 | 1'20.521 | MI | |
11 | 25 | 500-11 | FK/マッシモADVANスープラ | 山路慎一 荒 聖治 | 1'03.426 | 81 | 1'20.804 | YH | +1 |
12 | 39 | 500-12 | デンソーサードスープラGT | J.デュフォア 織戸 学 | 1'16.411 | 81 | 1'20.714 | YH | 10 |
13 | 8 | 500-13 | ARTA NSX | 土屋圭市 金石勝智 | 1Lap | 80 | 1'20.417 | BS | |
14 | 30 | 500-14 | 綜警McLaren | 岡田秀樹 黒澤治樹 | 1Lap | 80 | 1'21.978 | DL | |
15 | 88 | 500-15 | ノマド ディアブロ JGT-1 | M.アピチェラ 和田 久 | 2Laps | 79 | 1'23.404 | DL | |
16 | 3 | 300-1 | ユニシアジェックスシルビア | 山野哲也 柳田真孝 | 3Laps | 78 | 1'26.390 | YH | 10 |
17 | 77 | 300-2 | クスコスバルインプレッサ | 小林且雄 谷川達也 | 3Laps | 78 | 1'27.182 | YH | |
18 | 18 | 500-16 | TAKATA童夢NSX | S.フィリップ R.ライアン | 4Laps | 77 | 1'20.736 | BS | 30 |
19 | 63 | 300-3 | レイジュンR&DダンロップGT3R | OSAMU 中川隆正 | 5Laps | 76 | 1'27.980 | DL | +2 |
20 | 1 | 500-17 | auセルモスープラ | 竹内浩典 立川祐路 | 5Laps | 76 | 1'21.025 | BS | 70 |
21 | 2 | 300-4 | BOSSベルノ東海AR・NSX | 高橋一穂 渡辺 明 | 5Laps | 76 | 1'27.633 | YH | 20 |
22 | 55 | 300-5 | イクリプスタイサンADバイパー | 山田英二 木下隆之 | 5Laps | 76 | 1'28.063 | YH | +1 |
23 | 28 | 300-6 | MY&CタイサンADVAN GT3R | 羽根幸浩 山岸 大 | 5Laps | 76 | 1'29.032 | YH | +2 |
24 | 26 | 300-7 | PLUSe タイサン アドバン GT3R | 余郷 敦 西澤和之 | 6Laps | 75 | 1'27.896 | YH | 10 |
25 | 21 | 300-8 | ダンロップ BMW M3GT | 一ツ山 康 菊地 靖 | 6Laps | 75 | 1'30.219 | DL | |
26 | 911 | 300-9 | PCJケルンテンBORO GT3R | 平川 晃 芳賀重光 | 6Laps | 75 | 1'31.550 | YH | |
27 | 70 | 300-10 | 外車の外国屋ダンロップポルシェ | 石橋義三 P.バンスクート | 6Laps | 75 | 1'30.988 | DL | +2 |
28 | 86 | 300-11 | プロジェクトμ・クリスタルMRS | 長島正興 松田晃司 | 6Laps | 75 | 1'28.168 | DL | |
29 | 81 | 300-12 | ダイシン ADVAN シルビア | 大八木信行 青木孝行 | 7Laps | 74 | 1'26.462 | YH | 10 |
30 | 51 | 300-13 | C-WEST・AUTOSTAFF・ADVANシルビア | 尾本直史 加藤正将 | 7Laps | 74 | 1'30.572 | YH | |
31 | 17 | 300-14 | Kosei SPIRIT MR-S | 松永まさひろ 滑川 健 | 8Laps | 73 | 1'29.054 | YH | +2 |
32 | 62 | 300-15 | Vemac R&Dダンロップ320R | 柴原眞介 密山祥吾 | 9Laps | 72 | 1'27.116 | DL | 50 |
33 | 24 | 300-16 | EndlessタイサンアドバンGT3R | 福山英朗 木下みつひろ | 13Laps | 68 | 1'27.499 | YH | 30 |
34 | 31 | 300-17 | ARTAアペックスMR-S | 新田守男 高木真一 | 17Laps | 64 | 1'25.532 | BFG | 40 |
35 | 5 | 300-18 | BANPRESTO CAR倶楽部マッハ号MT | 玉中哲二 三船 剛 | 23Laps | 58 | 1'27.683 | YH | |
19 | 300 | ウェッズスポーツMR-S | 田中 実 後藤 聡 | 35Laps | 46 | 1'26.197 | YH | 10(+1) | |
35 | 500 | プロジェクトμエスペリアスープラ | 影山正彦 脇阪薫一 | 45Laps | 36 | 1'22.988 | DL | +1 | |
71 | 300 | シグマMR-S | Guts城内 澤 圭太 | 47Laps | 34 | 1'27.598 | DL | 30 | |
64 | 500 | Mobil1 NSX | 松田次生 R.ファーマン | 48Laps | 33 | 1'20.565 | BS | 50 | |
15 | 300 | AMPREX BMW M3GT | 橋本元次 C.クワン | 80Laps | 1 | 2'12.692 | BFG | ||
910 | 300 | 910ロデオドライブアドバンGT3R | 松田秀士 A.ウィルコック | 81Laps | 0 | - | YH | +1 | |
7 | 300 | 雨宮マツモトキヨシアスパラRX7 | 松本晴彦 谷口信輝 | 81Laps | 0 | - | YH |
目次ページ
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1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
- 第1回:2000年 第4戦 富士 GT最速の男が刻んだ はじめの一歩(2014年7月4日公開)
- 第2回:2009年 第6戦 鈴鹿 フレッシュコンビの若手らしくない初優勝(2014年8月15日公開)
- 第3回:2002年 第3戦 SUGO 「強い脇阪」を誕生させた混乱のレース(2014年9月9日公開)
- 第4回:2007年 第6戦 鈴鹿1000km チャンピオンナンバーは諦めない(2014年10月16日公開)
- 第5回:1999年 第5戦 富士 栄光の向こうにあった勝利(2014年11月10日公開)
- 第6回:2005年 第8戦(最終戦)鈴鹿 記録男が持つ数奇な巡り合わせ(2014年12月11日公開)
- 第7回:2004年 第3戦 セパン(マレーシア)マレーシアを興奮させた12台抜き(2015年1月9日公開)
- 第8回:1998年 第7戦(最終戦)SUGO GT300最強チームの輝き(2015年2月12日公開)
- 第9回:2006年 第1戦(開幕戦)鈴鹿 衝撃のデビュー戦!鈴鹿おろしを切り裂く(2015年3月23日公開)
- 第10回:1997年 第6戦(最終戦)SUGO 諦めず走り続ける価値 (2015年4月24日公開)