1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
第2回:SUPER GT 2009年 第6戦 鈴鹿 決勝
鈴鹿サーキットを舞台に開催されるPokka GT SUMMER SPECIAL。このレースは38回を数える(当時)伝統の一戦"鈴鹿1000km"と称されるが、この年は折からの経済事情で決勝距離が700kmに短縮された。このため、決勝のレースラップは速くなることが予想され、それでなくとも波乱の多い鈴鹿の長距離戦はスタート前から一層の緊張を強いられていた。しかも土曜日に行われた公式予選では、GT500クラスルーキーであるKRAFT SC430の大嶋和也が初ポールポジションを獲得。
そして案の定、レースは大きなアクシデントに見舞われた。
ルーキーと2年目の新鋭コンビが伝統のレースに挑む
2009年のLEXUS TEAM KRAFTは石浦宏明と大嶋和也の若手コンビにドライバーを一新した。シーズン開幕時点で石浦は27歳、大嶋は21歳。2007年にGT300でコンビを組んでチャンピオンを獲得。そして石浦は翌年GT500へ。大嶋も追いかけるように、この年GT500にデビューした。
ベテラン同士や若手とベテランというコンビが多いGT500クラスにおいて、2年目とルーキーというコンビは、定石から外れた人選だ。だが、それぞれが持っている速さと、2人のコンビネーションには何ら不安はなかった。
ちなみに、チームを率いる"頭脳"は大澤尚輔監督と菅沼芳成チーフエンジニア。今シーズンもLEXUS TEAM SARDで指揮を執る名コンビが、若い2人のドライバーの経験の少なさをカバー。チーム総合力をもって、ライバルたちに対等な戦いを挑むことになった。開幕から入賞は続いていたが、第3戦の富士で5位に入ったのがベストリザルト。やはり若手のコンビでは荷が重すぎたのか...。
レース中の火災事故。誰もが動揺するシーンを冷静に対応
700kmの先にあるゴールに向け、35号車のSC430は最前列からレースをスタート。スタートを担当した石浦が5周目に、このレースのファステストラップとなる1分58秒092をマークし、持ち味の速さを存分に発揮する。大嶋に代わってもペースは落ちず、再び石浦が乗る前には2番手以降に10秒以上のマージンを稼いでいた。
この時、2番手を走る車両に火災が発生。このアクシデント対応するため、セーフティーカーが導入される。さらにこの期に乗じてピットインを行おうとするチームでピットは混乱となる。
このアクシデントに対しても石浦は冷静に対応。セーフティーカーにより積み上げたマージンはなくなるが、それに動じることはなかった。再びリードを築き、ラストランナーの大嶋にバトンタッチ。大嶋は残り30周余を危なげなく走り切り、ゴールしてみれば再び2位に10秒の差を付けていた。ピットからの名采配にも助けられ、まるでベテランコンビのような走りには、レースは破綻の糸口さえ見せることがなかった。
優勝会見で石浦は「今年はプレッシャーを受けたシーズンで、僕らは若手らしくないと言われていたんで、ここからやっと(若手らしく)のびのびと暴れるレースができるかなと思います」とコメント、会場は温かな笑顔に包まれた。
写真協力:GTアソシエイション
SUPER GT 2009年 第6戦 鈴鹿 決勝レース結果:GT500
順位 | No. | 車名 | ドライバー | 所要時間/差 | 周回 | タイヤ | ウエイト |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 35 | KRAFT SC430 | 石浦 宏明 大嶋 和也 | 4:16'02.744 | 121 | BS | 28 |
2 | 3 | HASEMI TOMICA EBBRO GT-R | ロニー・クインタレッリ 安田 裕信 | 0'10.681 | 121 | MI | 52 |
3 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | 立川 祐路 リチャード・ライアン | 0'18.450 | 121 | BS | 58 |
4 | 18 | ROCKSTAR 童夢 NSX | 道上 龍 小暮 卓史 | 0'20.928 | 121 | BS | 64 |
5 | 12 | IMPUL カルソニック GT-R | 松田 次生 セバスチャン・フィリップ | 0'36.905 | 121 | BS | 52 |
6 | 1 | MOTUL AUTECH GT-R | 本山 哲 ミハエル・クルム | 0'37.189 | 121 | BS | 86 |
7 | 39 | DUNLOP SARD SC430 | アンドレ・クート 平手 晃平 | 0'49.525 | 121 | DL | 34 |
8 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | 脇阪 寿一 アンドレ・ロッテラー | 1'00.967 | 121 | BS | 78 |
9 | 100 | RAYBRIG NSX | 井出 有治 細川 慎弥 | 1'44.360 | 121 | BS | 38 |
10 | 17 | KEIHIN NSX | 金石 年弘 塚越 広大 金石 勝智 | 1Lap | 120 | BS | 62 |
11 | 24 | HIS ADVAN KONDO GT-R | J.P・デ・オリベイラ 荒 聖治 | 2Laps | 119 | YH | 74 |
12 | 8 | ARTA NSX | ラルフ・ファーマン 伊沢 拓也 | 37Laps | 84 | BS | 66 |
6 | ENEOS SC430 | 伊藤 大輔 ビヨン・ビルドハイム | 57Laps | 64 | BS | 40 | |
32 | EPSON NSX | ロイック・デュバル 中山 友貴 | 109Laps | 12 | DL | 18 |
目次ページ
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1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
- 第1回:2000年 第4戦 富士 GT最速の男が刻んだ はじめの一歩(2014年7月4日公開)
- 第2回:2009年 第6戦 鈴鹿 フレッシュコンビの若手らしくない初優勝(2014年8月15日公開)
- 第3回:2002年 第3戦 SUGO 「強い脇阪」を誕生させた混乱のレース(2014年9月9日公開)
- 第4回:2007年 第6戦 鈴鹿1000km チャンピオンナンバーは諦めない(2014年10月16日公開)
- 第5回:1999年 第5戦 富士 栄光の向こうにあった勝利(2014年11月10日公開)
- 第6回:2005年 第8戦(最終戦)鈴鹿 記録男が持つ数奇な巡り合わせ(2014年12月11日公開)
- 第7回:2004年 第3戦 セパン(マレーシア)マレーシアを興奮させた12台抜き(2015年1月9日公開)
- 第8回:1998年 第7戦(最終戦)SUGO GT300最強チームの輝き(2015年2月12日公開)
- 第9回:2006年 第1戦(開幕戦)鈴鹿 衝撃のデビュー戦!鈴鹿おろしを切り裂く(2015年3月23日公開)
- 第10回:1997年 第6戦(最終戦)SUGO 諦めず走り続ける価値 (2015年4月24日公開)