1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
第4回:SUPER GT 2007年 第6戦 鈴鹿1000km 決勝
「レースはシナリオのないドラマ」と言われる。ましてや、走行距離が通常のレースの3倍以上になる鈴鹿1000kmでは......。2007年の鈴鹿1000kmのレース終盤。そのドラマは起こった。突然降り出した雨の中、独走状態だったNSXを猛追する白いSC430。予選でスーパーラップ進出すら逃した彼らに、果たして大逆転はあり得るのか......。
チャンピオンゼッケンが屈辱にまみれた予選
チャンピオンゼッケン"1"を掲げる 宝山TOM'S SC430は、第6戦の予選で屈辱の予選11位。当時の予選は、予選1回目のトップ10が単独タイムアタックでポールポジションを争うスーパーラップ方式だ。このスーパーラップ進出を逃したものの、開き直った決勝ではミスなく、着実にポジションを上げる宝山TOM'S SC430の脇阪寿一とアンドレ・ロッテラー。レースが3分の1を終えた辺りでトップ3の後方につけ、更に上位を窺いながら周回を重ねて行った。そしてレース終盤。先行する8号車NSXを宝山TOM'S SC430が追う、マッチレースになる。
105周目、トップ2台は同時に3度目のルーティンピットインを行う。ここでは定石通り、タイヤを4本交換した宝山TOM'S SC430に対して、トップを行くNSXはリア2本のみの交換で早めにピットアウト。これで、2台の差は15秒以上にまで広がる。しかし脇阪がディフェンディングチャンピオンの意地を見せてNSXを猛追。ギャップは10秒ほどに詰まる。
その頃、青空に黒くもが拡がってきた。133周を過ぎたあたりで西コース付近に雨が降り始める。やがてコース全体で大粒の雨が落ち始める一方で、西コースの雨は一気に激しくなり、スプーンカーブ付近は完全なウェットコンディションへと変わった。
訪れた"アンドレ・ウェザー"に逆転を託す
スリックタイヤ(晴れ用)では、難しくなった136周目。またもトップ2台は同時にピットイン。脇阪からロッテラーへ交代し、同時にタイヤもレインにしてピットアウト。雨脚はさらに強くなっていくが、ロッテラーはじわじわとトップのNSXを追い上げて行く。
いよいよ終盤のハイライトを迎えることになる。周回数が150周を数える頃、雨脚は止まり、少しずつだがラインは乾き始めていき、今度はペースアップしたNSXがじわじわ引き離しにかかった。
レースは残り20周あまり。ここで宝山TOM'S SC430が動くことになる。すぐグリップが出るように皮むきしたスリックをピットに用意。ロッテラーに「いつでも入って来い!」と無線が飛ばされ、瞬時に判断したロッテラーは159周を終えたところでピットイン。タイヤを換え、脱兎のごとくコースに戻る。
タイヤがまだ温まりきらない状態、しかも濡れて滑りやすい路面。困難な状況である。だがロッテラーはこんな状況でこそ、本領を発揮する。こんな状況をチームで"アンドレ・ウェザー"と彼の名つけて呼ぶくらいに。期待に応えてロッテラーは猛プッシュする。
ロッテラーのタイムを見たNSXのピットでも、スリックへの交換を決断。だがNSXがピットに向かったのは、SC430のピットインから2周後。しかも用意されていたのは、皮むきさえされていないスリックだった。
ピットアウトしたトップのNSXを、ロッテラーが射程に捉える。直後のデグナーであっさりかわしたロッテラーは、残り11周をトップのまま駆け抜けた。
予選11位からの優勝。1000kmレースだからできた、手に汗握るドラマだった。すでに暗くなった表彰台で、ロッテラーと脇阪は満面の笑みで花火のカウントダウンをコールしていた。
写真協力:GTアソシエイション
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1000kmレースは長距離ゆえに予選は重視されないとは言え、予選11位は勝利を目指すには厳しいポジションだ。
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1000kmの長丁場を活かして、着実にポジションを挙げる1号車SC430。最終的には8号車NSXとの一騎打ちになる。
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ロッテラーの走りを見守る脇阪(最前列左)。第3ドライバーのオリバー・ジャービス(隣り)は決勝を走行せず。
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レース終盤は雨、レインコンディションとなった。滑りやすい路面をロッテラーがハイペースで追い上げる。
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雨が弱くなり、まだ濡れる路面の中、ロッテラーがスリックタイヤでコースに。逆転優勝に向け勝負に出た。
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過酷な勝負を制して喜びを爆発させる脇阪とロッテラー。死力を尽くした戦いに8号車の2人も満足げだった。
SUPER GT 2007年 第6戦 鈴鹿1000km 決勝レース結果:GT500
順位 | No. | 車名 | ドライバー | 所要時間/差 | 周回 | タイヤ | ウエイト |
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1 | 1 | 宝山 TOM'S SC430 | 脇阪 寿一 アンドレ・ロッテラー オリバー・ジャービス | 6:04'10.983 | 173 | BS | |
2 | 8 | ARTA NSX | 伊藤 大輔 ラルフ・ファーマン 井出 有治 | 0'09.940 | 173 | BS | 100 |
3 | 23 | XANAVI NISMO Z | 本山 哲 リチャード・ライアン 安田 裕信 | 1Lap | 172 | BS | 20 |
4 | 100 | RAYBRIG NSX | ドミニク・シュワガー 細川 慎弥 | 1Lap | 172 | BS | 40 |
5 | 17 | REAL NSX | 金石 勝智 金石 年弘 伊沢 拓也 | 2Laps | 171 | BS | |
6 | 22 | MOTUL AUTECH Z | ミハエル・クルム 松田 次生 | 2Laps | 171 | BS | 10 |
7 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | 立川 祐路 高木 虎之介 | 3Laps | 170 | BS | 15 |
8 | 3 | YellowHat YMS モバHO ! TOMICA Z | セバスチャン・フィリップ 柳田 真孝 | 3Laps | 170 | BS | 10 |
9 | 6 | Forum Eng. SC430 | 片岡 龍也 ビヨン・ビルドハイム | 3Laps | 170 | BS | |
10 | 24 | WOODONE ADVAN Clarion Z | J.P・デ・オリベイラ 荒 聖治 | 3Laps | 170 | YH | 30 |
11 | 39 | デンソー サード SC430 | アンドレ・クート 平中 克幸 | 30Laps | 143 | BS | |
12 | 18 | TAKATA 童夢 NSX | 道上 龍 小暮 卓史 | 33Laps | 140 | BS | 50 |
13 | 32 | EPSON NSX | ロイック・デュバル ファビオ・カルボーン | 39Laps | 134 | DL | 20 |
12 | カルソニック インパル Z | ブノワ・トレルイエ 星野 一樹 ジェレミー・デュフォア | 110Laps | 63 | BS | 10 +1 | |
25 | ECLIPSE ADVAN SC430 | 土屋 武士 織戸 学 | 123Laps | 50 | YH | +2 | |
35 | BANDAI 00 DUNLOP SC430 | 服部 尚貴 ピーター・ダンブレック ロニー・クインタレッリ | 173Laps | 0 | DL | +2 |
目次ページ
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1994-2013 SUPER GT/JGTC PLAY BACK
- 第1回:2000年 第4戦 富士 GT最速の男が刻んだ はじめの一歩(2014年7月4日公開)
- 第2回:2009年 第6戦 鈴鹿 フレッシュコンビの若手らしくない初優勝(2014年8月15日公開)
- 第3回:2002年 第3戦 SUGO 「強い脇阪」を誕生させた混乱のレース(2014年9月9日公開)
- 第4回:2007年 第6戦 鈴鹿1000km チャンピオンナンバーは諦めない(2014年10月16日公開)
- 第5回:1999年 第5戦 富士 栄光の向こうにあった勝利(2014年11月10日公開)
- 第6回:2005年 第8戦(最終戦)鈴鹿 記録男が持つ数奇な巡り合わせ(2014年12月11日公開)
- 第7回:2004年 第3戦 セパン(マレーシア)マレーシアを興奮させた12台抜き(2015年1月9日公開)
- 第8回:1998年 第7戦(最終戦)SUGO GT300最強チームの輝き(2015年2月12日公開)
- 第9回:2006年 第1戦(開幕戦)鈴鹿 衝撃のデビュー戦!鈴鹿おろしを切り裂く(2015年3月23日公開)
- 第10回:1997年 第6戦(最終戦)SUGO 諦めず走り続ける価値 (2015年4月24日公開)