2010年3月 7日(日)配信

2008年NASCAR特集

第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバーもっと知りたいNASCARの世界 第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー

カップドライバーに重なる現代のアメリカンドリーム
人気のスタードライバー トニー・スチュワート
少年ファンも多い デニー・ハムリン
夢と憧れのスプリント・カップ

 今や名実共に全米ナンバー1モータースポーツとなったNASCAR。その最高峰クラス、スプリント・カップに出場するドライバーは、MLBメジャーリーグやNFLアメリカンフットボールなどのメジャースポーツの人気選手と同様に、全米の子供たちにとって憧れの存在です。彼らの人気は大変なもので、レース開催中はもちろんコース外でも注目され、"セレブリティ・アスリート"と言われるほどです。

  スプリント・カップだけが注目されがちなNASCARですが、地方選手権まで含めると合計10シリーズが存在し、10代の新進気鋭の若手ドライバーから、50歳を超える超ベテランドライバーに至るまで、多くのドライバーがNASCARに参戦しています。ドライバーたちの参戦スタイルも実に様々で、あくまでも趣味として参戦しているドライバーもいれば、お金を稼ぐビジネスと割り切って出場しているドライバーもいたりと千差万別です。しかし、どんなNASCARドライバーでも、究極の目的は最高峰のスプリント・カップのグリッドに立つことです。ストックカーレースの最高峰であるスプリント・カップは、選びぬかれた世界最高の"ストックカー使い"だけが戦うことを許される最高の舞台。全米中のNASCAR参戦ドライバーにとって、スプリント・カップはまさに夢のステージであり、富と名声を獲得し"アメリカンドリーム"を体現できる場所なのです。

マーチャンダイズの販売額も莫大に

  全米でのNASCAR人気は、そのままスプリント・カップドライバーの人気につながっています。いつの時代もNASCARの主役はチームやマニュファクチャラーではなくドライバーなのです。それゆえ、スプリント・カップドライバーへの注目度はすさまじく、例えばドライバーグッズを中心としたNASCARのマーチャンダイズの売り上げは、年間で21億ドルに上ると言われています。全米のメジャースポーツで最もマーチャンダイズセールスが高いMLBは年間47億ドルと言われていますが、MLBは全米で30チームもあり、各チームに数十人の選手を抱えています。一方、NASCARのスプリント・カップドライバーはレギュラードライバーでわずか40数人、出場ドライバー全員でもおよそ60人と数が限られています。それでグッズ売り上げがMLBのおよそ半分もあるのですから、スプリント・カップドライバーへの人気と注目度の高さがわかろうというものです。

  実際にレースの現場に行くと、毎レースともドライバーの顔とスポンサーロゴがド派手にペイントされた"スーベニア・トレーラー"と呼ばれる巨大なトランスポーター式のマーチャンダイズショップがスピードウェイの外にズラリと並び、そこに10万人以上もの観客が押し寄せて来るのです。応援しているドライバーのグッズに身を固めてレースを見るのはNASCAR観戦の王道ともいえます。ファンの購買意欲が、そのままドライバーの人気を計る物差しになっているといっても過言ではないのです。仮にスピードウェイに観戦に来ることができなくても、大手のスーパーマーケットに行けばNASCARグッズを購入することができたりもします。

NASCAR名物の巨大なスーベニア・トレーラー
デイトナ500ウイナー マイケル・ウォルトリップ
観客はトニー・スチュワートの一挙手一投足に注目
激しい走りでファンの心を捉えるカイル・ブッシュ
華やかさの裏には過酷なドライバーの戦いがある

 それだけの人気を集めるだけに、スプリント・カップドライバーになるとその待遇もかなりハイレベルなものになります。多くのドライバーがサーキットへの移動にプライベートジェットを使用し、またパドックには自分専用の高級モーターホームを持ち込んで、つかの間のプライベートタイムを優雅に過ごします。スプリント・カップドライバーは、まさに夢のような時間を毎週末に経験しているのです。とはいっても、それは贅沢をしたいからではなく、すべては必要に追われてのこと。実は、ドライバーのレースウィークは、走行時間のほかにもスポンサーへの挨拶まわり、トークショーやサイン会といったイベントへの参加から、メディアへの取材対応に至るまで、分刻みの目が回るようなスケジュールになっているのです。

 ネイションワイド・シリーズやクラフツマン・トラック・シリーズといった下位カテゴリーにダブル、またはトリプル参戦するドライバーも多く、そうなったらもう大変。ドライバーがパドック中を走り回る光景は、NASCARの風物詩ともいえるものです。それがシリーズ戦として年間36戦もあるのですから、その過酷さはスタードライバーたちの華やかさからはまるで想像できません。しかも、成績を残さないとあっという間にその座を追われてしまうほど競争は激しい──。そんな"選ばれしものの舞台"、それが最高峰スプリント・カップなのです。

NASCAR特集 Index
NASCAR特集Index
第1回 NASCARってなあに 第2回 NASCAR人気の秘密
第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー 第4回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その1
第5回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その2 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
第7回 2008年シリーズ中盤レビュー 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
第9回 オーバルトラックの秘密 第10回 チェイスを戦うトヨタ・ドライバー
第11回 NASCARを日本で楽しもう 第12回 NASCAR終盤戦、白熱するチャンピオン争い
第13回 チーム・ファクトリー最前線 第14回 トヨタのNASCAR最前線基地、TRD Competition Drive
第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

All photos are courtesy of Toyota Motorsports.