2010年3月 7日(日)配信

2008年NASCAR特集

第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編もっと知りたいNASCARの世界 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

ネイションワイド・シリーズ年間最多勝、クラフツマン・トラック・シリーズでダブルタイトル奪還

ネイションワイド・シリーズでも続いたジョー・ギブス・レーシングの快進撃

 歴史的な大差でチャンピオンが決定したスプリント・カップ・シリーズとは対象的に、最終戦まで大接戦のレースが展開されたネイションワイド・シリーズとクラフツマン・トラック・シリーズ。例年にない盛り上がりを見せたNASCAR第2、第3シリーズの2008年シーズンをお伝えします。

 昨年までの25年間、「ブッシュ・シリーズ」として親しまれてきたNASCAR第2のシリーズは今年、米大手保険会社であるネイションワイドを新しいタイトルスポンサーに迎え、「ネイションワイド・シリーズ」に生まれ変わりました。初年度の今シーズンは新たな船出に相応しく、毎戦手に汗握るスリリングなレースが展開され、大いに盛り上がりました。その中心となったのは、ジョー・ギブス・レーシング(JGR)のトヨタ・カムリ。デイトナでの開幕戦でトニー・スチュワートがポール・トゥ・ウインと鮮やかに決めてみせると、その後はカイル・ブッシュとデニー・ハムリンを含めた3人が連戦連勝。特にカイルの勢いは凄まじく、何とシーズン10勝をマークしました。(カイル・ブッシュは、JGRでの優勝が9回、トヨタ系ネイションワイドのチームのブラウン・レーシングからの出走で優勝を1回を収めました)。これは、1983年にサム・アードによって成し遂げられたシーズン最多優勝記録に並ぶ歴史的レコード。また、スチュワートは9戦参戦で開幕2連勝を含む5勝をマーク。ハムリンも負けじと4勝を記録し、JGR全体としては計19勝をあげました。

ネイションワールド・シリーズ記録タイとなる10勝を遂げたカイル・ブッシュ
全35戦中じつに20勝!
トヨタ・カムリ20号車オーナーポイントタイトルを獲得

 ネイションワイド・シリーズは全35戦でしたから、JGRは5割を超える驚異的な勝率で、文字どおりシリーズを席巻したのです。JGRの3名はいずれもフル参戦していないため、ドライバーズタイトル争いに加わることはなかったものの、ドライバーではなく参戦車両で競い合うオーナーポイントランキングでは、20号車のトヨタ・カムリが見事にタイトルを獲得。チーム一丸で勝ち取ったタイトルです。

 ドライバーズタイトル争いは、フォードのカール・エドワーズと、シボレーのクリント・ボウヤーという、スプリント・カップ・シリーズでも「チェイス」入りしているドライバーふたりによる一騎打ちとなり、最終戦ホームステッドまでもつれにもつれました。結局、最終戦で5位に入ったボウヤーが、エドワーズをわずか21点差で退け、初のシリーズタイトルを獲得しました。トヨタ勢では、カイル・ブッシュの6位が最上位という結果でした。

次代のNASCARスター候補生、ジョーイ・ロガーノ

 そんな大接戦が展開されたネイションワイド・シリーズですが、ひとりのルーキーが優勝争い以上に注目を集めました。それが、ジョーイ・ロガーノです。JGRの秘蔵っ子とも言えるロガーノは今年、NASCARの出場年齢規定となる18歳になった直後の第14戦ドーバーに初出場すると、参戦わずか3戦目の第16戦ケンタッキーで早くも優勝を飾る快挙を達成。18才12日での同シリーズ優勝は史上最年少記録で、まさに歴史的な勝利でした。この優勝を現地メディアがこぞって取り上げたことでロガーノの名前は瞬く間に全国区に広がり、"次代のNASCARスター"として大いに注目されました。折しも、過去2度のカップタイトルをチームにもたらしたスチュワートが今シーズン限りでJGRを去ることが発表されたところで、その後任としてロガーノが選ばれ、来シーズンから最高峰スプリント・カップ・シリーズにフル参戦することも決定。スチュワートの代名詞ともいえるオレンジのホームデポ・カラーの20号車を受け継ぐロガーノの来シーズン以降の活躍にご注目ください。

クリント・ボウヤーが21点差で初タイトル獲得
ジョーイ・ロガーノが最年少で初優勝
NASCARシリーズ中の最激戦区、クラフツマン・トラック・シリーズ

 NASCARの3つのナショナルシリーズで、最も白熱したタイトル争いが繰り広げられたのがクラフツマン・トラック・シリーズです。ピックアップ・トラックの車両で競う、いかにもアメリカらしいレースで人気のこのシリーズ。現地生産のフルサイズ・ピックアップトラック、タンドラを擁し2004年から参戦を開始しているトヨタは、目下2年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得中で、2006年にはドライバーズタイトルも奪取するなど、既にシリーズの中心的存在として君臨しています。2008年シーズンの焦点は、トヨタが2年ぶりのドライバー&マニュファクチャラーのダブルタイトル奪還でした。

 6チーム9台という体制で2008年シーズン開幕戦に臨んだトヨタ勢は、2006年シリーズ王者トッド・ボダインが初戦を制すると、続く第2、3戦はスプリント・カップ・シリーズ、ネイションワイド・シリーズと共に"トリプル参戦"しているカイル・ブッシュが優勝し開幕3連勝を記録。早くもタンドラの戦闘力を見せ付けました。シリーズ中盤には、ビル・デイビス・レーシングから参戦しているベテランのジョニー・ベンソンが3連勝を飾り一気にランキングのトップに浮上。終盤戦に入ると、2年連続ドライバーズタイトルを狙うシボレーのロン・ホーナディ・Jr.との間で、毎戦ランキングトップが入れ替わる大接戦となりました。

ジョニー・ベンソンが7点差を制し、トヨタはダブルタイトルを奪還

 最終戦前のふたりのポイント差はわずか3点という、シリーズ史上に残るデッドヒートに全米中の注目が集まり、迎えた最終戦でもふたりは激しいレースを展開しました。最終ラップの最終コーナーまでタイトルの行方が分からないという大激戦を最後の最後で制したのは、ジョニー・ベンソン。7点という僅差で、ベンソンがトラック・シリーズでは初めてドライバーズチャンピオンを獲得。また、マニュファクチャラーズタイトルはトヨタが圧勝し、2年ぶりにダブルタイトルを奪還しました。今年もトヨタ・タンドラがシリーズの中心となって、その存在感を存分にアピールすることができました。

 来年からは、トラック・シリーズ創設時よりタイトルスポンサーであったクラフツマンから新たなタイトルスポンサーを得て「キャンピングワールド・トラック・シリーズ」として生まれ変わります。またトヨタ・タンドラが強さと速さを見せるのか、それともライバル勢の反撃があるのか、来シーズンでの更なる活躍にご期待ください。

クラフツマン・トラック・シリーズ トップを走るロン・ホーナディ 優勝を決めたのはジョニー・ベンソン

NASCAR特集 Index
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第1回 NASCARってなあに 第2回 NASCAR人気の秘密
第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー 第4回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その1
第5回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その2 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
第7回 2008年シリーズ中盤レビュー 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
第9回 オーバルトラックの秘密 第10回 チェイスを戦うトヨタ・ドライバー
第11回 NASCARを日本で楽しもう 第12回 NASCAR終盤戦、白熱するチャンピオン争い
第13回 チーム・ファクトリー最前線 第14回 トヨタのNASCAR最前線基地、TRD Competition Drive
第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

All photos are courtesy of Toyota Motorsports.