「優勝か、リタイアか」というカイルとは対象的に、毎戦上位フィニッシュを重ねてきたのがトニー・スチュワートです。今シーズンはいまだ未勝利というのはやや寂しいですが、そこは10年目のベテラン。トップ5フィニッシュを9回も記録する安定ぶりで、見事に2年連続4回目の「チェイス」出場を決めました。スチュワートは、もともとオープンホイールレース出身で、1997年にはIRLインディカー・シリーズでチャンピオンになった経歴の持ち主。その後NASCARへと転向し、2002年と2005年の2度カップ・シリーズ・チャンピオンに輝いたのです。
NASCAR創設60年の歴史の中でも2回以上カップ・シリーズ・チャンピオンとなったドライバーは15人で、現役ではわずかに3人だけ。優勝回数は通算32回。トレードマークともいえるHome Depotのオレンジのカラーリングは今年も健在で、NASCAR史に残る名ドライバーなのです。
年齢を重ねた今でこそ毎戦安定したスピードを見せるスチュワートですが、つい数年前までは"悪童"と言われるほど、とにかく荒っぽい走りで有名でした。レース中の接触は当たり前で、時には相手ドライバーのピットまで殴り込みに行くほど、とにかく頭に血が上りやすい性格だったのですが、彼のむき出しの闘争心がアメリカ人のNASCARファンには大受けで、シボレーのデイル・アーンハートJr.、ジェフ・ゴードンらのスーパースターに真っ向から立ち向かうNASCARきっての人気ドライバーとなったのです。
こうした一方で、トニー・スチュワートは若手ドライバーの育成にも積極的で、ステップアップカテゴリーのミジェット・レースに自らのチームを参戦させており、多くのドライバーにレース出場の機会を与えています。残念ながら、デビュー以来所属してきたJGRを今シーズンいっぱいで去り、来シーズンからはシボレーからチームを立ち上げることが決定していますが、トヨタ・ドライバーとして残りのレースで記憶に残る活躍を期待したいですね。 |