2010年3月 7日(日)配信

2008年NASCAR特集

第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編もっと知りたいNASCARの世界 第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編

カイル・ブッシュ快進撃で年間8勝!吹き荒れたトヨタ・カムリ旋風

トヨタへの注目とともに迎えたシーズン開幕

 2月17日に開幕したNASCARスプリント・カップ・シリーズの2008年シーズンは、11月16日に行われた最終戦、ホームステッド・マイアミ・スピードウェイで幕を閉じました。今回はNASCAR史に残る大記録が誕生し、歴史的なシーズンとなった2008年シーズンを振り返ります。

 今年から「スプリント・カップ・シリーズ」と名称が変更され、新たなスタートを切ったNASCAR最高峰シリーズ。新世代ストックカーのカー・オブ・トゥモロー(COT)の全戦導入、オープンホイールレース出身ドライバーの参戦など、開幕前から話題満載だった2008年シーズンですが、話題の中心はトヨタの新しいラインアップでした。シボレーの強豪だった名門ジョー・ギブス・レーシング(JGR)が、今年からトヨタユーザーにスイッチしたことで、トヨタ勢全体の戦闘力が一気に上昇し、開幕前のプレシーズンテストからトヨタ・カムリはトップタイムを連発。現地のメディアからも、初優勝どころかシリーズタイトルを争う存在になるのでは、といったレポートが連日のように全米中に発信され、大いに注目を集めていました。

ジョー・ギブス・レーシング(JGR)のカイル・ブッシュ
最多となる8勝をあげランキング首位を独走
第4戦アトランタで歴史的な初勝利

 シーズン開幕戦となったデイトナ500で、JGRのトニー・スチュワートが優勝にあと1歩と迫る3位に入りトヨタ・カムリの戦闘力の高さをいきなり証明してみせると、迎えた第4戦アトランタでは、今年からJGRに加入した若きカイル・ブッシュが圧勝。トヨタが参戦2年目にして念願のスプリント・カップ・シリーズ初優勝を飾ったのです。この優勝で一気に勢いに乗ったカイルは、その後勝ち星を量産し、最終10戦で行われるNASCAR版プレーオフ「チェイス・フォー・スプリント・カップ」開幕までの26戦でシーズン最多の8勝をマーク。文句なしでランキングトップを独走し、一気にNASCARのスターダムに躍り出ました。チームメイトであるスチュワート、デニー・ハムリンも揃って「チェイス」に進出したこともあり、今年のスプリント・カップのチャンピオンシップは"誰がトヨタ&JGRの快進撃を止めるのか?"という話題で持ちきりとなりました。また、JGRのトヨタ加入による相乗効果は他のトヨタ系チームにも及び、昨年は予選落ちを繰り返していたマイケル・ウォルトリップ・レーシングとレッドブル・レーシングも次第に上位争いを展開するようになり、トヨタ勢全体の戦闘力が向上しました。

不運で勢いをそがれたチェイス・フォー・ザ・スプリント・カップ

 ところが、「チェイス」に入ると様相は一変。これまで快進撃を誇ってきたカイルの18号車にはメカニカルトラブルが多発し、一気にチャンピオン争いから脱落してしまうことになってしまいました。負のスパイラルはチーム全体に広がり、スチュワートとハムリンもトラブルやアクシデントに巻き込まれるなどの不運に見舞われ、カイル同様「チェイス」序盤戦で早くもタイトル獲得は絶望的となりました。結局「チェイス」でのトヨタ勢はスチュワートが第30戦タラデガで優勝を飾ったのみで、ランキングはハムリンの8位が最上位という結果に終わってしまいました。序盤戦の勢いが凄まじかったことを考えると終盤戦の不振は残念ですが、参戦2年目でシーズン10勝という好成績を獲得、マイケル・ウォルトリップ・レーシングの2台と、レッドブル・レーシングの2台も、来シーズン開幕5戦での予選免除が与えられるランキング35位以内を確定させるなど、トヨタ勢全体の戦闘力が確実に上昇した1年でした。来シーズン以降のトヨタ勢のさらなる活躍にご期待ください。

チェイスを争う12台中3台がJGRのトヨタ・カムリに
情報交換するジャレットとヴィッカース
ヘンドリック・モータースポーツのジミー・ジョンソン
来年もトヨタ勢の活躍にご期待ください
王者ジミー・ジョンソンが3年連続タイトルの偉業達成

 トヨタ勢の脱落後、タイトル争いの行方は、3年連続王者を目指すシボレーのジミー・ジョンソンと、終盤戦に猛チャージをかけてきたフォードの若きエース、カール・エドワーズの一騎打ちとなりました。しかし、ジョンソンは「チェイス」10戦中3勝をマークし、特にトップ10圏外フィニッシュはわずかに2回という驚異的な安定感を見せつけて着実にポイントを加算。エドワーズを徐々に引き離していきました。対するエドワーズも負けじと終盤2連勝で追い上げを見せましたがジョンソンは最後まで崩れることなく、結局69点差でドライバーズタイトルを獲得しました。1976~1978年にケール・ヤーボローが達成しNASCAR史上不滅といわれた"3年連続王者"という大記録に並んだことになり、ジョンソンの強さが目立った2008年シーズンだったといえます。マニュファクチャラー別に見ると、王者シボレーが計11勝を挙げ6年連続でトップを守り、トヨタは勝ち星こそ10勝でフォードと並んだものの、わずか2点及ばず3位という結果になりました。


NASCAR特集 Index
NASCAR特集Index
第1回 NASCARってなあに 第2回 NASCAR人気の秘密
第3回 夢と憧れのスプリント・カップドライバー 第4回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その1
第5回 NASCARの聖地、シャーロットを訪ねて その2 第6回 写真で見るNASCARカーの秘密
第7回 2008年シリーズ中盤レビュー 第8回 後半戦の大きな見どころ、The Chaseとは?
第9回 オーバルトラックの秘密 第10回 チェイスを戦うトヨタ・ドライバー
第11回 NASCARを日本で楽しもう 第12回 NASCAR終盤戦、白熱するチャンピオン争い
第13回 チーム・ファクトリー最前線 第14回 トヨタのNASCAR最前線基地、TRD Competition Drive
第15回 2008年シーズンレビュー スプリント・カップ・シリーズ編 第16回 2008年シーズンレビュー ネイションワイド/クラフツマン・トラック・シリーズ編

All photos are courtesy of Toyota Motorsports.