シャシーのエンジニアリングのエリアでは、整理整頓を第一に考え、開発機器も点在するという感じで一見ガランとした印象を受けるかもしれません。しかし、これもファクトリー内で車体を移動させる必要から、あらゆるスペースを広く取っているためなのです。もちろん、開発機器のひとつひとつは、最新鋭のものを揃えています。
なかでも注目していただきたいのは、TRD U.S.A. inc.が独自に開発・導入した8ポスト・シェイカー・リグです。この8ポスト・シェイカー・リグとは、試験台の上に置いた車体に油圧シリンダーで力を加えることで、走行中のクルマにかかる力を再現し、サスペンションの動きをシミュレートする装置です。従来、NASCARでは7方向から力を加えてデータを取る7ポスト・シェイカー・リグが一般的でした。しかしTRD U.S.A. inc.は、独自開発により、恐らくNASCARでは初めてといわれる8ポスト・シェイカー・リグを導入し、さらに細かく実際の走行状態をシミュレートできるようにしたのです。まさに、TRD U.S.A. inc.の秘密兵器と言える装置です。
他にも、新ファクトリーには足回りの開発を行うプルダウン・リグや、コーナリング時の車両の状態をテストできる最新のAVCS(Advanced Vehicle Cornering Simulator)といった装置を導入しています。これらの開発機器は、TRD U.S.A. inc.自身がシャシーのエンジニアリングのために使用するだけではなく、トヨタ系参戦チームが、クルマをTRD Competition Driveに持ち込みさえすれば、いつでも使用できるようになっています。そのため、資金力のないチームでも新たに設備投資をすることなく、競争力のあるマシンでレースに参戦することが可能になったのです。これこそが、TRD U.S.A. inc.が目指す、まったく新しいNASCARへの参戦方法なのです。
新ファクトリーの稼動から始まった新しいトヨタのNASCARプログラム。シーズン終盤に向けて、"新ファクトリー効果"をご期待ください。
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