357LAP2024.02.07
「カラーリング変更が告げるシーズンイン」
開幕戦を前に、情報が少しずつ露わになりつつある。ストーブリーグも終わり、各チームは新しいシーズンに向けての準備を進めているようだ。新たなカラーリングを発表したチームもあり、ワクワクが止まらないと木下隆之はいう。
そろそろ開幕戦の足音が…
新年の挨拶を滞りなく終えた1月下旬、わずか前には年末のバタバタで忙しい日々を過ごしていたのに、もう1ヶ月が過ぎようとしています。すでに暦は2月になっており、時の流れの速さに驚いている方も多いことでしょう。
重ねた年齢に比例して、月日の流れが速く感じるといわれています。それは真理だと思いますね。僕がコロナ禍明けでニュルブルクリンクへの挑戦を再開したのは2022年ですが、あっという間にトーヨータイヤと過ごした2023年が過ぎ去り、もう2024年の扉を開けようとしています。年末にようやくチームとのレース契約を締結したばかりだというのに、バタバタと渡独の準備に追われ、それも整わぬままに開幕戦が迫っているのです。つくづく時の流れは速いものだと実感されます。
2023年のシリーズ閉幕でレースロスに陥っていたはずなのに、そろそろモータースポーツシーズンが迫りつつあることを感じ、気持ちはワクワクとし始めています。すでにダカールラリーは閉幕しました。新年を飾る恒例行事ですので当然といえば当然なのですが、デイトナ500マイルまでも終了するとなると、気持ちはもはや完全にシーズンに片足を踏み込んだ状態です。スーパーGTのセパン事前テストの報道がなされ始めると、もう本格的なシーズンの到来が目の前に迫っていることを実感するのです。
とくにカラーリングを変更したマシンを見ると、シーズンの幕開けを実感させられます。
スポンサー変更をきっかけにチームカラーが変更になることも新鮮ではありますが、古くから参戦している伝統的なチームが、すでにイメージカラーとして定着した色味であるにもかかわらず変更してくることがあります。新しい扉を開けるわけです。
今年TOYOTA GAZOO Racingはイメージカラーを変更しました。これまでは白地に赤と黒のカラーを散りばめてきましたが、今年は黒がベースになっています。
これはとても大胆な施策だと思います。
というのも、チームカラーは組織風土や雰囲気を表すことも効果のひとつですから、軽はずみに変えることにはリスクがあるからです。TOYOTA GAZOO Racingの例でいうならば、ベースカラーが白から黒に変わるわけです。ともに無彩色という点では共通していますが、印象はまったく異なりますよね。白は「もっとも明るい色」であり、黒は「もっとも暗い色」ということになります。白の反射率は90%ですが、真っ黒の反射率は3%程度だといわれています。
僕の勝手な想像ですが、爽やかな印象を求めた白地から脱皮し、強いチームへのキャラ変ではないのでしょうか。確かに黒地になった新生TOYOTA GAZOO Racingのマシンは、どこか骨の太い強いチームという印象があります。レーシングチームとして、一段高みを目指したのかもしれませんね。
一般的にはメインスポンサーのロゴがボディサイドに大きく、もっとも目立つ形で描かれるものですが、今年は「TOYOTA GAZOO Racing」ではなく「GR」のロゴが目立つものに変わりました。これもエポックなことだと思います。
レーシングマシンは走る広告塔ですから、ボディサイドに描かれたロゴで企業名や商品名をアピールすることが求められます。協賛金が高額なメインスポンサーはもっとも目立つボディサイドにロゴを描く権利を有するのですが、そのロゴを「TOYOTA GAZOO Racing」から「GR」に改めたのは、「GR」の商品力をさらに高める効果もありますね。
伝統を守り通す
一方で、伝統的なカラーリングを一切変えることなく踏襲し続けているチームもあります。主にスポンサーの影響を受けにくい(スポンサーを確保する必要のない)自動車メーカーやタイヤメーカーのワークスマシンにその傾向が強いようです。
タイヤブランドのトーヨータイヤは、ブルーをコーポレートカラーとしています。マシンをブルー基調に塗ることで「〇〇な企業イメージ」を訴求しています。
ファルケンタイヤも同様に、青と水色を重ねたカラーリングを伝統としています。ヨコハマタイヤのフラッグシップブランドであるアドバンは、黒と赤です。色味だけではなくデザインも伝統的なものです。その色彩から直感的にブランドを想起させることが戦略的な効果を生むからです。
プライベートチームでも、伝統的なカラーが印象的なのがIMPULです。日本一速い男との異名をとる星野一義さんがチームオーナーですが、氏を現役の頃からずっと支援をしているカルソニックのイメージカラーがそのままチームカラーとして定着しました。「カルソニックブルー」がIMPULそのものになったのです。
カルソニックは、度重なる株主の変遷によってマレリに母体が変わりました。カルソニックという企業名は消滅してしまいましたが、IMPULはそのままカルソニックブルーを踏襲し続けているのです。
企業とチームが金銭的な打算の関係を超えて、共にブランドとして支え合っています。感動的な話ですね。
F1のマクラーレンは古くからマルボロの支援を受けており、マルボロカラーである白と赤がイメージとして定着しましたが、タバコの広告が禁止されたことの余波を受けてスポンサーが撤退を余儀なくされました。
それによって、ボディサイドに「マルボロ」のロゴを貼ることができなくなりましたが、変わらずに白と赤で走ることで、ロゴがなくてもマルボロの広告効果が得られていたのです。それほど、一旦定着したカラーリングは、市場の意識の中に深く刻まれ続けるのです。
ただし、その流れも過去のものです。今でもマクラーレンはF1界で活躍していますが、新たに支援を申し出たスポンサーカラーのオレンジに塗られています。僕のような古くからのレースファンはどうしても、マクラーレン=白赤を連想してしまいますね。
スーパーGTのセパン事前テストの模様が報道されていますが、まだ各チームの新しいカラーリングは発表されていません。テスト段階ですので、スポンサーカラーのないカーボン剥き出しの黒のままです。
ですが、シーズンインが迫っています。もうまもなく姿を現すことになるのでしょう。当然のようにドライバーが纏うレーシングスーツも新色になるはずです。
2月になり、気持ちがワクワクし始めていますが、新色発表がさらに僕らの気持ちをドキドキとさせてくれるのでしょう。今から楽しみに待ち侘びたいと思います。
キノシタの近況
ニュルブルクリンク開幕戦前の準備に慌ただしい時間を過ごしていますが、そんな時だからこそ、ゆっくりと穏やかな時間の流れが必要なものです。最近は、50ccの原チャリで、トコトコ散歩にハマっています。