• モタスポコラム その23-努力は絶対裏切らない ~SUPER GT 第5戦スポーツランド菅生~

努力は絶対裏切らない ~SUPER GT 第5戦スポーツランド菅生~

モタスポコラム その23 2021.9.17

いや~、久しぶりに自走の帰路でしんみりしました。頑張る人たちに、磁石に吸い寄せられるかのように気持ちが寄り添い、そんな姿を応援することしかできませんが見守ること、あらためて幸せに思いました。

2年ぶりにSUPER GTが開催されたスポーツランドSUGO。例年通り、ドラマティック菅生、荒れたレースとなりました。良い天気でしたね!では振り返ります。

搬入日

〇バブル方式

コロナ禍、バブル方式で運営される今大会。事前に通達されていたのですが、関係者駐車場からシャトルバス、ワンボックスカー、カートでの移動となりかなり運営も手間のかかったもの。メディアセンターも今回はパドック側へ移動。普段はゲスト用に使用するピットビルの上のお部屋を使わせていただくことになり、少し楽をさせていただきました。関係者はPCR検査、抗体検査などを実施し、観客も5000人までの上限を設けた開催でした。

〇ル・マンウィナー登場

設営に勤しむスタッフに続き、続々とドライバーさんたちもサーキット入り。そんな中、先月開催されたル・マン24時間レースを制し、晴れてル・マンウィナーとなった小林可夢偉選手の姿が。ルーキーレーシング(SUPER 耐久でエントリー)の一員ですので、14号車 ENEOS X PRIME GR Supraの応援に来ておりました。まさかご本人にココで話せるとは思っていなく。そして気さくなのは、以前からの彼のキャラクターですが、距離感を縮めて話してくださるんですよね。どんなに雲の上に人になろうとまったく変わらない彼がいました。リスペクト…。

〇中嶋一貴選手も来訪

「撮影始まるので、映っちゃいますよ~」と声をかけられ、ふと見ると中嶋選手。今回は、Jスポーツさんの生中継で菅生ラウンドの解説です。一昨年までこのカテゴリーで走っていましたので、クルマはLEXUSからGRスープラに変わりましたが現役ドライバーの解説と言っても良いでしょう。

久しぶりの中嶋選手。とてもうれしそうだったんですよ、数か月ぶりの国内のサーキット。ニコニコでした。彼の解説は人気あるんですよね。経験値を活かし小気味よく話し、かつ心地よい毒みたいなものもあってね(笑)。たくさん取材をされていました。解説ではなく、走る姿を早くみたいのはやまやまですが、お顔を拝見できるのはうれしいものです。左斜めに頭を垂れながら挨拶しつつ話す一貴、久しぶりでした。

〇搬入日の〆

昨年の開催がないので、新しいクルマでデータなし。セッティングが難しいと話す39号車中山雄一選手。頑張って!

秋雨?が続いた関東地方から、夏の日差しが戻った菅生は暑かったです…。緊急事態宣言からまん延防止等重点措置区域となった宮城県。スーパーフォーミュラで6月に訪れましたが、滞在先近くの牛たんのお店が行列していてびっくり。わたしはコンビニで食料を調達しホテルに入りました。パドックで取材中、ねーさん、今回はどこが勝つと思う?なんてことも聞かれましたが、まったく見当がつかず。タイトル争いに関わる上位チームは、サクセスウェイトがあってもしぶとく這い上がる。ここのラウンドは毎年そう。それと軽いクルマが当然有利、当たり前の事しか言えませんでした。そんな菅生入りです。

予選日

GT300クラス6号車Audiが、練習走行の終盤で大クラッシュ。ドライバーは無事で安堵。クルマが大破ゆえ、この後どうするのか…。結果的に修復し決勝のグリッドにしっかり並びましたが、レースメカニックの諦めない姿…、そんな姿を見ました。サーキットあるあるではありますが、大変な事ですよね。

その朝のセッションですが、38号車 ZENT CERUMO GR Supraが4番手、39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supraが6番手に来て感触良さそう。これはイケるかも?

午後の公式予選では、39号車中山雄一選手がトップでQ1を通過。調子の良い上記の2台がQ2まで進み期待は高まりました。

Q2は、ピットで拝見。38号車のアタックドライバーは石浦宏明選手から、王子、立川祐路選手へ。ご尊顔を仰ぎ、次に39号車のピットへ。

ヘイキ・コバライネン選手はすでにシートに座っていました。メカさんたちは期待を膨らませ待ちの状態…。Q1トップで通過したら、ポールを期待してしまいます。結果的にGRスープラ勢は、2台共に上位には行けず、7、8番手のポジションとなりました。

Q1を14番手で終わった36号車 au TOM'S GR Supra、37号車 KeePer TOM'S GR Supra、19号車WedsSport ADVAN GR Supraと14号車もSWがしんどくこれは致し方ないと、予選は予選ということで割り切り。超激戦だったしねえ。このタイム差、ご覧ください。1秒もないところに、GT500クラス15台がずらり…。恐るべしSUPER GTです…。

決勝日

晴れていて、サーキットまでの道のり気持ち良かったです。朝早くきすぎ問題(笑)。チームよりも早く出勤といつものスタイルは変わりません。午前8時前にはサーキットにいますが、今回もイベント広場には行けないのでゆっくり諸々整理の時間。情報収集も出来ますしね。

チームが出勤すると、みなさん準備をされてピット作業の練習をしたり…。JスポーツさんOAのドライバーズアピアランスがあったり、ウォームアップ走行が始まるまではフルに取材の時間に充てます。

〇チーム作り

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    (前戦の写真ですが、向かって左が東條エンジニア、真ん中が吉武エンジニア、手前が関口雄飛選手)

36、37号車の東條力チーフエンジニアと雑談。若手に任せ以前より余裕のある東條さん。チーム作りという面でお話をしました。

トムスのピットは数年前から20代のスタッフを見かけることが多くなり、いまや本当に若く、チームを間違えたのかと思うくらいです。かと言って戦力が落ちた訳でもない。「層が厚いでしょ?」と東條さん。「ここまで15年かかったよ」と。

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    (左が吉武エンジニア)
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    (向かって左が誰だかわからない写真になってしまいましたが小枝エンジニア、手前が大立データエンジニア=スーパーフォーミュラでは36号車トラックエンジニア)

以前は、もっと少人数のベテランメンバーでの構成で外注のプロのメカさんたちを加え戦っていました。その編成を変え現在社員メカニックで戦っています。36号車吉武聡さん(フォーミュラライツでもトラックエンジニア)37号車の小枝正樹さん(スーパーフォーミュラでもトラックエンジニア)の両エンジニアは、同チームでの育成。

近年、経営体制も充実しました。モータースポーツ、景気の影響をもろに受けてしまいます。そんな事を鑑みると、今後、歴史を更に築いて行くには、しっかりとした経営基盤も必要。タイミングというのもあったでしょう。そして、技術力を守る意味で人の流出を防ぐ。しっかりチームを作り上げていると感じます。若手をトラックエンジニア、チーフメカニックに抜擢するなど大胆な手法も今のこちらのチームの特徴ですね。

現在、GRスープラ陣営も過渡期を迎え変化して来ています。チーム作りをみなさんが頑張っていますね。エンジニアもメカニックも全く新しい顔ぶれで戦っているところもありますし、ますます充実されているところも。追って紹介できたらと思います。

〇告白

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    (19号車国本雄資選手、31歳のお誕生日でした)

国本選手おめでとうございます。「もう雄資は31?」と親戚のおばさんのように言ってしまいましたが、ますます頑張って!そんなの彼のチームのメカニックが、ピットの前を通ると話しかけて来ました。

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    (今度はちゃんと撮る 横顔でごめんなさい)
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    (グリッドにて 向かって右が坂井くん)

レースメカニック4年目の坂井正樹くん(24歳)。彼ともよくお話をさせていただきます、お母さんの気分でね。彼のタイヤ交換はめちゃくちゃ速くて、他のチームも注目するところ。「あのコ今年から?」「昨年いましたか?」など他のチームから訊ねられたこともありました。速いねって。トヨタ運動会(仮名:毎戦GRスープラ勢はピット作業のタイムを競っています)でも、一番速いそう。

彼が、第4戦で19号車がトップでピットに戻って来たところ、ミスをしてしまい4秒稼いだギャップを同じだけ…4秒ロスしてしまいました。たった4秒と思われるかもしれませんが、コース上で取り戻すのは至難の業。アウトラップのピット出口でトップを明け渡してしまったんです。

レースが終わってからピットに行きましたが、目を見られなくてね。次の鈴鹿ラウンドでは、搬入日に元気な姿を見られたので、不思議なものでそんな事はその瞬間忘れてしまったんです。

「テレビ番組で、ミスしたシーンをスロー再生されてしまいました」と少しはにかみながら彼は言いました。「自分は強いから大丈夫です。もてぎのあとの鈴鹿では一番でした!」と続けました。今、笑顔でちゃんと前を向いているから一安心でした。

現場一筋20年、思えばメカニックがミスをすると、「やってしまいました」となぜか告られることが多い私。気持ちが落ち着いた後にスポンジバリアの役目を何度か経験をさせていただいております。今は大ベテランになったメカニックばかりですけどね。

レースウィーク、インパクトレンチが不調というメカニックがいて、実は決勝がとても心配になったりしていたのですが、大丈夫でした…。と思った矢先、今回、ライバルメーカーでトップ走行中のクルマにピット作業ミスがありペナルティが出ました。よりによって、大勢のメカニックがいる中で、そのメカニックも良く知る男子でした。誰よりも練習しているのにです…。せつないね…。

ただ、不断の努力をしている事を知っているチームは、絶対守ってくれると思うのです。立ち止まれないし、凹んでいる時間はないよねと、レース前に坂井くんとも話していたんですよね。努力は裏切らないから今まで通り変わらず頑張って!と応援するしかないです。縁の下の力持ちも頑張っていますので、みなさんよろしくお願いします!

〇決勝
レース詳細は省きますが、荒れたレースでGRスープラ陣営予選最下位14番手スタートの36号車がなんと4位でチェッカーを受けました。そして、チャンピオン1号車STANLEY NSX-GTが2位でチェッカー。驚愕!ゼッケン「1」凄すぎる。36号車の追い上げっぷりにも驚きですけどね。ランキング上位勢、しぶとく来る予想は当たりましたが、しぶとさもこんな上位でフィニッシュとはね…。レースは最後までわからないね。

12号車カルソニック IMPUL GT-R、5年ぶりの優勝おめでとうございました。SUPER GTで勝つ事は本当に難しいので、最後までドキドキだった事でしょう。星野一義監督のうれしそうなお顔は忘れませんよ。

~おわりに~
次戦、第6戦オートポリス大会(10月23日予選、24日決勝)も重量選手権。SWマックスの大会です。ジェットコースターなコースで、タイヤにも厳しい。例年ここも何かが起こるラウンド。2年ぶりの開催となりますが、ライバル陣営の優勝を称えることが続いているので、GRスープラ勢も行っちゃって!かな!

大谷幸子の近況

菅生に小林可夢偉選手がいらしていたことを書きましたが、その搬入日の時のことを少々。
39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supraの脇阪寿一監督がいらして、可夢偉選手に声をかけます。「可夢偉、ル・マン勝って何か変わったか?」と。この一言で、それまでの雑談がとても価値のあるものに変化しました。脇阪監督の引き出した珠玉の言葉のやり取り、あまりに深いお話で、これはいたら申し訳ないとその場を去りました。他に取材もありましたので。

少しだけ記述させていただくと、可夢偉選手、ル・マン24時間というレースに勝ってから、伝えていかなくてはと実感したそう。勝つまでそこまで思っていなかったそうでとても使命感に燃えていました。またレーシングドライバーは、憧れの存在でいなくてはならないという強い言葉も聞かれました。以前、ある元F1ドライバーの方が、自家用車を50台所有していたと、さらっと言われた時に感じたスケールの大きさ。後ずさりしたくなりましたが、可夢偉選手もびっくりするほどクルマを所有されていて、そんなお話がデジャヴ。過去に聞いた時と同様で、近い存在に勝手に感じていましたがやっぱり雲の上の人…。彼との距離を自分からまたずーっと遠くに離し、改めてル・マンウィナーになられた事がうれしくなりました。プロが紡ぐ言葉は、重みがあって本当に素敵です。フランスから帰国し自宅待機が解けたのが、このGT菅生の搬入日の朝だったということですので、これからたくさんル・マンウィナーとしてたくさんの言葉が配信されていく事でしょう。

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