The Rivals in Le Mans 2024

ル・マンを競う
2024年のライバルたち

ハイパーカークラスを戦う
TGRの強敵8メーカーを紹介

昨年は惜しくもル・マン6連覇を逃したTOYOTA GAZOO Racing。
当然、2024年のル・マン24時間レースは頂点の奪還に挑みます。
今季はル・マン王者となったフェラーリだけではなく、ハイパーカークラスのニューカーマー4車種も登場しています。
より激しい戦いが予想される2024年のル・マン。
そこで今年もTGRと競う強敵8車種を、ご紹介しましょう。

  • アメリカ

    CADILLAC RACING

    キャデラック

    米国レースで活躍の名門
    キャデラックが今年も挑戦

     2002年に2台のNorthstar LMP-02(LMP900)で参加したのを最後に、ル・マン24時間から遠ざかっていたキャデラック。2023年にLMDhマシンのV-Series.RでWEC参戦を開始し、ル・マンに戻って来た。ダラーラ製シャシーに5.5リッターV8自然吸気エンジンを搭載した3台のV-Series.Rが参加したこの年は善戦して2台が3、4位に入った。
     キャデラックのル・マン24時間挑戦の歴史は古く、初参加は1950年。5.4 リッター OHV V8エンジンを搭載したType 61 Sedan “de Ville”とSpyderの2台がそれぞれ10位、11位で完走している。北米でツーリングカーやGTカーで数々のタイトルを獲得して来たキャデラックがIMSAウエザーテックスポーツカー選手権に久々のプロトタイプカー、DPi-V.Rを導入したのが2017年。2023年からはV-Series.R で同選手権とWECに参戦している。
     2024年のWECには1台のみの参戦。第3戦スパ・フランコルシャンでは予選2位、決勝ではアクシデントでリタイアするまで3位争いを展開していた。ル・マン24時間にはカスタマーチームを含め3台が参加する。


    CADILLAC RACING

    No.2 Earl Bamber/Alex Lynn/Alex Palou
    No.3 Sebastien Bourdais/Renger van der Zande/Scott Dixon

    WHELEN CADILLAC RACING

    No.311 Luis Felipe Derani/Jack Aitken/Felipe Drugovich

  • ドイツ

    PORSCHE PENSKE MOTORSPORT

    ポルシェ

    “耐久王”ポルシェが
    米の強豪チームとジョイント

     1951年の初参加以来、ル・マン24時間では自動車メーカーとして最多の総合優勝19回を誇り、数々のクラス優勝も果たしてきたポルシェ。“耐久王”はこれまで常に、ル・マンではトヨタの前に立ちはだかる強敵だった。トヨタエンジン搭載のトムス85C-Lが初参加で12位完走を果たした1985年のル・マンを制したのはポルシェ。トヨタ94CVで優勝目前だった1994年のレースを制したのもポルシェだった。
     そしてハイブリッドLMP1時代には、トヨタの挑戦を退けて2015年から3連覇を果たしている。LMDhマシンのPorsche 963でル・マン復帰を果たした2023年は、レース前半こそ2台の963が上位につけていたが、完走した3台が16位、22位、40位、1台がリタイアと惨敗。
     だが2024年のWECでは開幕戦の1-2-3フィニッシュを含め、第3戦まで常にダブル表彰台を獲得し、3戦を終えてドライバー、マニュファクチャラーともにランキング1位。ル・マンにもワークス体制のPORSCHE PENSKE MOTORSPORTの他、HERTZ TEAM JOTAとPROTON COMPETITIONからのエントリーもあり、ハイパーカークラスでは最多6台の963が参加する。


    PORSCHE PENSKE MOTORSPORT

    No.4 Mathieu Jaminet/Felipe Nasr/Nick Tandy
    No.5 Matt Campbell/Michael Christensen/Frederic Makowiecki
    No.6 Kevin Estre/Andre Lotterer/Laurens Vanthoor

    HERTZ TEAM JOTA

    No.12 William Stevens/Norman Nato/Callum Ilott
    No.38 Oliver Rasmussen/Philip Hanson/Jenson Button

    PROTON COMPETITION

    No.99 Neel Jani/Harry Tincknell/Julien Andlauer

  • イタリア

    ISOTTA FRASCHINI

    イソッタ・フラスキーニ

    イタリアの古豪が
    欧州の力を得て参戦を開始

     Isotta Fraschini Milano Fabbrica Automobili (イソッタ・フラスキーニ・ミラノ・オートモービリ)は1900年にイタリアで創業された高級車メーカーで、かつてはレース活動も行っており、1913年と1914年にはインディ500(アメリカのフォーミュラーレース)に同社のマシンが参戦している。
     現在はIsotta Fraschini Motori(イソッタ・フラスキーニ・モトーリ)の名で産業用エンジンを製造している。Isotta Franschini Tipo6-C はLMH規定に則り、イタリアのミケロットがシャシーを製作し、空力は英国ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング社の設備を用いて開発した。エンジンはドイツのHWAと共同開発した3リッターV6シングルターボを搭載し、ボッシュ製ハイブリッドシステムを備える。カスタマー向けにサーキット走行用のTipo 6 LMH Pista、公道走行用のTipo6 LMH Stradaもリリース。Tipo 6-Cによる実際のレース活動はLMP2、LMP3で経験豊富なフランスのチーム、Duqueineと共に進めている。
     2024年WECは開幕戦予選が19位、決勝リタイア、第2戦は予選19位、決勝16位、第3戦は予選18位、決勝15位と、熟成を進めている。


    ISOTTA FRASCHINI

    No.11 Carl Wattana Bennett/Jean-Karl Vernay/Antonio Serravalle

  • ドイツ

    BMW M TEAM WRT

    BMW

    BMWが25年ぶりに復帰。
    過去にTOYOTA GT-Oneとの激闘も…

     BMWがル・マン24時間のプロトタイプカテゴリーに参戦するのは、BMW V12 LMRで総合優勝を果たして以来、25年ぶりとなる。このV12 LMRは6リッターV12自然吸気エンジンを搭載するオープン車両(LMP)で、LMGTPマシンのToyota GT-One(TS020)と最後まで激闘を繰り広げた。
     2023年からBMWのワークスチーム、BMW M Team WRTとして活動しているWRTは2009年にベルギーで設立され、アウディ・R8 LMS 等で世界各地のGTレースに参加し、数々の勝利を挙げてきた強豪。2023年からIMSAウエザーテックスポーツカー選手権にLMDhマシンのBMW M Hybrid V8で参戦しており、第5戦ワトキンスグレンでは総合優勝を果たしている。ひと目でBMWとわかるフロントノーズが特徴的なM Hybrid V8はダラーラ製のシャシーに4リッターV8ツインターボエンジン、共通ハイブリッドシステムと7速ギアボックスを組み合わせている。
     2024年からはWECにも2台のLMDhマシンで参戦を開始し、開幕戦では予選15,16位、決勝10位、14位だったが、第2戦では1台がハイパーポールに進出し、決勝でも常に上位につけ、6位でフィニッシュしている。


    BMW M TEAM WRT

    No. 15 Dries Vanthoor/Raffaele Marciello/Marco Wittmann
    No. 20 Sheldon van der Linde/Robin Frijns/Rene Rast

  • イタリア

    LAMBORGHINI IRON LYNX

    ランボルギーニ

    近年GTレースで活躍の
    ランボルギーニがル・マンに挑戦

     ランボルギーニがル・マン24時間に初登場したのは2006年。日本のSUPER GTで活躍するJLOCがLMGT1クラスにLamborghini Murcielago R-GTでエントリーした。JLOCは2007、2009、そして2010年にもMurcielagoで参加したが(2008年はロシアのチームがMurcielago R-GTで参加)、以後ランボルギーニのル・マン24時間参加は途絶えていた。
     IRON LYNXは2017年にイタリアで設立されたチームで、WEC、GTワールドチャレンジ、IMSA、ELMSなど世界各地でGTレース活動を展開してきた。加えて2022年からはWEC、ELMSのLMP2クラスに参戦するPREMA Racingをサポート。そして2024年からはPREMA Engineeringと提携してランボルギーニのLMDhマシン、Lamborghini SC63でWECとIMSAへの参戦を開始した。
     2024年WECでは3戦を終えて第2戦の12位が最高位。ル・マン24時間ではIMSAに参戦する19号車も加わり2台体制となる。この車両には2012年から17年までSUPER GTにトヨタ系チームからGT500に参戦したアンドレア・カルダレッリも乗り込む。


    LAMBORGHINI IRON LYNX

    No. 19 Romain Grosjean/Andrea Caldarelli/Matteo Cairoli
    No. 63 Mirko Bortolotti/Daniil Kvyat/Edoardo Mortara

  • フランス

    ALPINE ENDURANCE TEAM

    アルピーヌ

    ル・マン制覇もしたアルピーヌが
    ハイパーカーへ挑戦

     1955年に自動車メーカーとして創業したアルピーヌは1973年にルノーの傘下に入り、2021年にはルノー・スポールと統合。現在、ルノーのスポーツモデル開発を担っている。早くからラリーや耐久レースに挑戦し、ル・マン24時間には1963年に1リッター4気筒エンジンを搭載するAlpine Renault M63で初参加。その15年後には2リッターV6ターボエンジンのRenault Alpine A442Bで総合優勝を果たしている。2016年にはフランスのチーム、Signatechをパートナーに、Alpine A460でWECにエントリーし、LMP2カテゴリーでドライバーとチームの世界タイトルを獲得。2021年と2022年にはハイパーカークラスに非ハイブリッドの旧LMP1車両、Alpine A480で、2023年にはLMH車両の開発を続けながらAlpine A470でLMP2クラスに参戦した。
     2024年にはオレカ製シャシーに3.4リッターV6シングルターボ・エンジンを搭載したLMDhマシン、Alpine A424でWECに参戦開始。第3戦まででは開幕戦の7位がベストリザルト。かつてレースではフランスのナショナルカラーともいわれたブルーのカラーリングが目を引く。


    ALPINE ENDURANCE TEAM

    No. 35 Paul-Loup Chatin/Ferdinand Habsburg-Lothringen/Charles Milesi
    No. 36 Nicolas Lapierre/Mick Schumacher/Matthieu Vaxiviere

  • イタリア

    FERRARI AF CORSE

    フェラーリ

    昨年復活してル・マンを制覇した
    名門フェラーリ

     第100回記念大会となった2023年のル・マン24時間に、ワークスマシンを50年ぶりに投入し、総合優勝を果たしたフェラーリ。そのル・マン24時間初参加は、第二次世界大戦後初開催となった1949年で、初参加で総合優勝という快挙を成し遂げている。以来、1965年までに9回の総合優勝を記録した。そして10回目の総合優勝が2023年で、LMH車両のFerrari 499PによりToyota GR010 HYBRIDの猛追を退け、最初にチェッカーフラッグを受けた。
     AF Corseは元イタリア人レーシングドライバー、アマート・フェラーリが2002年に設立したチームで、マセラティ、フェラーリとの関係が深く、2003年から2006年まではマセラティのワンメイクレース運営にも携わっていた。その後フェラーリとの協力関係が始まり、FIA GT選手権、ル・マン24時間やWECにフェラーリのGTマシンで参戦し、数々の勝利を挙げた。ル・マンではLMGTE Proクラスで4勝、LMGTE Amクラスでも1勝を記録している他、2023年にはFerrari 499Pで総合優勝を果たした。
     2024年のWECには3台の499Pでエントリーし、第2戦で予選1-2-3を達成。第3戦では1台が表彰台を獲得している。


    FERRARI AF CORSE

    No.50 Antonio Fuoco/Miguel Molina/Nicklas Nielsen
    No.51 Alessandro Pier Guidi/James Calado/Antonio Giovinazzi

    AF CORSE

    No.83 Robert Kubica/Robert Shwartzman/Yifei Ye

  • フランス

    PEUGEOT TOTAL
    ENERGIES

    プジョー

    古豪プジョーは独特なマシンで
    過去も今も話題に

     1896年創業のプジョーは、早くからモータースポーツ活動を行っており、世界初の自動車レースともいわれる1895年に開催されたパリ〜ボルドー〜パリに参加している他、1913年にはフランス・グランプリとインディ500を制している。これまで耐久レース、WRC、ダカールラリー等で活躍し、多くの世界タイトルを獲得して来た。ル・マン24時間での歴史も古く、初参加は1926年。初の総合優勝はグループC時代の1992年で、翌年も連覇。ディーゼルターボのPeugeot 908 HDi FAPで参加した2009年を最後に、計3回の総合優勝を果たしている。1992年と1993年にはトヨタと対峙しているが、ともにプジョーが優勝。特に1993年はトヨタ優勢の下馬評を覆し、プジョーが表彰台を独占した。
     2023年からリアウイングレスの特徴的なフォルムを持ち、フロントとリアには3本のかぎ爪をモチーフとしてプジョーらしさを表現したLMH車両、Peugeot 9X8でWECに参戦。ル・マン24時間では8位と27位に終わった。
     2024年WECでは開幕戦では1台がレースの大半を2位で走行し、一時レースをリードした(レース後技術規則違反で失格)。3戦を終えて最高位は第2戦の9位。

    ※写真は2024年開幕戦時点


    PEUGEOT TOTAL ENERGIES

    No.93 Jean-Eric Vergne/Mikkel Jensen/Nico Muller
    No.94 Stoffel Vandoorne/Paul Di Resta/Loic Duval