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WRC 2018 第4戦 ラリー・フランス

サマリーレポート

WRC Rd.4 フランス  サマリーレポート

タナックが今シーズン2回目となる2位でフィニッシュ
ヤリスWRCは6本のSSベストタイムで進化を証明した

 フランス、コルシカ島を舞台とするWRC第4戦ラリー・フランス「ツール・ド・コルス」は、WRC設立初年度の1973年からシリーズの1戦に含まれる伝統のターマック(舗装路)ラリーである。さらに年月を遡れば、初開催は1956年と60年以上の歴史を誇るクラシックイベントであり、多くのレジェンドドライバーがウイナーズリストに名を連ねる。しかし、その大部分がフランス、イタリア、スペインなど南欧系のドライバーで、北欧出身の選手は4名しかいない。そのうちのひとりが、2015年に優勝を果たしたヤリ-マティ・ラトバラである。

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 北欧系の選手の多くはハイスピードなグラベル(未舗装路)コースでドライビングを学び、高い速度域の中でクルマを滑らせながら姿勢をコントロールする運転スタイルを得意とする。一方の南欧系選手は、国内選手権がターマックラリー中心ということもあり、いかにタイヤを滑らさず駆動力をロスなく舗装路に伝えるかを重視したドライビングに行き着く。そして今回のように、全般的に道幅が狭くコーナーが連続するツール・ド・コルスのSSでは、彼ら南欧系選手のドライビングの方がコースに合っていた。
 TOYOTA GAZOO Racing WRTを率いるトミ・マキネンは言う。「ツール・ド・コルスは自分も含めた北欧系のドライバーにとって、もっとも難しいラリーのひとつだ。このラリーで勝つためにはほんの少しのミスも許されず、クルマを100%信じて走らなければならない。他のラリー以上にセッティングの最後の詰めが重要となる」

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ハンニネンがターマック仕様の開発に大きく貢献

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  ラリー本番を前に、チームは入念なターマックテストを実践した。その際には昨年ラトバラと共にヤリスWRCで参戦したユホ・ハンニネンもテストドライバーとしてステアリングを握り、足まわりを中心とする改善を行なった。彼はフィンランド出身ではあるが、昨年のターマックラリーでもトップタイムを記録するなど路面を選ばず速い。ハンニネンの高い運転技術と知見が、ヤリスWRCのターマック性能をさらに引き上げたのだ。そして、テストを終えたヤリ-マティ・ラトバラ、オット・タナック、エサペッカ・ラッピの3選手全員がクルマに大きなポテンシャルを感じ、自信を持ってラリー本番に臨んだ。



狭くツイスティなコースで予想外の苦戦

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 しかし、ラリーが始まるとヤリスWRCは、テスト時と同等のパフォーマンスを発揮することができなかった。SS1には路面が一部濡れているところがあり、タナックとラトバラは濡れているセクションでクルマの挙動に自信が持てず、思うようにペースが上がらなかったのだ。その結果、全長49kmのSS1ではタナックが3番手タイムを記録するもトップとは18秒差。ラッピは43秒、ラトバラは46秒の遅れをとった。続くSS2は距離が短く、ラッピが1位と2秒差の2番手タイムを記録。ラトバラとタナックも7秒前後の遅れに留まった。SS1はコースが長いだけでなく、全体的に道幅が狭くツイスティで平均速度が少し低かった。対するSS2はやや高速で、トップタイムの選手の平均速度はSS1よりも10km/hほど速い。その微妙なコース特性の違いで、セッティングの合う、合わないが出るほどシビアな戦いなのである。もちろんドライバーの得手不得手もあり、全員が北欧系ドライバーのトヨタにとっては、全般的に高い速度域であったSS2の方が合っていたともいえる。



セッティング変更によりスピードアップに成功

 午前中の2本のSSを走り終え、サービスパークに戻ってきたタナックとラトバラのクルマに、チームはセッティング変更を施した。どうすればより自信を持って走れるようになるのか、ドライバーとエンジニアが知恵を出し合い、ダンパーの減衰力や車高を微調整し午後の再走ステージへとクルマを送り出した。そして午前中のSSで大きな差がついてしまった49kmのSSでは、ラトバラが大幅なスピードアップに成功。ラッピのクルマに関しては特に変更を加えなかったが、彼もまたクルマに対する自信を深めて速さを増し、SS4ではベストタイムを記録。ラトバラも1.7秒差で2番手タイムを記すなど、3名ともクルマの性能を完全に引き出せるようになっていった。

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好調のラッピとタナックが次々とベストタイムを記録

 競技2日目、デイ2でもヤリスWRCは高いパフォーマンスを維持した。SS5ではラッピが2番手タイムをマーク。SS6ではタナックが2番手、ラッピが3番手だった。そしてSS7では1番手タナック、3番手ラッピ、4番手ラトバラと3台揃って上位のタイムを刻み、セッティング微調整の効果が十分に出た。午後の再走ステージではラッピが2本のベストタイムを記録。タナックもデイ2最後のSS10で1番手のラッピと同タイムを出し、総合順位を4位から2位へと上げた。ただし、3位のヌービルとの差は0.1秒とごく僅かだった。なお、ラトバラはSS8でクルマのリヤを木に当ててしまい、ダメージがロールケージにまで及んでいたため競技続行不可能に。今回、ラトバラもデイ2では復調気味だっただけに、非常に残念な結果となってしまった。

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55kmの超ロングSSでベストタイムのタナックが2位を確実に

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 ラリー最終日、デイ3は今大会最長となる55kmのSS11と、ボーナスの選手権ポイントがかかる「パワーステージ」のSS12の、2本のステージが行なわれた。55kmのSS11ではタナックが2番手の選手に12秒以上の差をつける圧巻のベストタイムを記録。「これほど大きな自信を持ってツール・ド・コルスのステージを走ったことは今までない。ほぼ全開に近いアタックだった」と、タナック。このSS11でのステージウィンによって総合2位の座をほぼ確実なものとした。



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一方、好調の波に乗っていた4位ラッピは、SS11での結果次第では表彰台も可能な位置につけていたため、全開アタックで超ロングステージに挑んだ。スタート直後のラッピのペースは非常に速く、最初の計測地点ではタナックと同タイムだった。しかし、その直後にラッピはパンクを喫しタイヤ交換を行なうことに。2分近くタイムを失い、総合7位へと順位を下げてしまった。ラッピは「クルマはすごく良かったのに、パンクをさせてしまった。」と肩を落としたが、その後のSS12では会心の走りで今大会4回目のベストタイムを記録。選手権5ポイントのボーナスを獲得し、総合順位を6位に上げてラリーを終えた。



舗装路でもトップを競えるクルマに進化したが課題も残る

 今年のツール・ド・コルスは全部で12本のSSが行なわれたが、ラッピが4本、タナックが2本のベストタイムを記録するなどヤリスWRCはトップレベルの速さを示した。しかし、2位タナックと優勝選手の差は31秒と大きく開き、デイ1序盤での遅れを最後まで取り戻すことができなかった。クルマには勝てるパフォーマンスがあったはずだが、それを最初から完全には引き出すことができなかったのが敗因である。チームもクルマも昨年と比べれば格段に進化したが、それでもまだまだ学ぶべきことは多い。今回の経験をきちんと分析、評価し、次なるターマックラリーである8月の「ラリー・ドイチェランド」に向けても、チームはヤリスWRCのさらなるセッティング力の向上に力を注ぐ。

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RESULT
WRC 2018年 第4戦 ラリー・フランス

順位ドライバーコ・ドライバー車両タイム
1セバスチャン・オジエジュリアン・イングラシアフォード フィエスタ WRC3h26m52.7s
2オット・タナックマルティン・ヤルヴェオヤトヨタ ヤリスWRC+36.1s
3ティエリー・ヌービルニコラス・ジルソーヒュンダイ i20 クーペ WRC+1m07.5s
4ダニ・ソルドカルロス・デル・バリオヒュンダイ i20 クーペ WRC+2m02.6s
5エルフィン・エバンスフィル・ミルズフォード フィエスタ WRC+2m06.1s
6エサペッカ・ラッピヤンネ・フェルムトヨタ ヤリス WRC+2m33.5s
7アンドレアス・ミケルセンアンダース・ジーガーヒュンダイ i20 クーペ WRC+2m43.4s
8ヤン・コペツキパヴェル・ドレスラーシュコダ ファビア R5+10m34.8s
9クリス・ミークポール・ネーグルシトロエン C3 WRC+10m40.5s
10ヨアン・ボナートベンジャミン・ボウルードシトロエン C3 R5+12m26.0s
Rヤリ-マティ・ラトバラミーカ・アンティラトヨタ ヤリス WRC-