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SUPER GT 2014年 第1戦 岡山
エンジニアレポート

ピット練習を行うKeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)

雨が降り出して当初の作戦が難しくなりました。
そこでのアンドレアのがんばりが大きかったですね。
KeePer TOM'S RC F 37号車 担当エンジニア 小枝正樹

今シーズンは各ラウンド終了後に、LEXUS Racingで最上位となったチームのレース担当エンジニアに、そのレースを振り返っていただき、改めて勝負のポイントを語っていただきます。第1回は、開幕戦 岡山でLEXUS RC Fを初勝利に導いたLEXUS TEAM KeePer TOM'Sの小枝正樹エンジニアに登場していただきます。

岡山では曲がるクルマを心掛けました

小枝正樹エンジニアと伊藤大輔、アンドレア・カルダレッリ 岡山 公式テストより
小枝正樹エンジニアと伊藤大輔、アンドレア・カルダレッリ
岡山 公式テストより
 開幕戦に優勝することができて、本当に嬉しいです。ただ......。実は、去年からレースエンジニアになったばかりで、今年最初にこうやってお話しするのが『僕でいいんですか!?』って気もしています(苦笑)。
 皆さんもご存じだと思いますが、開幕戦の舞台となった岡山国際サーキットはテクニカルコースとして知られています。ダブルヘアピンのような低速コーナーが多いのですが、その一方で中高速のコーナーもあるんです。クルマをセッティングする中では、このどちらも大事にしたい。だから一般的ではありますが、クルマを仕上げるにあたってはちゃんと曲がるクルマ、つまり回頭性の良いセッティングを心掛けています。岡山の公式テスト(3月15、16日)で良い方向性を見つけることができたので、それを開幕戦ではベースに持ち込みセッティング(※1)を決めました。
※1:これまでのテストや実戦、シミュレーションのデータを基に、サーキットに行く前に施されるセッティング。これを基本に現場の状況で車両チューニングの微調整を施す。

多めに給油したので、ピットでは負けましたね

レース序盤、雨が降る中12号車をパスしたことが大きかったと語る小枝正樹エンジニア
レース序盤、雨が降る中12号車をパスしたことが
大きかったと語る小枝正樹エンジニア
 走り始めの公式練習ではアンダーステアが気になったので、それを修正して予選に挑みました。Q1では日差しがあって路面温度が20度ぐらいまで上がったため、選んだ固めのタイヤが調度作動域に入った効果もあり、大輔さん(伊藤大輔)がトップタイムをマーク。Q2ではQ1よりも路面温度が下がりましたが、アンドレア(アンドレア・カルダレッリ)が好タイムをマークして、手応えを掴むことができました。

  タイヤは、決勝を見越して固めのものを選んでいました(※2)。スタートからの決勝レース前半、アンドレアのスティント(※3) ですが、ここはその固めのタイヤを活かして後半勝負の作戦だったんです。ところが、途中で雨になってしまった。でも、雨が降り始めたコンディションでもアンドレアが頑張ってくれて、その後12号車(カルソニックIMPUL GT-R)をパスできたことが大きかったですね。

 ピットインの時間では、トップを争ったENEOS SUSTINA RC F 6号車に負けました。実は去年の岡山のレースでガス欠してストップしたことがあって(苦笑)。その苦い経験から3秒ほど多めにガソリンを入れました。そしてレース後半、大輔さんのスティントで前を行く6号車がシフトの作動不良で一瞬スローダウンしたために、逆転することになりましたね。正直な話、同じクルマを使っているわけですから『うちのクルマにも(同じ)現象が起きるかもしれない』と、ゴールするまでは不安でした。
※2:SUPER GTでは、予選Q2に進出した車両は予選Q1とQ2で使用したタイヤをオフィシャルが抽選によって選び、決勝のスタートに使用しなければならない(雨を除く)。このため、予選から決勝を見越したタイヤ選択も必要なる。通常はQ1とQ2で同じスペックのタイヤを使う。
※3:ピットインが必要なレースで、スタートまたはピットインから次の所定のピットインかゴールまでの走行時間帯を1スティントと言う。

今後も1戦1戦をめいっぱい戦うだけ

 他のLEXUS RC Fにはテスト期間中で何らかのトラブルが発生して走行中断を強いられましたが、なぜかウチの37号車には一切トラブルが発生しませんでした。そういう意味では良い流れで第1戦 岡山に臨めました。

 新しいクルマになって最初のレースで勝つことができたのは嬉しいのですが、もちろん目標とするのはチャンピオン。これだけで一喜一憂はできません。LEXUS RC Fの開発具合やライバルもいることですから、どこのラウンド、どこのサーキットで勝ちたい、とか具体的には決めずに、1戦1戦をめいっぱい戦っていきます。このレースでは、多数の応援、お祝いの言葉をありがとうございました。今後もがんばります!

小枝正樹エンジニア 小枝正樹(さえだ まさき)
KeePer TOM'S RC F 37号車 担当エンジニア

1979年生まれ、岐阜県出身。大学卒業後はレースと無関係の会社に就職するも、子供の頃に見たF1が忘れられず、2007年にTOM'Sへ入社。データ解析のエンジニアを経て、昨年からGT500クラス37号車担当のレースエンジンニアに就任。