337LAP2023.04.05
「WRCワールド・レーシング・クラシック(仮称)」開催?
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本の大活躍は国民を熱くした。国別の戦いは、国民の気持ちをひとつにする。だったらレーシングドライバーの国別対抗戦は企画できないだろうか。世界のレースを戦う木下隆之がアイデアを披露する。
日本中を興奮のるつぼに…
ベースボール国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」が閉幕した。
優勝候補の日本は、史上稀に見る活躍で…。
二刀流の大谷翔平やダルビッシュ有といったメジャーリーグで活躍するプレーヤーが来日。千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希は期待通りの165km/hを記録するなど、投手陣が大活躍した。
野手もオールスターが勢揃い。最年少三冠王であり、56本の最多ホームラン記録を樹立した村上宗隆もチームを決勝に導く逆転サヨナラヒットで貢献。吉田正尚、牧秀悟、近藤健介など打撃の天才たちがヒットを打ちまくった。
技術的な素晴らしさだけではなく、メンバーの心がひとつになった。それがあの奇跡的な逆転の数々であり、アクロバチックなプレーを生み出したのだと思う。
日本代表に選ばれた選手は30名。「侍ジャパン」が手にした世界一の称号を祝福したい。
そんな日本代表の活躍を見ていてにわかに期待したのが「WRCワールド・レーシング・クラシック(仮称)」である。勝手に名称をパクったけれど、つまりはレース界の世界選手権。各国の優れたドライバーでチームを構成し、どの国にもっともハイレベルなドライバーが揃っているかという戦いを想像したのだ。主体はマシンの性能を競うのではなく、ドライバーのスキルを競わせる点にある。
ドイツが最強なのか?
これまで輩出したF1ドライバーの数から想像すると、ドイツが強そうである。F1世界チャンピオンは、ドイツが10回も獲得した。M・シューマッハが5回。S・ベッテルが4回。N・ロズベルグが1回だ。かつては5名のドイツ人ドライバーをF1のグリッドに送り出すシーズンもあったが、今年はベッテルが引退してしまったこともあり、N・ヒュルケンベルグひとり。
イギリス勢も侮れない。過去に7回の世界チャンピオンに輝いたL・ハミルトンはいまだに現役だし、G・ラッセルは新進気鋭。L・ノリスもイギリス国籍だ。3名のトップランカーを要する。チャンピオン街道爆進中のM・フェルスタッペンとN・デ・フリースはオランダ国籍。F1優勝経験のあるE・オコンとP・ガスリーはフランス人。F・アロンソとC・サインツはスペイン国籍である。
僕が妄想しているWRC(ワールド・レーシング・クラシック)は、F1ドライバーだけで固めるつもりはない。ゆえに、このリストだけで国別のレベルを判断するのは時期尚早だろう。
ル・マン24時間を戦うWECドライバーの中にも、もちろん世界レベルのドライバーがゴロゴロしているし、世界一決定戦というのならばアメリカを加えねばならない。インディカーからの選考も考えられる。結果はまったく予想できないのである。
国別対抗レースとは
競技の特性上、代表選手の選択には頭を悩ませるはずだし、そもそも競技内容をどう設定するかが難しい。
F1マシンをワンメイク状態でかき集め、イコールコンディションで競わせるとしても、相当の金額が必要だし、そもそも極秘技術が詰まったマシンを数十台も提供してくれるとは思えない。F2マシンならば可能であろうか。いや、世界的統一規格のGT3ならば複数台をグリッドに揃えることも不可能ではなさそうだ。
いっそのこと、ラリードライバーにも門戸を広げてみるのも妙案かもしれない。そもそも、WRCなどを戦うラリードライバーのコントロールテクニックは頭抜けている。時速200km/hオーバーで先が見えないコーナーに飛び込んでいく。コースオフエリアはまったくない。というよりも、激しいドリフト姿勢のまま大木をかすめて駆け抜けていく。あのドライビングスキルを取り込まないのももったいない。なので、ラリークロス的な要素を取り入れるのも得策かもしれない。
そして、アメリカ勢を取り込まねばワールドカップの意義が薄れる。となれば、オーバルで競わせるのも一つのアイデアだ。トラックに特殊性があり、オーバル経験が成績を左右しそうだが、例えばNASCARであれば安価に(F1などと比較してという意味で…)マシンを調達することが可能で、かつ、一箇所でレーストラックのすべてを観戦できるのはありがたい。
個人のレースにポイントを与えて、各国の総合計ポイントで優勝国を決定する方法が考えられる。だが、数字上の優劣ではなく、チームの一体感が得られる方が国別対抗戦らしい。となれば、一台のマシンを乗り継ぎ、襷を手渡しながらゴールを目指すような競技にするのが望ましい。やはり、24時間耐久レースということになるだろうか。
ル・マン24時間やニュルブルクリンク24時間といった耐久レースにすると都合がいいかもしれない。ジャストアイデアであることをお許しいただきたいが、複数回のスティント走行を禁止すれば、24時間で次々とドライバーが入れ替わる。1スティントが1時間だったら、ひとつの国が24名のドライバーを揃えなければならなくなる。選手層の厚い国が勝利するのであろう。
ただ速いドライバーだけを揃えれば勝てるとも限らない。ホームランバッターと奪三振王だけでは勝てないように、さまざまなプレースタイルの選手をメンバーとすることが重要だろう。
一発の予選で目覚ましいタイムを叩き出すだけではなく、バトルを巧みにくぐり抜ける能力も必要だ。タイヤに優しいドライビングスタイルのドライバーは、特に耐久レースでは重要だし、ウエットがめっぽう強いドライバーをメンバーに加えておく必要もある。ベースボールに例えれば「代走」の秘密兵器である。
夜間でもタイムダウンしないドライバーは、24時間レースには欠かせない。後半に備えて、燃費の良いドライバーを揃えておくのも得策だ。
というように、さまざまなドライビングスタイルの選手を集めることが重要なのだ。まさにドライバー層の厚さが優勝へのカギとなる。
三笘の1mmから五郎丸まで
日本がサッカーW杯で大活躍した、そのピッチでの戦いは記憶に新しい。スペイン、クロアチア、ドイツといった強豪国と同組のグループEに組み込まれながら、下馬票を覆してスペインとドイツを撃破。日本中がW杯フィーバーに沸いた。
長友佑都や伊東純也といった名のある選手だけではなく、「三苫の1mm」で一躍知名度を上げた三笘薫、あるいは前田大然や田中碧といった当時まだ無名の選手(サッカーファンにとっては有名でも門外漢にとっては…という意味で)の存在をお茶の間が知る機会になった。選手の知名度を高めることは、競技の魅力を知らしめることにつながる。サッカーW杯の興奮をきっかけに、サッカー観戦を始めたファンも少なくないだろう。
2020年のラグビーW杯での興奮は、今でも鮮明に蘇ってくる。
体格で劣る日本勢にとって、肉体の激突が繰り広げられるラグビーは不利な競技にも思える。だが、ハンディキャップを補ってあまりある大活躍を演じた。ロシアやアイルランド、サモアやスコットランド、過去に一度勝利したW杯優勝候補の南アフリカには負けたものの、小さな体で巌のような壁を押し続ける姿は多くの感動を誘った。
サッカー同様に、そこでの活躍が選手をスターダムにのし上げる。キャプテンのリーチ・マイケルや笑わない男・稲垣啓太など、すでに知名度のある選手だけではなく、それまで無名だった(再びラグビーファンにとっては有名でも門外漢にとっては…という意味で)小柄な司令塔と言われる田中史朗や、医学部の学生である福岡堅樹など、日本代表チームの活躍からファンになった方も多いに違いない。ワールドカップには、さまざまな選手がスターになるチャンスがある。
国別対抗戦は、愛国心を刺激する。今回のWBCだけではなくサッカーW杯やラグビーW杯が証明したように、にわかファンを含めて日本中の気持ちがひとつになる。そんな団結にレーシングドライバーが力になれれば嬉しい。
レーシングドライバーには、そんな能力があると思っている。
キノシタの近況
NLSニュルブルクリンク時間耐久レース第2戦にトーヨータイヤwithRingracingから参戦しました。
マシンはGRスープラGT4、このクラスは激戦で、BMWやアストンマーチンが最強マシンを送り込んでくる。
タイヤメーカーも積極的で、我々トーヨータイヤをはじめ、ミシュラン、ヨコハマ、ピレリー、グッドイヤーが顔をそろえる。
そんな中。クラス3位でカップを頂きました。スープラ最上位です。応援ありがとうございました。