383LAP2025.03.05
「憧れのチーム」
プロスポーツ選手であれば、所属するチームに強い憧れがあるはずです。プロ野球選手であれば読売巨人軍(?)、サッカー選手ならぱ横浜F・マリノス(?)、レーシングドライバーならばTOYOTA GAZOO Racing(?)、ひとそれぞれですが、思い焦がれたチームのユニフォームに袖を通すのも、プロスポーツ選手のモチベーションのひとつかもしれません。
だとしたらF1ドライバーなら?これまで多くのメーカーに所属しレースを戦ってきた木下隆之が考察します。
あのハミルトンでさえ…
ルイス・ハミルトンが名門フェラーリに移籍するとは、誰もが予想しなかったことでしょう。彼は史上最多、7度のF1世界チャンピオンに輝くドライバーです。イギリス生まれのハミルトンは、2007年に名門マクラーレンからF1デビューを果たし、6年間在籍した後、2013年にメルセデスに移籍しました。その後、前人未到の103勝を達成したことは有名です、197回のポールポジションに輝くなど、まさに圧巻の実績を残してきました。
そんなハミルトンですが、メルセデスの全盛期に比べれば、その速さは影を潜めているように感じることもあります。
いや、モーターレーシングは道具を使うスポーツであり、道具の性能が成績を左右します。ですから、ハミルトンの力が衰えたのではなく、メルセデスF1チームの衰退が理由かもしれません。メルセデスは2024年、コンストラクターズランキング4位に低迷しました、成績不振の原因がマシンの性能にあることを考慮しなければなりませんね。
そう、その成績によりハミルトンが移籍する理由なのかどうかは不明ですが、長年にわたってメルセデスに所属してきたハミルトンは2025年、フェラーリに移籍したのです。そのままメルセデスのドライバーとしてレーシングドライバー生涯をまっとうするとばかり思っていましたので、電撃的な移籍が報じられたときには、我が目を疑いました。
彼にフェラーリ移籍を決断させた理由はなんなのでしよう。
まず考えられるのは、より戦闘力の高いマシンを求めての移籍です。ランキング4位に終わったメルセデスに対してフェラーリは、ランキングで2位になっています。この移籍を考えると、もしハミルトンが8度目のチャンピオンを目指しているのであれば、ランキングで優位に立つフェラーリへの移籍は理にかなっていると言えるでしょう。
ただ、メルセデスも2024年には4勝を果たしています。ハミルトン自身は2勝をマークしており、移籍先のフェラーリは5勝。シャルル・ルクレールが3勝、カルロス・サインツが2勝を上げていることを考えると、両チームの実力差はそれほど大きくはありません。
加えて、2024年後半のメルセデスは復調の兆しを見せています。2023年には未勝利だったハミルトンが、久しぶりに勝利を収めたのはシーズンの後半。2025年は再びチャンピオン候補に名乗りを上げる可能性がある中での移籍決断。その理由は明確ではありません。
おそらく、フェラーリへの憧れが大きな要因なのではないでしょうか。多くのドライバーが語るように、フェラーリは特別な存在です。F1の世界で成功を収めたレーシングドライバーが最後に手に入れたくなるのが、あの赤いレーシングスーツだと。そんな想いを抱えるのは、ハミルトンだけではないのかもしれません。
直接聞いたわけではありませんが、多くのF1ドライバーが「フェラーリは特別だ」と語ります。熱狂的なモータースポーツファンに支えられるフェラーリは、国民的なチームです。イタリア人でなくとも、フェラーリで走ることが最終的なゴールだと言います。
ハミルトンにもそんな思いが沸き起こり、赤いスーツに袖を通す道を選んだのかもしれません。
V9の印象が強い
プロ野球選手にとっての憧れもまた、特定のチームに向けられることが多いです。読売ジャイアンツはその最たる例でしょう。常勝を誇る福岡ソフトバンクホークスや人気球団の阪神タイガース、昨年日本シリーズを制した横浜DeNAベイスターズなど多くのチームがありますが、やはり読売ジャイアンツのユニフォームを身に纏いたいと願う選手は少なくありません。
例を挙げると、中日ドラゴンズの看板打者であった落合博満やヤクルトスワローズの広沢克巳、西武ライオンズから移籍した清原和博、広島カープの丸佳浩など、多くのスター選手がこの道を辿りました。彼らは巨人に移籍するものの、期待に添えずに引退を迎えることが多いのですが、それでも最後の舞台に上がる衣裳として選ばれるのは読売巨人軍のユニフォームです。今年の目玉は、楽天イーグルスから移籍した元大リーガー田中将大でしょう。彼の活躍にも期待が集まります。
こうして、ハミルトンの移籍もまた、特別な憧れからの決断であると捉えることができるでしょう。F1界での彼のキャリアが、どのような最後を迎えるのか、引き続き注目していきたいと思います。その挑戦が、また新たな歴史を刻むことになるかもしれません。
国内で憧れのチームはどこになるのでしょうか。
一般的に囁かれているのは、F1を目指すのならばホンダ、ツーリングカーで名声を得るのならば日産、ラリーでの活躍を期待するのならばトヨタ…。そんな言い方をするらしいです。
トヨタは最近、F1でも存在感を高めていますから、F1=ホンダの公式は当てはまらないかもしれませんが、イメージ的にはそういうことになります。
トヨタは世界耐久選手権の覇者でもあります。世界ラリー選手権でも常勝チームです。モータースポーツの頂点とされているF1にも進出しています。名門マクラーレンにはトヨタドライバーの平川選手がテスト契約していますし、ハースF1のリアウイングにはTOYOTAGAZOORACINGのロゴが記されています。トヨタの守備範囲は広いようで、故にカテゴリーには縛られませんが、あえてキャラクター分けをするのならば、そういうことになります。
という意味では、憧れの対象となる終のチームがどこなのかは不明ですね。
ただ、とても嬉しいことに、レーシングドライバー人生を終える前に必ず走っておかねばならぬサーキットは「ニュルブルクリンク」という話を耳にすることが少なくありません。F1ドライバーのフェラーリ、プロ野球選手の読売巨人軍、あるいはJリーグの横浜F・マリノスのようなチーム論からは話が逸れてしまいますが、ニュルブルクリンクは憧れのサーキットのひとつだそうです。
不肖木下隆之も、ニュルブルクリンク攻略をライフワークとしています。1990年のデビューから数えると、はや30年近く遠征を繰り返してきました。
「走り好きに生まれたのならば、一度はニュルブルクリンクで…」
との口説き文句で、多くの仲間をニュルブルクリンクの魅力漬けにしてきましたが、終の棲家ならぬ終のサーキットがニュルブルクリンクで嬉しいですね。
ハミルトンの終のチームがフェラーリであるように…。
キノシタの近況
今年もクラウドファンディングで「ニュルブルクリンク参戦」のご支援をお願いしています。物価高騰のおり、現地での生活費もなかなかのものですので、ぜひ応援よろしくお願いします。