堂々のシリーズチャンピオン獲得!おめでとう莉朋!~スーパーフォーミュラ最終ラウンド~
モタスポコラム その67 2023.11.17
いやー、スリリングな大会でした。この地、鈴鹿サーキットで開催された第3戦で優勝。この勝利がそれまでたまっていた彼のエネルギーを爆発させたと言っても良いほど、彼に大きな変化をもたらしました。そんな2023シーズンでした。宮田莉朋選手(以下、莉朋でお許しを)の勢いは止められないのだなと、改めて思いました。2019年、ニック・キャシディ選手が直近のTRDエンジンユーザーによるドライバーズタイトルですが、4年のインターバルをあけてのトムスの宮田莉朋選手のタイトル獲得となりました。おめでとうございます。
現在、誰も勝てないと思う最強チームのチーム無限。今、ここに勝ったことの価値。素晴らしいと思いますよ。無限のタイトルが続くのかなと思っていましたもの。無敵ってね。チームチャンピオンおめでとうございます。
F1の世界ですでにデビューをしているリアム・ローソン選手と3連覇を狙う野尻智紀選手を擁するチームです。強すぎ。二人ともタイトルを狙っているレベル高すぎチーム。
ぼっちの莉朋VSチーム無限。莉朋ひとりで立ち向かう感じがもうね、レース前の金曜日の記者会見ですでにかわいそうなムードになっていました。自分でもそう思ったみたいです。僕個人とチーム無限…という図式にすでに気持ちが負けそうではなく、笑顔で開き直っていましたね。もちろん心のうちは全くわからないというか、勝つことしか考えていないはずですが。でもそこで、宮田莉朋選手がポイントリーダーではあるけれども、初タイトルを目指すチャレンジ精神で臨むことで、きっとメンタルはかなりポジティブだったのではと思います。そして、レースはシビレましたよ。では振り返ります。
〇金曜日
最終ラウンドは、2レース制ですので金曜日から走行がありました。二か月ぶりのスーパーフォーミュラ。そして最終戦2レース。世界の方々も戻って来た。ちょっとうれしい。
まずは、金曜日の記者会見。タイトル候補の3人、宮田莉朋選手、リアム・ローソン選手、野尻智紀選手が登場しました。いつもこの会見は、少し緊張しますね。前述した図式で、真ん中の莉朋がポイントリーダーなのにかわいく見えました。
そして、デモランの走行の練習が夕方行われていました。なんか変?コースを逆走していました。おもしろいこと考えるものです。
セルモ・インギングのピットに行ったら、三澤メカが目配せするんですよ。その先には、立川祐路監督がいました。私をスマホで撮るポーズをしていました。撮る訳ないですもちろん(笑)。そして、三澤くんは前の週のSUPER GTオートポリスの立川選手の走り、すごかったでしょ?と言いたい感じでね。SF金曜の練習走行が始まる直前だったのですが、立川監督にお疲れ様ですと挨拶したら「俺、来週終わったら(SUPER GT最終戦で残念ながら引退)アマチュアドライバーになるから」と一言。相変わらずおふざけがすぎますよね。その冗談も泣けて来るから「勘弁して~」というのが精いっぱいでした。とってもユーモアがあるのは、もうみなさんご存じですね。しかし、すぐに監督モードに切り替わり走行スタート。そんなほっこりandいよいよ最終戦!なムードのシーンからレースウィークがスタートで、私のミョーな緊張は一瞬ほぐれました。
〇土曜日/第8戦
2レースですから、予選・決勝がそれぞれ完結する2日間。いよいよ始まりました。トムスのピットには連日撮影のカメラが入っていますので、遠慮しつつも撮りたいしと悩みながら。何より、追いかけまわされる莉朋とチームは大変だなと(タイトルかかっているので仕方ないと言えば仕方ない)。ここはチームにより対応が違います。全くシャットアウトするチームが多い中、ガッツリ撮影されているトムス。助かります。
緊迫感のあるピット…、いよいよコースイン。前日の記者会見で、とっても自信に満ちていたHonda野尻智紀選手がポールポジションを獲得。勝ちますと前日の記者会見で言った言葉が思い出されました。この彼の自信に勝つもの(他の方が勝つ事)はあるんだろうかと思えるほど、3連覇に向かっているなあとその時は感じました。莉朋は、予選2番手となりました。良いポジションです。チーム無限と直接対決で二日間過ごすのは、想定済みですので孤軍奮闘の図式をイメージしワクワクしましたね。記者会見もみんな落ち着き払っていて、出席されるメンバーもトムスの莉朋かチーム無限。3番手にHonda牧野任祐選手が入り、好調なドコモダンデライアンの好調さも素晴らしいと思いましたね。
そしてタイミングが悪くアタックするチャンスに恵まれなかったローソン選手が7番手となりました。こうなると、もう先が読めません。もちろんレースは何が起こるかわからないので全くわからないのはいつもの事なのですがね。
〇第8戦決勝
予選後のサタデーミーティングに出席しました。よってピットウォークの写真などがありません。すみません。
近藤真彦JRP会長は、今季からこのカテゴリーの発展にご尽力されていますが、生の声を聴くことでそれはとても強く感じましたね。日本の4輪のカテゴリーには、SUPER GTがありますが、どちらにもエントリーされているチームの代表でもありますので、意識されていることも感じました。観客動員数など増えている傾向にあるようですし、それぞれのカテゴリーの良さを活かし、焦らずに盛り上げて行って欲しいですね。
決勝の時間まであっという間。なんか短かったですね。いよいよ1レース目が始まるということで、グリッドへ(厳密に言うとダミーグリッド。フォーメーションラップから戻ってつくグリッドが、スターティンググリッド)。グリッドウォークに行くと「お疲れさまです」と聞こえ声の方向へ目をやると、中嶋一貴TGR-E副会長でした。
9月のWEC富士では忙しそうでいたが、声をかけてくれるなんてありがたい限り。ますます精悍になっていてね。おじさんじゃなくてよ(笑)。そこへちょうど良いタイミングで平川亮選手が現れました。F1のマクラーレン入りが発表になって、テストドライバーとは言えF1ですからねえ。ますます雲の上に行ってしまうので、次はいつ会えるんだろう?もう会えないのかなとか、そんなことを考えつつ、2ショットを。
この先、こんな事をお願いできるだろうかね、今は気軽に言っちゃっていますが(すみません)。とっても貴重すぎる写真で初めて二人に会った時のことをふと思い出したりね。昔のことをすぐイメージするなんて、私もおばあちゃんになったもんだ(切実)。
短い時間で、グリッドではたくさんの方にお目にかかりました。亮のファミリーだったり、覚えてないくらい(笑)。久しぶりのレースだし、2レースのうちの1戦目なのでまだ何か楽しむムードがありました。
前の方では、もちろんタイトルかかっていますので、緊迫感が多いにあって。そしてレースがスタートして行きます。この時はまさかあんなことが起こると思っていませんでしたね…。
シグナルがブラックアウトし、熱戦の火ぶたが切られたましが、4周目に大クラッシュが発生しました。130Rで、笹原右京選手とHonda大津弘樹選手が交錯。共にマシンが大破。笹原右京選手は、モノコックごとフェンスの外に飛んで行きました。赤旗によりレースが中断しました。
あまりに激しいクラッシュシーンにサーキットは凍り付きました。ドライバー二人の無事はすぐ報告されたのですが、恐怖でしかなかったです。
130Rのフェンスが支柱から折れてしまったとのことで、安全を確保する為、レースは3周で成立、終了となりました。70%を消化していないのでハーフポイントが付与されます。今はそんなことより、二人が心配でね。大津選手はマシンを自力で下りたとのことでしたが、笹原選手はその後の状況がわからずで心配でした。
レースが終了しましたので、表彰式…。二人が無事だから行われたと思います。記者会見も行われましたが、チームメイトの莉朋がかなり心配をしていて、明日レースをするのはどうなるんだという心境でしたね。もちろん他のドライバーさんたちも心配されていましたが。
記者会見が終わると、まだ会見があるとのことでメディアの方々は残ってくださいと、JRPさんからご指示を受けたので、何だろう?と思ったら、上野社長からの事情説明がきちんとありました。そこで、そのフェンスの修復の為にレースが終了に至ったことの説明を受けました。そして、その日の午後8時には修復作業が終わる見込みとの報告もあり、迅速なご対応に感謝でした。何もエビデンスがないと、誰かの想像だけの言葉がそのまま独り歩きしたりしますので、これはありがたかったですね。翌日もレースがあるので、安全第一で進められていることがわかりました。右京くんも無事であることも伝えられました。
莉朋のチームメイトを思いやる気持ちは、前の週のSUPER GTで予選をアタックさせてもらえなかったチームメイトの分も頑張って走ったと、それがチームメイトの役目というような主旨の発言をしていたので、それを思い出しました。それとまず助かったので明日の決勝の準備に心を進めて欲しいなあと思いながら、会見場で見送りました。
〇日曜日/第9戦
朝、トムスのピットに行ったら、36号車のピットにはマシンがなく。そうかそうだよねと言う感じで、大立エンジニアと話しました。あのクラッシュ時に呼びかけ続けたそうですが、応答がなく。マシンが大破しているから無線も壊れていたでしょうけど、そんなことも考えずにずっと呼んでいたと。メディカルまで行ったのだけれど、ご家族しか会えないとのことでしたが、それでも顔が見えたらしく、元気で良かったと思ったそうです。かなりの「G」がかかっていて、よく生きていたなと思うレベルのクラッシュだったことを伺いました。
36号車のメンバーは、最終戦を残しマシンもないし虚無感しかなかったのですが、逆に2台のメンバー全員で、37号車のタイトルにかける体制で臨みました。まりなマネが、F1みたいになりますよと朝話してくれてね。エンジニアもすべて2台体制です!と。大人数で戦います。
メカニックは、タイヤ交換のメンバーは2台共に一緒で、2台混成チームでやっています。ですので、クルマがないけど、みんなちゃんと耐火服着てスタンバイです。
いよいよ泣いても笑っても最後の時を迎えました。
第9戦の予選は、なんとリアム・ローソン選手がポールです。2位はHonda太田格之進選手。3位はHonda野尻智紀選手。莉朋は4番手です。万事休す!と思ったのは私だけかしら。Honda3台が前を占めました。ローソン選手にも野尻選手にももちろんタイトル獲得の権利はあります。
トムスのピットに行ったら、いつも通りではありますが少し元気がなく(いやあるんだけどね 笑)。最近忙しすぎるのかな?淳さん(山田淳監督)も笑顔なくて怖い怖い。幡中チーフメカも、厳しいなあHondaに囲まれてと。でもきっとやってくれる的な感じでピットを離れました。トップ3に入れなかったけれど、トップ3記者会見、莉朋は見ていたそうですよ。強いですよね。これくらい当たり前なのかな、プロだし。
〇決勝
そう言えば、無限の田中監督は、場合によってはチームオーダーありの発言をしていました。これは当然です。となるとますます可能性があがりますので、莉朋に対する環境はさらに厳しくなりますし、無限にとっても二人ともにタイトルの可能性がありますので、その可能性をさらに広げるのは当たり前のこと。莉朋への環境はさらに厳しくなりますが、チームは彼の走りを最大限にアシストして、そして信じるだけ。そんな時間を過ごしながら決勝を迎えました。
今季最後のグリッドウォーク。ルーキーレーシングのグリッドには、松井孝允選手と蒲生尚弥選手が駆け付けていました。
とうとうこの時間が来たという莉朋の表情。まな板の上の鯉ですが、勝つしかないのでね。4番手2列目。ここからどんな景色が待っているのかと、混雑したグリッドウォークを楽しみつつ、無限さんもしっかり写真を撮って来てみんなの安全を祈りつつメディアセンターに戻りました。自分の中で、なかなか尊い時間でした。
いざ、スタート!Honda太田格之進選手がトップを奪いメディアセンターがどよめきました。やるね、Hondaさんのルーキー(新人くん)。その直後、莉朋が野尻選手を抜きました。2位がマストで自力優勝ですので、まずやり遂げました。OTSを使って見事なスタートダッシュ。野尻選手を抜くのは大変だろうなあとレース前に思っていたので、驚きましたねこの最初の展開は。
最終的に、太田選手、ローソン選手、莉朋、野尻選手の順でチェッカー。3位となったことで、見事タイトルを獲得しました。おめでとうございます!莉朋の奥様がいらしたので、初対面でしたが一緒にピットで泣きました(笑)。勝てると思っていなかったと記者会見で発言したのですが、ほんとそう。彼のドライビングの問題ではなく、無限包囲網の強さ。F1デビューしたローソン、3連覇を狙う令和のカリスマのじりん(野尻選手)、莉朋は子猫に見えましたから(笑)。今季、一気に開花してタイトルを獲るにふさわしい強さを身に付け、今や莉朋を止められないと思うまでになりましたね。“乗れている”莉朋はトムスの大先輩のアンドレ・ロッテラーを彷彿とさせる強さを今季魅せつけています。外国人ドライバーのダイナミックな走りにとても似ていると思うようになりました。先輩の平川亮選手のドライビングもそんな感じですが、このチームでSUPER GTのタイトルを獲っていますので、経歴も追いかける感じになりそうですね。
怒涛のセレモニーを終え、ピットにようやく戻って来た時には、チェッカーを受けてからだいぶ時間が経っていましたが、もちろんみんながピットで待っていました。記念撮影をしてから、ひさしぶりにお目にかかった莉朋のお母様とお話をしました。彼は神奈川県の逗子市の出身ですので、ご実家が近くなんですよね。莉朋は結婚してご実家を出ていますので、お母様もシーズン中はサーキットでしか会えないそうで、一人息子を持つ親同士の会話をしつつ、前の晩は貪欲にも過去のレースを莉朋はネットで見ていたそうで、イマドキだなあと思ったりしました。
最後に、「来週も獲るぞ!」とチームのみんなで宣言して〆ました。本当におめでとうございました。
〇100戦表彰
KCMG国本雄資選手が、土曜日のレースで100戦を迎えられました。おめでとうございます!2016年にタイトルを獲得し、息の長いドライバーとなりました。SFでこれだけシートがあるドライバーは中々居ないと思います。まだまだ頑張ってもらわねば!
〇デモラン
中嶋一貴TGR-E副会長とインディーカーレースに参戦の佐藤琢磨選手が、テストカーをそれぞれ走らせました。最終戦を盛り上げるべく、来日くださりありがとうございます!デモランも大事だけど、彼らにお目にかかれるのがとても貴重。ピットウォークの間に行われたのですが、あの逆走をしていましたね。動画があると思うのでそちらでご覧ください。またいつかお目にかかれますように!
〇鈴鹿サーキットさん主催 オフィシャルさんの慰労会
この会の名前はわかりませんが、鈴鹿サーキットさんがいつもレースを支えてくれているオフィシャルさんをねぎらう会をなんとサーキットのホームストレートで開催していました。これまでは、ホテルでやっていたそうなのですが、行ってみたらあらびっくり。まさかのBBQ。立川監督も顔を出したら、オフィシャルさん喜ばれて一緒にお肉を食べてましたよ。他のサーキットでもカタチは違えど、ねぎらう会などはしているようです。ビールサーバーを社員さんが背負っている姿がツボりましたが、やりたいな私も(笑)。コロナ禍が明けて、また良き時間も戻って来ましたね。
嫌いじゃないです、こういうセンス。オフィシャルのみなさまも一年間お疲れさまでした!
すみません、腱鞘炎が辛くなって来たので、グランドフィナーレに辿りつきませんが、ここでお開きとします。12月にSFのルーキーテストがあります。来季のオーディションも兼ねておりますが、そちらで来季の体制がだいぶわかると思います。楽しみですね!SFのレースが本当におもしろくて、ぜひもっともっと楽しんで欲しいという気持ちがますます強くなったシーズンでした。ご興味をお持ちになったみなさま、ぜひサーキットに足を運んで欲しいですね!お待ちしております!SF GOアプリがあってもサーキットにおいで♪
大谷幸子の近況
こちらが終わって、続けてSUPER GT最終戦。移動日を覗くと中2日しかない中で、1日は、ジャパン・モビリティショーの仕事となり行って参りました。時間に追われて終わりましたが、何も仕事が片付かない毎日。この時期は仕方ないのですが、次が終わるとラリージャパン!いよいよ私もシーズンの終わりが近づいて来たので、最後の力を振り絞って取り組みます!原稿見直す時間がなく…ごめんなさい!
(写真 日本レースプロモーション、大谷幸子)