坪井翔初戴冠!多くのファンの魅了したスーパーフォーミュラのシーズン終了!
モタスポコラム その85 2024.11.29
満を持して戴冠。あれ簡単すぎる。坪井翔選手!2024シーズンドライバーズタイトルを取得しました!おめでとうございます!
坪井選手は、今シーズンの一戦一戦を追うごとにますます強くなっていって、誰もがその強さを疑わない、そしてミスのない走りで堂々のチャンピオンに輝きました。坪井くんは、レースウィークはもちろん緊張していただろうし、クルーも普段通りとは言っていたけど、その時を待つ心境として緊張は少なからずあったと思います。2戦あったので余計に長く緊張が続いたのではないでしょうかねえ。
そして、このレースを持ってこのカテゴリーからの引退を発表したHonda山本尚貴選手の事など、この最終戦が節目となるのは毎年のこととは言え、たくさんのドラマのあったラストレースだったと思います。では、振り返ります。
おや、最初に遭遇したのはこちらのTGR―Eなお二人。WEC最終戦の地バーレーンでの劇的なマニュファクチャラーズタイトルを獲得したライアン・ディングルエンジニアと何度もコラムに出てきている木村祥吾メカです。ライアンは、今季はスーパーフォーミュラのルーキーレーシングのエンジニアとして頑張りましたので、この鈴鹿が今季の締めくくりのレースとなりました。木村メカもお仕事しつつ、日本のチームのみなさんと旧交をあたためていたようです(カタイナコレ)。SUPER GT やスーパーフォーミュラでもタイヤ交換をしていたんですよ。バーレーンから日本に寄って、またすぐドイツに戻られました。
この日は、恒例のタイトル争いを繰り広げるドライバーの記者会見がありました。ちょうど一年前に、同じシチュエーションで宮田莉朋選手が、「無限さんの中でひとりアウェイ」のような表現をしていましたが、今回もアウェイには変わりなく、プレッシャーもハンパなかったでしょう。2度のタイトルを獲得している野尻智紀選手は落ち着いていたものの、当然闘志溢れるムード。牧野任祐選手は、過去の話をする余裕がありましたが彼も落ち着いていましたね。坪井くんとは少しポイント差はあるものの、Hondaさんのホームですのでここは胸を借りるつもりのレースウィークだったと思います。
このあと、練習走行があったのですが、ピットロードに降りていくと、引退を発表した山本尚貴選手がピットにいらしたのでそっと撮ろうと思ったら、バレてました。というか、うれしい目線をくれましたよ。伊沢拓也監督と話していたら、出て来てくれて、あまりのサプライズにセルフィでパチリ。写真の左にはデカい私がいるんですよ。記念に大切に残しておこうと思います、おばあちゃんの楽しみという事で。ちょっとだけお話を伺おうと思ったら、近寄って来て中嶋悟総監督が何かを見せたんです。で、ピットに戻って…。
なんだろうと思ってみていたら、マシンのヘイローのところに、「ありがとう」のステッカーを貼っていました。中嶋さんがしっかり貼り付けているシーンがね…ジーンと来ましたよ。うるうるしながら他のピットに行ったら、あれ?どうしました?的な目線で見られておりました。涙腺ゆるいのデフォルト。
昼に、自動運転の車両のデモ走行がありましたね。これかー!何かこうAIによる自動走行、文字通りですが未知の世界のお話で頭が全く受け付けておらず。見て初めて、内容を噛み砕く感じでした。自律走行レースリーグ、Abu Dhabi Autonomous Racing League(A2RL)というカテゴリーがあるのですよ。AIがやってくれると失業しちゃうよねえ〜と言いながらメカちゃんと見学。
その車両のピットに行くと、マシンが3台ありました。2台はAIによる走行、もう1台は人間が乗り込んでドライブします。そのドライバーは、元F1ドライバーのダニール・クビアトさんでした。背が大きかった。土日のデモランの練習をしていました。正確に一度走った軌跡を走っているように見えましたが、これまた見られるのかな。進化の度合いが大きいみたいなので、いつかまた見たいですね。
練習走行のあと、夕方に「引退記者会見」がありました。メディア用のスケジュールがJRPさんから最終案内ということでメールが入っていて、チェックをしていたら、タイムスケジュールに「山本尚貴引退記者会見」の文字があったんです。え?としばし固まりました。会見の内容は割愛しますが、中嶋悟監督との引退にいたるまでの貴重なお話をしてくださいました。しっかりお顔を眺めながら拝見しましたよ。ライバルメーカーさんではありますが、彼を尊敬しておりますので正座して聴きたい感じでしたね。
そうそう、インギングで織田チーメカが呼ぶので行ったらダブルしょうご(名前が同じなんです)。びっくりしたのですが、同じ自動車専門学校の先輩後輩の仲だったんです。それは知らなかったわ!業界狭いのか広いのかという感じですけど、木村メカの後輩も他のチームにいるんですよね。繋がっているのが何かおもしろいですよね。学生時代に先輩を見て業界にきっと入って来ていると思うから。先輩を尊敬して…でいいんですよね?
さあ、初戴冠に向けていよいよスタートです!ワンデーレース2回のレースウィークの1回目、予選から火花バチバチだったのはHonda陣営。TGR最上位は、坪井くんの5番手…。早速Hondaさんのホームの洗礼を受けましたよね。やっぱり速い…。そして、考えている間もなく決勝を迎えるワンデーあるある。ピットウォークも落ち着かない私。5番手からどうやって前に出るんだろうとか、まるで自分が走るかのような気分でした(笑)。
少し振り返りを含めながら…。ピットウォークも2日間大人気でたくさんの方が参加されていました。インギングのピットは常に長蛇の列。今季の阪口晴南選手は、デビューからここまで苦労して来たけど今季はポールポジションもあったし、第8戦は4位フィニッシュ。開幕戦の予選後に、自分のような存在(ずっと下位だったけれど)でも努力をすればポールポジションを獲得できる、このカテゴリーのドライバーはみんな素晴らしいことを訴えた会見をふと思い出しました。シーズン中盤はマシントラブルに泣かされたかな。大湯都史樹選手は、移籍されてから苦戦が続いていましたが、2位表彰台がありました。お二人とも本来の力をまだまだ発揮できると思っておりますので、来季楽しみにしていますね。
インパルの二人がパフォーマンスを発揮できず、少し元気なかったかな。平良響選手が最終ラウンドの鈴鹿でまた戻って来ました。国本雄資選手はチーム移籍組ですが、今季は苦戦が続いていますね。というか、チーム全体が少し悩んでいる様子です。名門チーム、来季はしっかり立て直してもらいましょう。カズキング任せました!
笹原右京選手、大嶋和也選手や小高一斗選手。今年は思いの外、大苦戦。ここも立て直さないといけないポイントですね。トップチームとのギャップを埋めたいですし、右京くんとチームメイトがチャンピオン。この差も辛いところ。来季はみんなの変化を期待しております。
山下健太選手、今季は2位表彰台を2回獲得。ちょっとだけ浮き沈みがあったかもしれません。ホームコースの富士では、少し伸び悩みました。でも可能性というか以前よりも手応えも感じますので(私が)来季に期待しています。凹むとこの上なく元気がなくなる健太。最後に、このチームでぜひタイトルを取りたいという力強い言葉を聞くことができたのでほっとしました。応援しているからね。
第8戦の決勝では坪井くんのうまさで5番手から2位表彰台となりました。手堅く「王手」をかけましたね。野尻選手が5番手となり、ここで彼はチャンピオンの可能性が消えてしまいました。とても意外でした。Honda太田格之進選手と牧野任祐選手が、チーム2台とも速く最終戦も勢いがありました。彼らが今季は大暴れで、チームは無限、ダンデライアンレーシング、トムスと3強となったとも言えますが、Hondaの2強は、チームの2台ともに速いという強みがあります。ここは、TGR勢の課題でしょうか。チームタイトルを獲得するのは、2台ともに速くないといけませんからね。
その目線で見て行くと、KCMGが3強に次いで、チームランキングが4位となるかも?というところも最終戦の見どころでしたよ。今季は2台で良いレースをしています。予選でもう少し前に行けたらなあ。もちろん取り逃がしたレースもありましたが、ピット作業について言えば、今回はとても速くてレースにも大きく貢献していました。だからこそ、ここでランキング4位になれば、自信もつきますよね。残り1戦をしっかり戦ってくれたらという思いで、土曜日は見ていました。
Honda山本尚貴選手の言葉の中に、この最終戦が人生を左右する方もいると思うような主旨の言葉があったように思います。確かに…、例年来季の話が出ていてもおかしくない時期ですからね。この2戦で結果を出さないと来季に繋がらない方もいるでしょう。そう思うとしっかり何もかも見ておきたいと慌てたり。短い時間でなかなか全てを見られないけど、グリッドウォークは好きだから走り回りました。
そういえば、この日、インギングのいつもここで触れている岡島エンジニア(SFの際はデータエンジニア、SUPER GTではトラックエンジニア)のご両親に声をかけられました。ずっと顔出しをせず裏方としてやって来ているのに、よく「私」とわかったと思ったのですが、きっと形状認証だと思います(笑)。お顔を隠してせっかくだからご紹介。と〜ても彼にそっくりで朗らかなご両親でした。「親」という括りで見ると同じ立場ですので息子を見る目線でいろんな気持ちが同じだったりしますが、ご心配なく、ご子息は預かりました(違っ)。インギングでチャンピオンを取るまで頑張っていただきましょう。
朝のピットの様子。どいてくれたのだけど、もったいないから、はいこっち向いて!になりました。こんな様子を見るのも今季最後ですからね。
坪井くん第9戦予選は3番手!これは良い位置、タイトルを手中に入れたと言っても過言ではないけれど焦ってはいけません。トップ3記者会見に私も出席しました。前の日はHondaさんがトップ3を占めたので迷ったんです。坪井くんは、しっかりチェッカーまで車を運べば戴冠という状態は前日もそうですけどね。これはこれで早く終わって落ち着きたかったでしょうね。もちろん最後まで何があるかわからないと、何度も話していて気を引き締めていたので、ずっと緊張状態にはあったでしょう。
グリッドでチーム無限の田中監督が、こうしてマシンをいじるところの壁になっていました。大丈夫です、私はスパイではありません。みなさんを最後の記念に一枚撮りに行っただけです。今季もかっこいい無限さんのシーズン最後の戦いに臨む姿をリスペクトしていただけですよ。この時間、どのチームも最後の調整をしてましたね。
そして、山本尚貴選手のグリッドに行って写真を撮っていたら、隣の人に声をかけられました。いやいやびっくり、TGR―WRT勝田貴元選手でした!土曜日にゲスト解説をしていましたよね。会えないだろうなあと思っていたら、ラッキー!しっかりパパしていましたね。孫が欲しいと思いながら、ラリージャパンもよろしく!でバイバイしました。
前日にリハの歌声が響き渡っていたこの方!グリッドでの国歌独唱は、EXILEのTAKAHIROさんが歌ってくださいましたよ。た、か、ひ、ろ…若者の発音で名前を読んでくださいね。国歌だけではなく、セレモニーが終わってからしっかりレースをご覧になっていたと聞いてびっくり。メディアセンターにも来られ、後ろを通ってテラスに出て行った時、あれ?今の人?となったんです。まさかの????ってね。JRPさんがアテンドされていてね。レースがハマったようですよ。記録としておきますね。
坪井くん、最終戦も2位表彰台と予選から1つポジションを上げて戴冠となりました!優勝で〆たいと思っていたと思うけど十分です。今回は、Honda太田選手の速さには完敗なTGR勢でしたよ。ほんと速かった。そんな中でこの2戦、表彰台に上がったことは見事でした。奥様がハグして讃えていたのですが、坪井くんが泣いてない様子だったことに、あれ?って感じの奥様でした(笑)。堂々としたレースでしたから、坪井くんは涙よりも安堵の方が大きかったのではないでしょうか。非の打ちどころのないレースをする優等生ですので、泣くようなシチュエーションがないのも事実(笑)。ご本人が緊張していると言っても、そんなふうに見えないというのは、彼は不満かもしれないけど、何かを疑うほどの欠点もないので、困ったものですほんとに素晴らしくてね。おめでとうございました。
坪井くん担当の小枝エンジニアは、5回目のドライバーズタイトル獲得となりましたよ。チームの中で育成したエンジニアは、誰にも負けない名エンジニアにいつしかなっていました。昨年もタイトルを獲得したのが、つい昨日のことのよう。同じこと書きますが、中嶋一貴さん2回、ニック・キャシディ選手、宮田莉朋選手と来て坪井くんでチャンピオン5回輩出!この記録は、きっと伸び続けると信じております。ドライバーは変われど、小枝エンジニアも良い仕事をしますよね〜。きっと面と向かって言ったら、ドライバーが良いからというに決まっています。その謙虚さで(まだ言ってないけど)ますます頑張ってください!
チームをまとめながら、坪井くんにおめでとうとハグする御殿場のレース部門を率いる山田淳さんのハグがすこし長めでした。良いドライバーに育ったということをあらためて認識したように受け取りました。今回というかいつも忙しい人になってしまったのでお話できておりませんが、ドライバーやスタッフ、若者をとても冷静に分析している人です。そして、淳さんに褒められるのはトムスに所属するドライバー、スタッフにとってこの上ない喜び。すっかりお父さんだから、いっぱい褒めてあげたのかな。淳さん、チームのみなさん!おめでとうございました!
表彰式やシーズンエンドセレモニーは、みんなを称える素敵なコンテンツですが、今年は特にね、なんかもうジーンと来ることばかりでしたね。お疲れ様でした。
最後は、会見などが全て終わりチームに戻ってチームフォトが最後のルーティンかな。他のチームでも撮っているところがありますね。すでにできあがっていたスタッフもおりますが↑。あとね、2台体制あるあるは、やっぱり自分の担当するクルマでタイトルを獲りたい!ということ。そりゃそうだよね。チームメイトが一番のライバルですからね。そう言っていたメカさんたち、頑張ってよ!
そして、KCMG!福住仁嶺選手3位表彰台!そして、チームランキング4位!おめでとうございます。もともと実力のあるドライバーに結果がついてくるというのは、これだけ難しいのかと思ったこともありましたが、2人でKCMGに旋風を巻き起こしてくれました。課題はまだ山積みだとは思うけど、ポールポジションを獲得したり表彰台に乗ったり、小林可夢偉選手も5年ぶりの表彰台もありましたよね。最終的に、進歩していて結果が残りました。チームランキングは、来季のピットの位置が変わりますので大きいですね。1コーナー側から4番目の位置(間に別カテゴリーを挟む場合もあり)となるので、初めて前の方に行きますね。これはうれしい。
土居オーナーは、とても喜んでいましたし、インターナショナルなチームですので、今後も人材は海外のスタッフも入れていきたいとおっしゃっていましたね。ここが他のチームと違うところかな。香港を拠点とする海外のチームですから、独自目線の目標をお持ちでした。
最後のレースに臨む前に、ピットで小林可夢偉選手に、WECのマニュファクチャラーズタイトルを取ったことをおめでとうと言い忘れていたので、おめでとう!と元気に伝えておきました。でも「こっちが上手くいかへん」と。そして、これに勝つまでやめられへん!とおっしゃっていたので、見届けないと、と目標ができました。勝ってしまうと居なくなるかもと考えるのもちょっと嫌ですけどね(笑)。優勝だけは、早めにお願いします。とにかくチームの今後も楽しみにしていますよ!
今季、結果の出なかったドライバーさんもおりました。このカテゴリー、非常に難しいですよね。最後で何か起こることに期待したのですがね。ただドライバーの技量の差がとても大きいとは思えないけど、コンマ数秒差で戦っているのでプロの世界は厳しい。ちょっとの差が大きく、また如実に出てしまうのがスーパーフォーミュラ。だからこそ、かっこいいとも思います。今季は、来場者も増えとても賑やかなサーキットでした。蒔いた種に芽が出たかな。関係者のみなさま、それこそ近藤真彦JRP会長も奔走され、テレビでも宣伝されていてうれしかったですね。
レース展開もおもしろかった。私はレースそのものがかっこいいと認識されれば、ファンは増えると思っています。とにかく頑張っているのを肌で感じるカテゴリーで、取材だというのにモータースポーツを楽しませていただきました。ありがとうございました。来季ももちろん期待しております!
大谷幸子の近況
マカオグランプリがあったり(行ってないよ)、ラリージャパンがあったりの11月。SUPER GTもありましたから、モタスポがいっぱいな11月でしたね。貴重なシーンをたくさん見すぎて、写真も動画もパンパン。アウトプットが間に合いません。今年の現場は、あとSUPER GTだけとなりましたので、原稿の締切を伸ばしてもらって追いつきました。まずひとつ、このカテゴリーがシーズンの終わりを迎えました。さみしいですね、いざ終わると。そして来週、SUPER GTが終われば「夏休み」が取れます!残り1戦、頑張ります!
(写真 トヨタ自動車、日本レースプロモーション、大谷幸子 テキスト 大谷幸子)