TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の勝田貴元が、8月19日(金)から21日(日)にかけて、ベルギーのイープルを中心に開催された、2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」に、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストンと共にTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationから出場。道幅が狭く超高速区間が多い難関ターマック(舗装路)ラリーで、数々の困難を乗り越えて総合5位を獲得しました。
昨年初めてWRCとして開催されたイープルは、昔から高い人気を誇っていたターマック・ラリーです。ベルギー西部のイープルを中心とするステージは、その大部分が農道の狭い道を使用。直線的なセクションが多いためスピードがかなり速く、直線を繋ぐジャンクション(曲がり角)では、フルブレーキングが求められます。農道であるため、畑から流出した泥や砂利によって舗装路面のグリップが非常に低くなるところも多く、グリップの変化を予想し対応することが難しいラリーでもあります。また、路肩に深く幅の広い側溝があるステージも多く、僅かにコースを外れただけでも、それが大きなアクシデントに繋がることが多いのもこのラリーの特徴です。実際、勝田は昨年のこのラリーでは、コースオフによりリタイアに終わっていました。
ラリー初日、19日(金)のデイ1は、勝田にとって非常に困難な一日となりました。午前のセクションではトランスミッションのトラブルによってスロー走行を余儀なくされ、数分をロス。午後は、降雨を予想しレインタイヤを中心としたタイヤを選択してステージに臨みましたが、雨は降らずさらにタイムを失い、総合18位でデイ1を終えました。しかし、ドライコンディションとなった翌日のデイ2で、勝田は自信を持ってGR YARIS Rally1 HYBRIDをドライブ。1本目のSS9で4番手タイムを刻み、午前のセクションで総合7位まで一気にポジションアップ。午後も、SS9の再走となるSS13で4番手タイムを、SS14と16では5番手タイムを記録するなど、いくつかのステージでハイブリッド・システムが作動しないトラブルに見舞われながらも、好調な走りを続けました。そして、午後のSS15では上位の選手がデイリタイアとなったことで順位をひとつ上げ、総合6位でデイ2を走りきりました。最終日のデイ3は、またしてもハイブリッド・システムのトラブルが発生するも、集中力を切らすことなく走行。ボーナスポイントがかかる最終の「パワーステージ」では、5番手タイムを記録し、1ポイントのボーナス獲得に成功。また、SS19で総合5位につけていたライバルがコースオフによりリタイアしたことで、順位をさらにひとつ上げ、総合5位でフィニッシュしました。
なお、前戦のラリー・フィンランドまでは、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのカッレ・ロバンペラと勝田のふたりだけが、開幕戦のモンテカルロからポイント獲得可能な総合10位以上の順位でフィニッシュし続けていましたが、今回のイープルでロバンペラが初日にコースオフしてデイリタイアとなったことで、現在は勝田だけが、全戦で総合10位以上の結果を残している唯一のドライバーとなりました。勝田は第2戦以降、8戦連続で総合6位以上のリザルトを記録しています。
勝田貴元:このラリーを最後まで走り切れたことを、嬉しく思います。初日は残念ながらトラブルに見舞われ、完全にストップする直前でしたが、幸いにも競技を続けることができました。問題を解決してくれたチームに感謝しています。その後は、最後まで走りきることができたので良かったです。土曜日は、自分にとって非常にポジティブな一日でした。ペースを上げようと試みましたが、全てが上手くいっている時は、クルマにもドライビングにも自信を持つことができるものです。イープルまでの3戦は、昨年とても難しく感じられたラリーでしたが、今年はその3戦をポイント圏内でフィニッシュできたので良かったです。このラリーを戦い終えて、舗装路面でもこのクルマで気持ちよく走れるようになってきているのは、この後に2戦あるターマック・ラリーを戦う上でとても良いことですし、次のターマック・ラリーであるラリー・スペインでは、もっとプッシュできると思います。
ユホ・ハンニネン(インストラクター):ラリーの序盤は貴元にとって困難なものでした。クルマに自信を持ち切れず、路面のグリップ変化にも悩まされ、午後はタイヤ選択のギャンブルを試みるも上手く行きませんでした。しかし、金曜日に起きたトラブルを乗り越え、土曜日の朝にはとてもいいスタートを切ることができ、その後も順調にいいタイムを刻んで行きました。ハイブリッド・システムに発生した問題が、順位に影響しなかったのは不幸中の幸いといえます。総合5位でフィニッシュし、パワーステージでも5番手タイムを獲得できたのは、とても多くの問題が起きていたことを考えれば本当に良かったと思います。貴元が昨年、そして前回のクロアチアと比べてもターマック・ラリーでのドライビングを大きく向上させていることに、私はとても満足しています。シーズン終盤に控える2つのターマック・ラリーに向けて、大きな自信となりました。
イープル・ラリー・ベルギーの結果
1 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID)
2h25m38.9s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID)
+5.0s
3 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID)
+1m41.6s
4 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID)
+3m28.5s
5 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID)
+6m06.1s
次回のイベント情報
勝田の次戦は、9月8日(金)から11日(日)にかけて、ギリシャで開催されるWRC第10戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」です。初開催は1951年と長い歴史を誇るこのラリーは、山岳地帯の荒れた路面を走行するグラベル(未舗装路)ラリーです。路面には大きな石も多くあるためクルマやタイヤにとって非常に厳しいラリーであり、9月上旬は例年気温も高いため、選手たちにとっても非常にタフな一戦です。
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