TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかる、山本雄紀が、5月9日(木)から12日(日)にかけてポルトガル北部の「マトジニョス」を中心に開催された、FIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦「ラリー・ポルトガル」に、GR Yaris Rally2で参戦。彼らにとってはRally2車両で初めて臨んだグラベル(未舗装路)ラリーでしたが、小暮はメカニカルトラブルで、山本はコースオフによりデイ2でリタイアとなりました。
ラリー・ポルトガルは長い歴史を誇り、1973年にWRCがスタートした最初の年からシリーズに組み込まれていました。開催地は一時、ポルトガル北部から南部に移りましたが、数年前に北部に回帰。北部最大の都市であるポルト近郊の、マトジニョスにサービスを置くフォーマットが近年は定着しています。ステージの路面は、市街地のスーパーSSを以外はグラベル(未舗装路)で、流れるような中高速コーナーが続くステージもあれば、非常に荒れた路面が続くテクニカルなステージもあります。
小暮と山本は以前、前輪駆動のラリー4車両でグラベルラリーに出場したことはありましたが、彼らにとって今回のポルトガルは4輪駆動のラリー2車両で臨む初めてのグラベルラリーとなりました。彼らにとってはラリー・スウェーデンのスノー、クロアチア・ラリーでのターマック(舗装路)に続く、第3の路面でのラリーとなり、全てが新しい経験でした。
ところが、彼らのチャレンジは本格的なグラベルステージが始まった、金曜日のデイ2の早い段階で幕を閉じることになってしまいました。山本は金曜日の朝最初のSS2で小さなミスを犯し、コースオフ。転倒を喫しリタイアとなってしまいました。幸いにして山本にもコ・ドライバーのサルミネンにも怪我はありませんでしたが、クルマのダメージは大きく、彼らはそこでラリーを終えることになりました。
一方、小暮は比較的順調にステージを重ねていましたが、エンジン関係のトラブルによりSS5を終えてリタイアとなりました。それでも小暮は5本のステージで貴重なマイレージを稼ぎ、様々なステージやコンディションを経験したことで、滑りやすい路面でのドライビングに磨きをかけ、今後に繋がる収穫を得ることができました。
小暮ひかる:
ポルトガルでは多くの新しい経験をしました。事前のテストはウェットコンディションだったので、シェイクダウンで初めてラフでドライなグラベルステージを走りました。金曜日の午前中は順調で、摩耗したタイヤでのドライビングや、ハードタイヤとソフトタイヤをクロスして履いた状態でのクルマの動きについて学ぶことができました。問題が起きるまでは、とても順調だったと思います。ドライビングのリズムもそれほど悪くなかったですし、段階を踏んでステージを重ねるごとにプッシュしていきました。ですので、リタイアするまではいいアプローチができていたと思います。もちろん結果は残念でしたが、ステージを数本しか走れなかったとはいえ、多くのことを学ぶことができましたし、いいフィーリングも得られました。次のサルディニアの前にも事前テストがあるので、しっかり準備をして臨み、より良いラリーになることを期待しています。
山本雄紀:
このラリーでは多くの経験を積むことができると期待していただけに、こんなに早く終わってしまったことは非常に残念ですが、きっと今回のことから学ぶことができるはずです。自分のペースノートにはひとつ小さなミスがありました。少し楽観的な記述になっていて、コーナーに対して少しだけ高いスピードで入ってしまったのです。その結果リヤが流れてしまい、それを修正することができずコーナーイン側の土手にぶつかって転倒してしまいました。ラリー本番のコンディションはテストの時よりもイージーなのではないかと思っていましたが、それほど簡単ではありませんでした。とても滑りやすく、グリップの変化も多く、コーナリングラインを維持することがとにかく大変でした。気持ちは既に次のサルディニアに切り替わっていて、とても楽しみです。道幅はより狭く、ツイスティな道が多くて難しいことは分かっているので、ペースノートの完成度がさらに重要になると思います。ポルトガルでの自分のオンボード映像とペースノートを分析して、サルディニアではもっといい走りをしたいと思っています。
ユホ・ハンニネン(インストラクター):
2人にとって、このラリーがこんなにも早く終わってしまったのは本当に残念なことです。金曜日の最初のステージでリタイアしてしまった雄紀は大きな失望を感じたことでしょうし、技術的な問題でリタイアしたひかるもそれは同様でしょう。彼のラリー序盤はうまく行っていましたし、安全なペースで走りながらも学びを続け、速さも十分にありました。しかし、ラリーではこのようなことも起こりますし、全ては学習の一部なのです。今回もクロアチアと同様、事前のテストとラリー本番では天候がまったく異なり、テストは大雨に見舞われたため、雄紀とひかるは今回のラリーで初めて、ハードのグラベル用タイヤをこのクルマで履いて走ったのです。新しい路面、未知なるグリップコンディションなど、毎日新しい経験をしながら、新しいことを学んでいるようなものでした。今、彼らは多くのことを受け入れなくてはならない状況にあるのです。次のサルディニアはほぼゼロからスタートするようなものですし、よりチャレンジングなラリーだと思いますが、その前にいい内容のテストを行ない、走行距離が伸びることを期待しています。
ラリー・ポルトガルの結果(WRC2クラス)
1 Jan Solans/Rodrigo Sanjuan (Toyota GR Yaris Rally2)
3h53m25.2s
2 Josh McErlean/James Fulton (Škoda Fabia RS Rally2)
+3.2s
3 Lauri Joona/Janni Hussi (Škoda Fabia RS Rally2)
+1m47.4s
4 Fabrizio Zaldivar/Marcelo Der Ohannesian (Škoda Fabia RS Rally2)
+2m14.4s
5 Yohan Rossel/Arnaud Dunand (Citroën C3 Rally2)
+2m30.6s
6 Roope Korhonen/Anssi Viinikka (Toyota GR Yaris Rally2)
+3m13.3s
R 山本 雄紀/マルコ・サルミネン (Toyota GR Yaris Rally2)
R 小暮 ひかる/トピ・ルフティネン (Toyota GR Yaris Rally2)
■次回のイベント情報
小暮と山本の次戦は、5月31日から6月2日にかけてイタリアのサルディニア島で開催される、第6戦「ラリー・イタリア サルディニア」です。道幅が狭く高速なステージが多いこのラリーの路面はグラベルとなり、砂状の軟らかい路面と、岩盤で覆われた硬い路面の両方があるため、彼らにとっては大きな学びを得る機会になるでしょう。彼らはサルディニアでも引き続きGR Yaris Rally2をドライブし、WRC2クラスに挑みます。
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