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ラトバラの加入で大幅に戦力アップ。
18年ぶりにWRC復帰のトヨタに注目!

2016/12/26
  • text by 古賀敬介
WRC

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ラトバラの加入で大幅に戦力アップ。
18年ぶりにWRC復帰のトヨタに注目!

  • 2016/12/26
  • text by 古賀敬介
  • WRC

2016年12月13日、これまでその一部が秘密のベールによって覆われていた、TOYOTA GAZOO RacingのWRC参戦体制の全貌が明らかになった。

 18年ぶりに公道レースの最高峰WRCに復帰する重要な発表を行う地としてチームが選んだのは、フィンランドの首都ヘルシンキ。クリスマスシーズンで賑わうヘルシンキに、世界各国からメディアが集まり、会場内は外の寒さを忘れさせるほどの熱気に包まれた。

 なぜ、わざわざフィンランドで参戦体制を発表したのか――。

 それはチームの開発拠点がフィンランドに置かれ、開発向上周辺には、ラリーの本場らしく、テスト壮行できる公道が豊富にあるからだ。チームを率いる元WRC王者トミ・マキネンをはじめとするスタッフもフィンランド人が多く、来季の参戦マシンであるヤリスWRCの開発ドライバー、ユホ・ハンニネンとそのコ・ドライバーもフィンランド人。加えて、発表会では4名のフィンランド人選手が新たなるメンバーとして紹介された。WRC通算16勝を誇るヤリ-マティ・ラトバラと、'16年のWRC2(WRCの下部カテゴリー)王者で若手ナンバー1の呼び声も高いエサペッカ・ラッピ。そして彼らのコ・ドライバー2名である。なるほど、ラリーの本場、フィンランドはトヨタWRCチームの船出にふさわしい場所だったといえる。

毎日のようにヤリスWRCをチェックしているラトバラ。

ステージ上に現れたラトバラとコ・ドライバーは、私服姿だった。

 直前まで南フランスでマシンの開発テストを行っており、ギリギリのタイミングで発表会場に駆けつけ、服を着替える時間がないほどのタイトなスケジュールだったのだ。

 '16年はフォルクスワーゲンのドライバーとしてWRCを戦ったラトバラは、12月に入りトヨタWRCチームへの加入が決定。以降、連日のようにテストカーのステアリングを握り、ヤリスWRCの性能向上に全力で臨んでいた。

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マキネンならラトバラの強さを引き出せるはず!

 ラトバラをメンバーに加えた理由について、マキネンは「彼にはスピードと経験と技術的知識がある。マシンを開発する上でヤリ-マティの加入は非常に大きなプラスとなるだろう。彼のような優れた能力を持つドライバーを招くことができて、本当に嬉しい」と述べた。

 ラトバラは'16年こそシーズン1勝に留まったが、本来はもっと勝てるだけのスピードがある。'10年、'14年、'15年と過去3回、年間ランキング2位につけた実績もある。精神的な部分での弱さがたまに顔を出すことがあるが、それさえなければタイトル争いをできるドライバーだ。選手として豊富な経験を持つマキネンならば、ラトバラの強さをフルに引き出すことができるかもしれない。

 テストでヤリスWRCをドライブしたラトバラは、「まだあまり長い時間乗ったわけではないが、とても素性の良いマシンだと思った。これから細かな部分のチューニングを進めていけば、短時間で戦闘力の高いマシンに仕上がる予感がする」と、潜在性能の高さを確信する。

急激な進化をみせるヤリスWRCのポテンシャル。

 なお、'17年に関してはラトバラとハンニネンのふたりがレギュラードライバーを務め、ラッピはテストドライバーとしてチームを支える。ただし、機が熟せばラッピにもヤリスWRCでラリーに出場するチャンスが巡ってくるかもしれない。

‘17年のWRCはマシンのレギュレーションが一新され、WRカーは今までよりもさらに速いマシンに進化する。

 しばらくWRCから離れていたトヨタが、いきなり完成度の高いマシンを送り込むのは容易ではないだろう。しかし、発表会当日に、ヘルシンキから南フランスへととんぼ返りしたラトバラは、ごく短い時間でヤリスWRCのハンドリング性能を引き上げた。最初はやや曲がり辛そうに見えたマシンは、数時間後には自然なコーナリングラインを描くようになっていたという。

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マキネン「初戦から表彰台を狙っていく!」

「'17年1月19日(現地時間)に開幕するラリー・モンテカルロのスタート直前まで、マシンの開発は続ける。年末返上でチーム一丸となって頑張るよ」と、マキネン。

「表彰台に上がるのはいつごろの予定?」という質問に対しては、「もちろん初戦から狙っていく。僕らは負けず嫌いだ。少しでも早く良い結果を出すために全開で突き進む」と断言した。

 現役時代は恐れを知らぬアクセル全開のドライビングで人々を魅了したマキネン。彼がどのようにチームをコントロールするのか、彼の“ハンドリング”と“アクセルワーク”に要注目だ。

 2017年シーズンのWRCはモンテカルロを皮切りに、欧州、中南米、豪州など年間13戦で行われる。

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