ダカールラリー2024レポート No.2 TOYOTA GAZOO Racing、
ラリー中間の休息日を終え、3台がトップ10圏内で後半戦開始

2024.1.15(月)- 18:00配信

1月5日(金)にスタートが切られたダカールラリー2024は、中間の休息日を経て、2週目の後半戦に入りました。サウジアラビアを舞台に行われているこの「世界一過酷なラリー」に、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は5台のGRダカールハイラックスEVO T1Uで参戦。1月14日(日)のステージ7を終えた時点で、ルーカス・モラエス/アルマンド・モンレオン組が総合3位、ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ組が総合5位、ガイ・ボッテリル/ブレット・カミングス組は初のダカール参戦ながら総合9位と、TGR勢は3台がトップ10圏内を走行しています。

【ステージ4】
1月9日(火)の第4ステージはアルサラミヤから東部のアルホフフへ。セミマラソンステージの2日目となる第4ステージとして、わずか2時間のサービスを終え、アルサラミヤの人里離れたリモートビバークで一夜を過ごしたあとスタート。競技区間は比較的短い299kmながら、岩場と砂丘のトリッキーで尖った岩や埃が多いステージとなりました。
ステージ3で優勝したモラエス/モンレオン組はトップスタートとなり、コースを切り拓いていく役目を強いられましたが、それでも11位でフィニッシュ。総合ではトップから19分31秒差の4位を守りました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組はステージ中盤でパンク。かわされた車両の巻き上げる砂埃で視界を遮られ、大きくタイムロス。23分26秒遅れの18位でフィニッシュしました。
一方、初のT1車両で注目の集まる期待の若手、セス・キンテロ/デニス・センツ組は68km地点でストップ。メカニカルトラブルで油圧が低下、トラブルが深刻であることを認識し、アシスタンストラックを待つことになり、大きくタイムロス。前日までトップ10を伺う位置にいた総合での上位争いからは脱落することとなってしまいました。しかし、キンテロ/センツ組はW2RCのシーズンとしても戦っているため、翌ステージ5以降でラリーに復帰し、各ステージでのポイント獲得を目指すと共に、チームメイトのサポートも可能な位置で走行を続けます。
ボッテリル/カミングス組は、ステージ4でも好調。2回のパンクに見舞われるも17分29秒差の16位でフィニッシュし、総合12位へ5つポジションアップを果たしました。
初ダカールの18歳、サオード・ヴァリアワとフランソワ・カザレ組は苦戦。スタートしてまもなくエンジンの出力低下に見舞われ、1時間以上のタイムを失い49位、総合25位への後退を余儀なくされてしまいました。

【ステージ5】
1月10日(水)のステージ5は、アルホフフからシュバイタへ、500kmを越える長い移動区間を経て、サウジアラビア東部、ルブアルハリ砂漠の「エンプティ・クォーター」地帯へ。この日は競技区間118kmと短いものの、柔らかい砂丘での、過酷なステージとなりました。
砂丘のみで構成されたこのステージ5は、総合でTGR勢最上位の4位を走行していたモラエス/モンレオン組にとって試練の一日となりました。延々と続く砂丘越えで、モラエスが車酔いに悩まされペースを落とし、またその砂丘越えで判断ミスにより横転。車両にダメージは無かったものの、後続車に引き起こして貰うため待機せざるを得ず、タイムを失うこととなりました。
モラエスと同郷のブラジル人ドライバー、マーカス・バウムガート(X RALLY)の助けにより戦線に復帰しましたが、この短いステージは37分16秒遅れの51位でのフィニッシュとなり、僅差で争っている総合順位争いでも4位から10位へと後退を余儀なくされてしまいました。
このステージでTGR勢最上位フィニッシュを果たしたのはベテランのド・ヴィリエール/マーフィ組。トップから4分20秒差の6位でフィニッシュし、総合順位は11位をキープ。
ダカール初出場のボッテリル/カミングス組にとって初めての砂丘でのフルステージとなりましたが、トップから11分55秒遅れにとどめ、27番手。
同じくルーキーのヴァリアワ/カザレ組は、前ステージで遅れたことにより、後方からのスタートを余儀なくされたため苦戦を強いられ、38位でフィニッシュ。フィニッシュしたときには既にビバークは闇に包まれていましたが、それでも総合26位につけています。
キンテロ/センツ組は、ステージ4でウェイポイントを通過できず、フィニッシュできなかったため20時間のペナルティを受け、総合上位争いからは脱落。加えて、エンジン交換による20時間のペナルティがこのステージ5の結果に追加されることとなり、リザルトではこのステージ67位という結果となりましたが、実際のフィニッシュタイムは首位から2分52秒差の実質5位という速さを見せました。

【ステージ6】
1月11日(木)今大会前半戦のハイライトとなる、2日間にわたるステージ6の「48時間クロノ」がスタートしました。シュバイタ近郊のビバークをスタートし、砂丘をループで走破しシュバイタへと戻る、競技区間は549kmながら、「エンプティ・クォーター」での終わりの見えない砂丘との戦いが繰り広げられました。この「48時間クロノ」は、メカニックによる整備や部品補給なしで2日間を走破する必要があり、1日目は、午後4時になった時点で7箇所に用意されたビバークのうち最も近い場所に強制ストップ。サービス無しの一夜を過ごすことになります。翌朝7時から走行は再開され、再びシュバイタでゴールを迎えます。
1日目、TGRクルーはトラブルフリーで5台共にビバークに到着。5台のうち最上位はモラエス/モンレオン組で、4位でビバークDに到着。キンテロ/センツ組は1日目8位、ド・ヴィリエール/マーフィ組が11位、ボッテリル/カミングス組は16位で、この4台は同じビバークDで一夜を過ごすこととなりました。
一方、ヴァリアワ/カザレ組はトランスミッショントラブルで序盤苦戦を強いられるもすぐに回復。しかし、「エンプティ・クォーター」特有の、延々と続く砂丘での車酔いに苦しめられ、36番手スタートから大きく順位を落とし、ビバークCで翌日のスタートを待つこととなりました。
また、このステージ6前半では、プライベーターとしてトヨタ・ハイラックスEVOで参戦し、ここまで総合首位につけていた、ヤジード・アル・ラジ/ティモ・ゴットシャルク組(OVERDRIVE RACING)が転倒を喫し、痛恨のリタイアとなってしまいました。
翌1月12日(金)は、難しい砂丘地帯でベテラン勢が本領発揮。モラエス/モンレオン組はその素晴らしい走りでトップと22分45秒差の4位でフィニッシュし、総合順位でも首位から1時間4秒遅れの4位へと復帰しました。ド・ヴィリエール/マーフィ組にとっても良いステージとなり、トップから37分4秒遅れの7位でゴール。総合順位も6位へと浮上しました。
キンテロ/センツ組はトップから49分5秒遅れの9位でフィニッシュ。ボッテリル/カミングス組は、キンテロ/センツ組から1分28秒差の10位で続き、砂丘での経験は少ないながらも、そのポテンシャルを示しました。この結果総合順位も8位へ浮上。初出場のダカールラリーで、トップ10圏内で前半を折り返すという期待以上の速さを見せています。
ヴァリアワ/カザレ組は、ステージ6序盤でギアトラブルに見舞われるも、トラブル解消後はペースを上げ、乗り物酔いに苦しみながらも2時間9分42秒遅れの25位。ダカール史上最年少ワークスドライバーの一人である18歳の南アフリカ人ドライバーは、初めてのダカールラリーで着実な学びを続けています。

【休息日】
TGRのGRダカールハイラックスEVO T1Uは、5台揃ってダカールラリー史上もっとも過酷なステージのひとつとなったステージ6の「48時間クロノ」を無事走り切りました。ステージ6終了後、シュバイタ近郊のビバークへと戻って来た全ての車両はトランスポータートラックでリヤドへ。ドライバー/コ・ドライバーやライダーらは飛行機でリヤドへと移動。1月13日(土)はサウジアラビアの首都リヤドで恒例の休息日を迎え、ドライバー/コ・ドライバーやライダーは、つかの間の休息で後半戦に向けての英気を養いました。一方でメカニックは忙しい一日を過ごし、前半戦を戦ってきた車両を完全に整備し直し、後半戦への備えを整えました。

【ステージ7】
休息日を経てラリーは2週目、後半戦に入りました。後半戦初日のステージ7は、リヤドからアルダワディミへと西へ向かうルートで、483kmの競技区間は岩場や砂丘を越えていく、クルー曰く「非常にトリッキーでタフ」なコースでした。しかし、TGRのモラエス/モンレオン組はこのステージでも好調さを見せ、トップから僅か7分06秒遅れの2位でステージを終えました。
モラエス/モンレオン組は、ステージ終盤スローパンクチャーに見舞われたことで優勝こそ逃したものの、それ以外はノートラブルで走り切りました。タイヤを交換することなく走り続けたことで、フィニッシュ付近ではタイヤがリムから外れていましたが、なんとかゴール。この好走により、モラエス/モンレオン組は総合順位で首位と1時間0分35秒差の3位へと浮上しました。
キンテロ/センツ組はステージ序盤の難しいナビゲーションでタイムをロスし、終盤にはオルタネータのトラブルにも見舞われましたが、首位と17分16秒差の9位でフィニッシュ。総合では上位争いからは脱落したものの、41位まで順位を上げました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組は、ステージの大半をチームメイトのキンテロ/センツ組と共に走行。このため、同じようにナビゲーションで苦戦するも、キンテロ/センツ組から8分ほど遅れての11位でフィニッシュ。総合順位では首位から1時間40分07秒遅れの5位と好位置につけています。
ダカール初挑戦のボッテリルは、経験豊かなコ・ドライバー、カミングスの助けもあって目覚ましい走りを見せ、前半戦を終えた時点で総合トップ10をキープ。このステージ7では幾つかのマイナートラブルに見舞われて苦戦。しかし、車両電気系統への対応を上手くこなし、この日は首位から32分16秒遅れの16位でフィニッシュ。総合9位は変わらず、8位車両との差も僅差であり、さらに上位を目指します。
ヴァリアワ/カザレ組はステージ7でリアディファレンシャルギアのトラブルに見舞われました。一旦停止しオイルを追加しましたが、その後パンクに見舞われ、また、エンジン出力低下にも苦しめられました。なんとか首位から1時間20分5秒遅れでステージをフィニッシュしたものの、総合順位では21位に後退。それでもこの若きドライバーは将来への経験のためにラリーを戦い、来たるステージを楽しみにしています。

ラリーは北上しながら西へ向かい、スタート地点のアルウラへと戻った後、西海岸のヤンブー付近でループの2ステージを経て、1月19日(金)長い戦いのゴールを迎えます。

ダカールラリー2024 ステージ7 終了時点の総合結果:

総合順位 ドライバー/コ・ドライバー(チーム) 首位との差
3位#206 ルーカス・モラエス/アルマンド・モンレオン
(TOYOTA GAZOO Racing)
1時間00分35秒差
5位#209 ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ
(TOYOTA GAZOO Racing)
1時間40分07秒差
9位#243 ガイ・ボッテリル/ブレット・カミングス
(TOYOTA GAZOO Racing)
2時間11分16秒差
21位#226 サオード・ヴァリアワ/フランソワ・カザレ
(TOYOTA GAZOO Racing)
5時間30分40秒差
41位#216 セス・キンテロ/デニス・センツ
(TOYOTA GAZOO Racing)
41時間03分18秒差

ステージ7終了時のコメント:
シャミア・ヴァリアワ(SVR:シャミア・ヴァリアワ・レーシング代表):
非常にエキサイティングな一日だったと思います。ルーカスは素晴らしい走りで、総合順位をひとつ上げました。スローパンクチャーに見舞われたのは残念ですが、それも想定の範囲内です。彼には残りのラリーも冷静に走り続けて欲しいと思います。私としては、まだ終わっていない、と言い続けるだけです。ラリーはまだ5日間あり、やるべきことに集中します。好結果を期待しましょう。

アラン・デュハディン(TGR W2RCチーム代表):
ステージ7でも、我がチームは貴重なW2RCポイントを獲得することができました。ここダカールラリー2024でポイントを獲得し続けてくれるルーカスとセスに感謝しています。彼らは全力で戦い続けており、今日も多くのポイントを獲得してくれました。同時に、ルーカスとアルマンドは総合順位で表彰台圏内の3位に浮上しました。また、総合トップ10にトヨタ・ハイラックスが6台も入っている(プライベーター含む)のを見るのは嬉しいですし、そのタフさと信頼性が証明されていると思います。今日のステージでのTGR勢の活躍は、休息日に素晴らしい働きでクルマを整備し直してくれた技術スタッフやメカニックのおかげでもあり、彼らにも感謝します。

ルーカス・モラエス(No.206):
ステージ序盤から(カルロス)サインツ(TEAM AUDI SPORT)と(セバスチャン)ローブ(BAHRAIN RAID XTREME)と共に好ペースで走ることができ、素晴らしい一日でした。スタート直後は非常にトリッキーなコースでしたが、アルマンドが素晴らしいナビゲーションをしてくれました。そのおかげでサインツと同じペースで走れたのは大きかったです。終盤、恐らく残り40kmほどのところでスローパンクチャーに見舞われてしまいましたが、空気はゆっくり抜けていたので、そのまま走り続けることを決断しました。しかし、残り5kmほどのところでついにタイヤがリムから外れ、ペースを落としてフィニッシュせざるを得ませんでしたが、我々は今日の走りで総合3位に浮上することができました。これまでも表彰台を目指して戦ってきましたが、まだ残りは長いです。チームが用意してくれた素晴らしいクルマに満足しています。

セス・キンテロ(No.216):
今日は本当に楽しい一日でした。序盤は燃料を節約しようと思ったのもあって、ややペースが遅かったですが、一日を通して上位を走れたと思います。その後、オルタネータに若干のトラブルが出て、パワーが落ちてタイムを失いました。ウェイポイントでも行き過ぎて少し戻ったりもしましたが、それ以外は素晴らしい一日でしたし、チームが全て直してくれました。あと5日間、まだまだ楽しめるでしょう。

ジニエル・ド・ヴィリエール(No.209):
長く、ナビゲーションが非常に難しい一日でした。上位勢がどんな走りをしたのかわかりませんが、彼らは信じられないほど速かったです。我々はやや苦戦し、今日ずっと一緒に走っていたセスと共に、何度もコースを見失いました。正しいコースを見つけるのに、同じ場所で10分以上タイムをロスしたと思います。序盤もコースがトリッキーで、コースを見失うなど、ナビゲーションに苦しんでタイムを失ったステージでした。少なくともまだ我々はラリーを続けており、明日も戦い続けるだけです。

ガイ・ボッテリル(No.243):
難しいステージでした。前半はとても順調でしたが、折り返しを過ぎた直後にホイールが緩み、また、電圧が低下するトラブルにも見舞われて警告灯が点灯しました。クルマを停めてバッテリを交換し、修復できたと思ったのですが、その直後にクルマの温度が上がり、油圧や冷却水の圧力が下がってしまいました。そのため、以降は慎重な走りが求められましたが、不運にも暑い砂丘に入るところで、冷えた状態に保つのは困難でした。そんなこともあり、最後までベストな走りができたとは言えない一日でした。一方で、中盤のパフォーマンスには満足しています。良い日があれば悪い日もあります。今日は我々の日ではなかったと言うことです。まだ我々はラリーを走っていますし、明日も戦えます。

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