オーストラリア・ラリー選手権 第4戦ギップスランドラリー ラリー直前の苦境を日豪チームの協力で乗り越え
大竹直生がクラス3位、総合7位で完走

2024.08.13(火曜日)配信

8月9日(金)〜11日(日)にかけて、オーストラリアのビクトリア州を拠点に、オーストラリア・ラリー選手権(ARC)第4戦ギップスランドラリーが開催され、大竹直生/竹藪英樹組(トヨタGRヤリス)がクラス3位、総合7位で完走を果たしました。

季節は冬。SSの路肩には雪が残るコースを果敢に攻める大竹選手/竹薮選手
季節は冬。SSの路肩には雪が残るコースを果敢に攻める大竹選手/竹薮選手

「人材育成」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の実践を目的に、全日本ラリー選手権に参戦するTOYOTA GAZOO Racing(TGR)。2024年シーズンは、全日本ラリー選手権のJN-1クラスと、JN-2クラス内で行われているMORIZO Challenge Cupに参戦しています。

2024年、TGRの全日本ラリー選手権チーム(TGR-WRJ)は、各地域のラリーを現地現物で学び、交流を深め、国内ラリーの更なる盛り上げにつなげるため、TOYOTA GAZOO Racing Australia(TGRA)とNeal Bates Motorsport(NBM)と相互交流を行います。

TGRAとNBMの協力を得て、TGR-WRJから3名のメカニックを派遣し、大竹選手と竹藪選手がトヨタGRヤリスで、ARC第4戦ギップスランドラリーへの参戦を実現しました。また、TGRAのハリー・ベイツ選手とコーラル・テイラー選手のコンビが、9月5日〜8日に北海道・帯広で開催される、全日本ラリー選手権第7戦ラリー北海道への参戦を予定しています。

ギップスランドラリーで大竹選手がドライブするのは、日本から持ち込まれたJP4仕様のトヨタGRヤリス。国内で約150kmのテスト走行を実施し、セッティングの調整を行いました。ところが、オーストラリアで行われた現地テストにおいて、大竹選手がコースアウトした際、クルマに大きなダメージを負いました。TGRAとNBMの協力を得て、日本人メカニックがエンジン交換を含めた作業を行い、無事スタートまでに修理を終えています。

ギップスランドラリーのスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間であり、タイムが計測されるコース)は、硬い地盤の上に細かい砂が乗った高速コーナーから、川渡りを含む曲がりくねった路面など、バリエーションに富んだグラベル(未舗装)路が特徴となります。レッキ(コース試走)を終えた大竹選手は「ハリー・ベイツ選手をはじめ、オーストラリアのスタッフの皆さんともコミュニケーションを取ることができました。まずはしっかりと全SSを走り切りたいです」と、目標を語りました。

ラリー初日、大竹選手は慎重にスタート。SSを走るごとにペースを上げ、SS6ではクラス3番手タイムをマークし、クラス3番手に順位を上げました。更にSS7ではクラス2番手までタイムをあげ、ラリー初日をクラス3番手、総合9番手で走り切っています。「一部の路面は雪解け水で濡れているなど、コンディションの変化はありましたが、クルマを完璧に直していただき、良いペースで走ることができました。竹藪選手とのコンビネーションも深まり、ラリーが終わってほしくないと思えるほど楽しく走れました」と、大竹選手は振り返りました。

ラリー最終日、大竹選手はコンスタントにクラス2番手タイムをマークし、SS11では上位クラスのリタイアもあり、総合8番手に順位を上げました。サービスを挟んだ午後のセクションも危なげなく走り切り、プロダクションカップクラス3位、総合7位で完走を果たしました。

豊岡悟志(TGR-WRJチーム監督)
大竹選手は素晴らしい走りを見せてくれました。今回TGR-WRJは、TGRの世界中の様々な道で人とクルマを鍛えるという基本理念のもと、ARC参戦で活動地域を広げ、更なるチャレンジを行いました。オーストラリア到着後のテストでアクシデントがおこり、スタートまでにクルマを修理する必要が生じました。ここでNBMのメカニックと深いコミュニケーションを取れたことが、本当に大きな学びになりました。例えば、彼らは判断力や行動力が高く、無駄なことをしていません。自分たちが固定観念に囚われているとも感じました。私の立場としても考えさせられることがたくさんあり、良い経験となりました。ドライバーの大竹選手やチームメンバーも、とても良い経験になったはずです。ラリー北海道にはハリー・ベイツ選手が参戦するので、今回の恩返しではありませんが、しっかりお迎えしたいと思っています。

大竹直生(ドライバー)
クラス3位を得られたのは、チームとしても最高の結果になったと思っています。テストでコースアウトしてしまいましたが、スタートまでにしっかりと修理していただきました。まずはチームの皆さん、そして協力して頂いたオーストラリアの皆さんに、心から感謝したいです。最終日のSSは路面が荒れており、川渡りもあるなど、速く走るだけでなく、いかにクルマを労わるかも考えました。ラリーを通してクルマとの一体感を得られましたし、本当に学びの多いラリーになりました。

丸田智(チーフメカニック)
今回のオーストラリア遠征は、メンバーにどのような役割をもたせ、どのような経験をつませたいかという、人選検討から始まりました。そして、オーストラリア現地から情報をいただいて、できる限りの準備を行なって挑みました。現地でのサービスに関しては、NBMのサポートのもと、豊岡監督も含めた日本から遠征した4人で行っています。印象的だったのは、NBMのチーム力と高い判断力です。修理時のサポートも含めて、彼らの協力があったからこそ、完走できたと考えています。彼らから得た学びは、日本に戻ってチームメンバーと共有していきたいです。

田中直樹(メカニック)
オーストラリアは日本車が多く、会場の雰囲気、チームとお客さんの関係など、とてもフレンドリーで盛り上がっていることが印象的でした。これまで経験の少ない補器類や吸排気系の装着などに不安がありましたが、それでもオーストラリアの皆さんからのサポートもあり、スタートに間に合わせることができました。私たち日本人は恥ずかしがってしまうことが多いのですが、オーストラリアでは壁をつくらずに助け合っていたことが印象に残っています。私自身も自分から人を助けられるようになりたいと感じました。

古市准也(メカニック)
日本では車両リーダーとして活動しています。広大な土地を舞台に、ゆったりとした時間が流れるなか、観客だけでなくチームやクルーもリラックスしてラリーを楽しんでいるように感じました。サービスではNBMのメカニックの皆さんの能力の高さに驚きました。時間内に作業を終わらせるために、各作業に向けた準備、そして素早い判断など、自分たちに足りないところがたくさん見つかりました。今回、エンジンの載せ替えという大きな作業がありましたが、これまで未経験の工程も多く、とても良い経験になりました。この経験を活かして、車両リーダーとして、良い雰囲気のチーム作りを行なっていきたいと思っています。

NBMを率いるニール・ベイツとドライバーであるベイツ兄弟の協力で遠征が実現
NBMを率いるニール・ベイツと
ドライバーであるベイツ兄弟の協力で遠征が実現
TGR-WRJとNBMのメカニックが協力し大竹号の修復作業にあたった
TGR-WRJとNBMのメカニックが協力し
大竹号の修復作業にあたった

TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGRヤリスで全日本ラリー選手権に参戦し、将来の車両開発に活かします。