モータースポーツという極限の状況で新しい技術や方法を追求し、
自らを革新しつづける。
2018年、全日本ラリー選手権においてTOYOTA GAZOO Racingはまたひとつ新たなる挑戦を開始しました。
それは Vitz GRMNをベース車両としたTGR Vitz GRMN Rallyでの参戦。
モータースポーツという極限の状況で 新しい技術や方法を追求し、自らを革新しつづける。
革新に生まれたVitz GRMNは全日本ラリー選手権のステージでさらなる革新の追求を続けます。
Background
- トヨタ自動車 GR開発統括部 佐々木 良典
「ターボ(Vitz GRMN Turbo 2013 年発売) のあとなので、もう少しパワーのあるエンジンが欲しい。
検討の結果、スーパーチャージャーを搭載することになりました。スーパーチャージャーの良さはなんといってもレスポンス。
そして、ボディ剛性の面から3 ドアのほうが開口面積が小さいので、走りには良い。と同時に大きかったのは3ドアのスタイル。
見たときに、スポーツカーとしてはこれだと思いました」
「2016年にTGR Vitz GRMN turboで参戦していた際、特に冷却でチームが苦労している様子を見てきました。たとえターボやスーパーチャージャーを装備していても、想定以上に温度が上がってしまうと、最適な効果を発揮できません。その点を市販車の段階でしっかりと対策し、高い戦闘力を持っているのがVitz GRMNです。これまでも『モータースポーツから市販車へのフィードバック』を掲げて開発されたクルマはありましたが、これほど実戦とリンクしたものはなかったと思います。
今後は、今年の参戦で得た学びや改善点を、次の世代の市販車にフィードバックすることができると思いますし、しなければならないと思っています。そして我々が目指している方向が正しいのか、それを確かめる場が、全日本ラリー選手権だと思います」
Vitz GRMNから TGR Vitz GRMN Rallyへ
Mechanic
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TOYOTA GAZOO Racing
チーフメカニック 宮本 昌司
「Vitz GRMNをベースにラリー仕様を開発するにあたり、実はそれほど大きな変更は施していません。このラリー車はこれまでにTGR Vitz GRMN TurboやTGR Vitz CVTで蓄積した様々な経験・知見のうえにあり、今回はスピード域が上がることを想定してラリーに耐えうる補強を入れた程度です。また、ベース車自体が冷却性能はじめラリーに適した仕様になっているので大きな変更は必要ありませんでした。
我々にとって重要なのはあくまでも市販車とのリンクであり、メカニックとしても、次の市販車に向けたクルマ作りを常に意識するようにしています。どのような環境下でもしっかり走り切り、課題を持ち帰える事が一番重要なんです。また、この活動は“ラリー専門のメカニックを育成するためのプログラム”ではありません。異なる分野から集まったスタッフが、ラリーチームという小さな所帯で、自分の専門外の事柄にも触れる貴重な機会なのです。それぞれが主体的に課題を見つけ、試行錯誤を繰り返すことで、他では決して得られない知見や経験を蓄えることができています」
TGR Vitz GRMN RallyJapanese Rally Championship JN5
Spec
- TGR Vitz GRMN Rally
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- ドライバー 眞貝 知志 / コ・ドライバー 安藤 裕一
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- ベース車両
- Vitz GRMN
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- エンジン
- スーパーチャージャー付1.8リッター直列4気筒エンジン
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- 最高出力
- 156kW(212PS) / 6,800r.p.m.
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- 最大トルク
- 250N・m(25.5kgf・m) / 4,800 r.p.m
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- トランス
ミッション - 6速マニュアル・トランスミッション
- トランス
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- クラス
- 全日本ラリー選手権2018 JN5
Practice
- TOYOTA GAZOO Racing ドライバー 眞貝 知志
「市販車のVitz GRMNをドライブする前は、ジャジャ馬的に尖ったクルマというイメージを持っていたのですが、実際に乗ってみると、まったく逆の印象でした。ターボラグもありませんし、広い回転域で力があり、とても気持ち良くドライブできます。乗り味も、足まわりをガチガチに固めた神経質な特性ではなく、高級感があり洗練されたクルマです。『これだけ乗りやすいのに、タイムを見ると速い』という絶妙なバランスに仕上がっています。
TGR Vitz GRMN Rallyは、市販車と基本的にほぼ同じです。ラリーカーになっても、ベース車両が持っている印象は変わりません。ポテンシャルが非常に高いので、ねじ伏せるのではなく、素直なドライビングが求められます。これは私の意見ですが、ラリーカーは一点豪華主義では勝てません。どんな路面でも、どんなコンディションでも、クルマとドライバーが一体化して、信頼できる関係が求められます。まだ、実戦では持てるポテンシャルをすべて引き出せていないので、早くその実力を結果としてお見せできるようにしたいですね」
- TOYOTA GAZOO Racing 監督 豊岡 悟志
「参戦初年度は、様々なプロに教えてもらいながら車両を製作しましたが、TGR Vitz GRMN Rallyはすべての開発作業を自分たちで行ないました。これまで蓄積してきた様々な経験によって、チームのできることが拡大したと断言できます。ベースとなったVitz GRMNは、社内の様々なセクションを巻き込んで作ったクルマ。GRブランドの誕生も含めて、我々の活動が起爆剤になって様々な波及効果があったと実感しています。『クルマの楽しさ』を多くの人々に訴えていくためにも、この流れを絶やさずに続けていきたいですね。
また、もうひとつの柱である『人づくり』に関しても、今年から新たな取り組みがスタートしています。様々な開発部門から、毎戦ひとりずつ若いスタッフをラリーに派遣しています。実際にラリー現場を経験することで、所属する部署に『率直な感想』を持ち帰ってもらっています。必ず今後のクルマ作りに活かされるはずです。この活動はその種まきとしても捉えています」
TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために
「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてTGR Vitz GRMN Rallyを投入し、
将来のさまざまなGRスポーツ車両の開発に活かしていきます。