WEC ~FIA 世界耐久選手権~ の概要
6~24時間の過酷な耐久レースによる世界選手権
2023シーズンはル・マン、富士など全7戦で争う
FIA世界耐久選手権(FIA World Endurance Championship:WEC)は、耐久レースの世界選手権で、国際自動車連盟(FIA)とル・マン24時間の開催で知られるフランス西部自動車クラブ(ACO)が運営しています。レースはプロトタイプカーとGTカーが混走する形式で争われています。レギュレーションで各決勝レースの長さは6時間以上と規定され、今シーズン最長は第4戦ル・マンの24時間レースです。
現行WECがスタートしたのは2012年ですが、耐久レース世界選手権の歴史は長く、初開催は1953年まで遡ります。この年はセブリング12時間、ミッレミリア、スパ・フランコルシャン24時間、そしてル・マン24時間など全7戦が行われました。日本でも1982年から1988年まで富士スピードウェイで、1989年から1992年までは鈴鹿サーキットで開催されており、1991年にはオートポリスでも行われ、2012年からは富士で毎年開催されてきました。2020、2021年は新型コロナウイルス禍で中止となりましたが、2022年には3年ぶりに富士で再開。TOYOTA GAZOO Racingの1-2フィニッシュに沸きました。
そして今年、TOYOTA GAZOO Racingが参戦するハイパーカークラスには世界有数の自動車メーカーが多数エントリーしており、WECは新たな時代に入りました。
選手権とタイトル
2023年のWECは、「ハイパーカー」と「LMP2」、そして「LMGTE Am」の3クラスで争われます。TOYOTA GAZOO Racingが参加するハイパーカークラスには3タイトル、LMP2およびLMGTE Amクラスにはそれぞれ2つのトロフィーが設定されており、選手権ポイントはレースの長さによって異なります。FIA ハイパーカー世界耐久選手権に出場するマニュファクチャラー(メーカー)は、最大2台の車両をエントリーすることができます。2台を超えてエントリーする場合は、FIAワールドカップ・ハイパーカーチーム部門にエントリーしなければならないと競技規則に規定されています。
ハイパーカークラスのタイトルは以下の通りです。
FIAハイパーカー世界耐久ドライバー選手権
FIAハイパーカー世界耐久マニュファクチャラー選手権
FIAワールドカップ・ハイパーカーチーム部門
ドライバー
各クラスともドライバーは車両1台につき最大3名まで認められます。「FIAドライバー分類規定」により、戦績に従って「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」の4つに分類され、可能となる組み合わせが参加クラスごとに決められています。
予選
2023年のWEC競技規則の特徴のひとつが予選方法の変更です。これまではプロトタイプ(ハイパーカーとLMP2)とGTカー(LMGTE ProとLMGTE Am)の2セッション各10分間で行われていたものが、クラスごとに各15分間の3セッションを設ける形式となりました。
タイヤ
ハイパーカークラスとLMP2クラスは供給メーカーが指定されているワンメイク制で、それぞれミシュランとグッドイヤーが全車両に独占供給します。2023年は、タイヤウォーマーなど、タイヤの加熱がいかなる形式のものも一切禁止されることになりました。
各レースで利用可能なタイヤのスペック数は以下の通りです。
ドライタイヤのスペック数 | ウエットタイヤのスペック数 | |||
---|---|---|---|---|
ル・マン24時間 | その他のレース | シーズン全体 | ||
ハイパーカー | 3 | 2 | 3 | 1 |
LMP2 | 1 | 1 | 1 | 1 |
LMGTE Am | 3 | 2 | 2 | 2 |
各レースで使用できるタイヤ本数は以下の通り(ル・マン24時間のみ別表)です。雨天用タイヤに使用本数の制限はありません。
フリープラクティス | 予選 + 決勝 | ||
---|---|---|---|
6時間レース | 8時間レース | ||
ハイパーカー | 12 | 18 | 26 |
LMP2 | 12 | 18 | 26 |
LMGTE Am | 16 | 26 | 34 |
ル・マン24時間のタイヤ本数
フリープラクティス+予選 | ハイパーポール | 決勝 | |
---|---|---|---|
ハイパーカー | 24 | 8 | 56 |
LMP2 | 24 | 8 | 56 |
LMGTE Am | 28 | 8 | 60 |
クラスと参加車両
「ハイパーカー」「LMP2」「LMGTE Am」の全3クラスで構成され、最上級クラスが「ハイパーカー」で、TOYOTA GR010 HYBRIDが争うのもこのクラスです。「LMH」車両に加え、2023年からLMDh」規定の車両も参加可能となりました。一方、これまで性能調整の上、参加が認められていた非ハイブリッドの「LMP1」規定の車両は認められなくなりました。プライベーターのためのプロトタイプカーのクラスが「LMP2」クラスです。GTカーは「LMGTE Pro」クラスが2022年をもって廃止され、今シーズンは「LMGTE Am」の1クラスのみとなりました。
WEC最上級クラス。「LMH」車両と「LMDh」車両が参加できます。ドライバー編成は自由ですが、ブロンズドライバーは参加できません。ゼッケンベースはレッド。タイヤはミシュランのワンメイク。性能調整(BoP)が導入されます。
Le Mans Hypercar (LMH)
FIAとACOによるLMH技術規則に適合する車両で、「ハイパーカー」風の外観で自動車メーカーのイメージをアピールできるプロトタイプカー、および実際に公道走行可能なハイパーカーのレース仕様車と規定されています。ル・マン24時間決勝時の平均ラップタイムを3分30秒と想定。クローズドボディを備え、全長5,000mm以下、全幅2,000mm以下、全高は基準面より1,150mm以上で、最低車重は1030kg。排気量、気筒数等は自由で、ハイブリッドシステムの搭載も認められています。
Le Mans Daytona h(LMDh)
2023年からハイバーパークラスへの参加が可能となったのがLMDh車両です。世界有数の自動車メーカーが数多く参入しています。もともと米国IMSAのデイトナプロト(DPi)に代わる車両規定として考案されたもので、WECのほか、もちろんIMSAシリーズへの参戦も可能です。オレカ、ダラーラ、リジェ、マルチマテックという4社が製作する次世代LMP2シャシーがベースで、これに標準ハイブリッドシステム(ボッシュ製モーターユニット、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング製バッテリー、Xトラック社製ギアボックス)の搭載が義務付けられて低コスト化が図られていますが、ハイパーカーよりも設計、製作の自由度が低いと言えます。
Le Mans Prototype 2(LMP2)
シャシーコンストラクター、エンジンサプライヤーから独立したプライべーター限定のプロトタイプカテゴリーです。バジェットキャップ制が導入されており、ダラーラ他の指定コンストラクター4社が製造するシャシーは価格の上限が定められています。エンジンはギブソン・テクノロジーが供給する4.2リッターV8 NAのワンメイク。クローズドボディを備え、全長4,750mm以下、全幅1,800mm以上1,900mm以下、全高1,050mm以上。最低車重は930kg。燃料タンク最大容量は75リッター。ゼッケンベースはブルー。ドライバー編成にはシルバーまたはブロンズドライバー1名を含めることが義務付けられています。
Le Mans Grand Touring Endurance Am(LM GTE Am)
LMGTE車両はLMGTEカテゴリーでFIA/ACOの公認を受けていなければならないとされ、4輪駆動、4輪操舵は禁止、トラクションコントロールの装備は可能です。最低重量、燃料タンク容量、リアウイングの高さ、エアリストリクター、ターボブースト圧等は、最低値等の数値は示されておらず、耐久コミッティによるBoPの適用を受けると規定されています。
LMGTE Amはアマチュアを対象としたカテゴリーで、車両は1シーズン前の仕様の車両か、前シーズン車両の仕様に完全に準拠した車両と定められています。ゼッケンベースはオレンジ。ドライバー編成にはブロンズドライバー最低1名と、ブロンズかシルバーのドライバー1名を含めることが必要となっています。また、LMGTE Amクラスに限り、選手権にエントリーする車両にはル・マン24時間を除き、サクセスバラスト(ウエイト)が適用されます。
RACE
-
アメリカ
第1戦
セブリング1000マイルレース -
ポルトガル
第2戦
ポルティマオ6時間レース -
ベルギー
第3戦
スパ・フランコルシャン6時間レース -
フランス
第4戦
ル・マン24時間レース -
イタリア
第5戦
モンツァ6時間レース -
日本
第6戦
富士6時間レース -
バーレーン
第7戦
バーレーン8時間レース