5月11日(土)、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットでFIA世界耐久選手権(WEC)第3戦スパ・フランコルシャン6時間の決勝レースが行われました。2度の大きなアクシデントと、長い赤旗中断により通算8時間にわたる大乱戦となる中、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)2台のGR010 HYBRIDは、共にペナルティを科され大きく順位を下げながらも追い上げ、8号車が6位、7号車が7位でフィニッシュし、チャンピオン争いにおいて貴重なポイント獲得を果たしました。
ル・マン24時間レースの前哨戦となった今大会、チームは他車との接触やペナルティ、そしてパフォーマンス不足と戦いながらも、TGRの2台はWECのチャンピオン防衛のために重要なポイントを獲得しました。
ディフェンディングチャンピオンのセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のGR010 HYBRID 8号車が6位、前戦イモラウィナーの小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリースのGR010 HYBRID 7号車は7位フィニッシュとなりました。
この結果、TGRのスパにおける連勝記録は7で途絶えることとなりましたが、2台揃っての入賞、そのポイント獲得によって、TGRはマニュファクチャラーズ選手権で首位のポルシェに23ポイント差の2位でル・マン24時間へと臨むことになります。
好天で暖かな気候となったこの日、記録的な88,100人の観客が見守る中、現地時間午後1時に19台のハイパーカーによる戦いの幕が切られ、その後の乱戦を予感させるような、1周目から激しいポジション争いが繰り広げられました。
6番手スタートの8号車ブエミは、1コーナーで他車と接触し9位へと後退。また、8号車はフォーメーションラップ中の使用エネルギー量の上限を超過したとして5秒ストップのペナルティを科されてしまい、最後尾へとポジションダウン。コンウェイの7号車は14番手スタートから1周目に12位へと順位を上げると、トップ10入りを狙ったバトルを繰り広げました。
2台共に最初のピットストップは給油のみとし、ライバル勢よりピット作業を短くしたことで8位に上がった7号車のコンウェイでしたが、新品タイヤに交換したライバル勢からの追い上げを受け、10位に後退。その後、1時間半を経過したところで、セーフティカーが出されたタイミングを活かし2台共にピットへ向かい新品タイヤへと交換しました。
長いセーフティカー走行の後、デ・フリースに交代した7号車は9位、平川へと交代した8号車は11位を走行。上位勢との差を縮めていきましたが、7号車はバーチャルセーフティカーの時の速度違反によりドライブスルーペナルティを科され、7号車は15位へと順位を落とすこととなってしまいました。
レース後半に入ると、デ・フリースと平川が猛烈な追い上げを見せ、4時間が経過する頃には4台による7位争いを展開。デ・フリースが平川をパスした直後、コース上の別の場所で大きなクラッシュが発生し、このアクシデントにより破損したコース脇のバリア修復のために、レースは2時間近くにわたって赤旗中断となりました。
レースは残り1時間44分で再開され、数周のセーフティカー走行の後、グリーンになったと同時に各車ピットへ。7号車は小林、8号車はハートレーへとドライバー交代を行いました。この直後、7号車は一時3位を走行するも、ペースで勝るフェラーリ50号車にかわされ4位へと後退しましたが、表彰台を目指しプレッシャーをかけ続けました。8号車のハートレーは6位争いを展開。
レース最後の30分、7号車の小林はさらにフェラーリ51号車とポルシェ99号車にも先行を許し、また、周回遅れのGT3車両との接触で5秒加算のペナルティも科されることに。最後は7号車が8号車の2秒ほど前でチェッカーを受けましたが、このペナルティにより、最終結果は8号車が6位、7号車が7位となりました。
スパでのレースを終え、チームはすぐにWECシーズンのハイライトであるル・マン24時間レースへ集中していきます。2024年シーズン仕様のGR010 HYBRIDは6月9日(日)の公式テストデーで初めてサルト・サーキットの走行に臨みます。ル・マン24時間の決勝は6月15日(土)から16日(日)にかけて行われます。
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
難しいレースでした。パフォーマンスを考えれば、6位と7位というのはできる限り最良の結果だったと思います。ル・マンの前哨戦であり、我々にとってホームレースの一つでもあるので、上位を争って良い結果を残せなかったのは残念です。我々にとっては厳しいレースとなってしまいましたが、この結果を受け入れ改善を進め、ル・マンではもっと強くなって戻ってこなくてはなりません。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
ペナルティもあり、我々にとってはやや厳しいレースとなってしまいました。ポイントが獲得できたことは良かったですが、最後、フェラーリとポルシェが我々よりも速いことは明らかでした。タイヤで苦しみ、彼らのペースにはついていけませんでした。コースの路面状況が改善されていくのにつれて、我々のペースも良くなっては行きましたが、それでもまだ全然足りませんでした。ル・マンへ向けてプッシュを続けて行きます。
ニック・デ・フリース(7号車 ドライバー):
この週末、我々は全体的に競争力が足りませんでした。今日の結果は、この難しいレースで我々がチームとして達成できる最大限だったと思います。全てを考慮しても、これ以上のことはできなかったでしょう。もちろん、このような状況には満足していませんが、それが現実であり、できることはしました。次戦ル・マンではもっと競争力を発揮できることを期待しています。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
今日もまた波乱のレースでした。スタートは上手く行かず、激しいプッシュを受けることになりました。レースが始まる前からペナルティを受けることになったのは残念です。あれで最下位に落ちてしまい、その後は懸命に挽回を図りました。結果は理想的なものではありませんが、受け入れるしかありません。少なくとも2台揃って完走し、ポイントを獲得できたことは良かったですが、もう少しいい結果を望んでいました。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
色んなことが起きたレースでしたが、我々がライバルに比べペース面で足りなかったことは確かです。不運にもペナルティを科されたことで大きく順位を落とすことになりましたが、そこから挽回したという意味では最大限の結果だったと思います。6位というのは今日の我々のペースを反映した妥当な結果でしょう。
平川亮(8号車 ドライバー):
とても長いレースで、我々にとっては厳しいものでした。現時点で我々は最速ではなく、ポルシェとフェラーリは明らかに我々よりも速かったので、ル・マンまでにやるべきことはたくさんあります。改善を続けなくてはなりません。ドライバーとして全力を尽くしましたが、表彰台に上れなかったのは残念です。ル・マンでは表彰台の中央に返り咲けることを願っていますし、そのためにもハードワークを続けます。
WEC第3戦 スパ6時間 決勝結果
順位 | No. | ドライバー名 | チーム/車種 | 周回 | トップとの差 |
1 | 12 | ウィル・スティーブンス カラム・アイロット | ハーツ・チームJOTA/ ポルシェ 963 | 141 | |
2 | 6 | ケビン・エストレ アンドレ・ロッテラー ローレンス・バンスール | ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ/ ポルシェ 963 | 141 | 12.363 |
3 | 50 | アントニオ・フオコ ミゲル・モリーナ ニクラス・ニールセン | フェラーリAFコルセ/ フェラーリ 499P | 141 | 1:14.020 |
4 | 51 | アレッサンドロ・ピエール・グイディ ジェームス・カラド アントニオ・ジョビナッツィ | フェラーリAFコルセ/ フェラーリ 499P | 141 | 1:17.710 |
5 | 99 | ニール・ジャニ ジュリアン・アンドラウアー | プロトン・コンペティション/ ポルシェ 963 | 141 | 1:26.326 |
6 | 8 | セバスチャン・ブエミ ブレンドン・ハートレー 平川亮 | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 141 | 1:34.955 |
7 | 7 | マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ニック・デ・フリース | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 141 | 1:38.331 |