9月1日(日)、米国サーキット・オブ・ジ・アメリカズで2024年シーズンFIA世界耐久選手権(WEC)第6戦ローンスター・ル・マンが行われ、9番手グリッドからスタートしたTOYOTA GAZOO Racing(TGR)のGR010 HYBRID 7号車が見事な追い上げを見せ、一時は首位を走行するも、終盤のペナルティで惜しくも勝利を逃し、それでも2位表彰台を獲得しました。GR010 HYBRID 8号車は、接触やペナルティに苦しみ15位でチェッカーを受けました。
チームは厳しい結果となった予選の後、GR010 HYBRIDのパフォーマンスを全て引き出し、優れたタイヤ戦略と素早いピットストップ、ドライバーの死力を尽くした走りでチーム一丸となって、勝利へ向け戦いました。
小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリースのGR010 HYBRID 7号車は、9番手グリッドスタートから完璧な走りでポジションを上げていき、勝利を目前にしていましたが、終盤、イエローフラッグに適切な対応をしなかったという判定により、ドライブスルーペナルティが科せられ、2位でチェッカーを受けました。
世界チャンピオンであるセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のGR010 HYBRID 8号車は、12番手スタートから素晴らしいパフォーマンスを見せて徐々に順位を上げ、トップ6フィニッシュを目指し戦いましたが、レース4時間経過後にアクシデントに見舞われ、15位でレースを終えました。
TGRにとっては惜しくも勝利を逃す悔しい結果となりましたが、それでも2位フィニッシュで大きなポイントを獲得し、マニュファクチャラーズ選手権ではポルシェを逆転し、11ポイント差の首位で約2週間後のホームコースで行われる富士6時間レースに凱旋することとなりました。
チームは、レースウィーク序盤で速さを見せていたライバル勢に、決勝では攻めの戦略で真っ向から挑むというアプローチを採り、これらの戦略が功を奏し、首位争いに加わりました。
9番手からスタートを切った7号車のコンウェイは、オープニングラップでの混乱を切り抜け、8周目には一気に2台をパスする素晴らしいオーバーテイクを見せ、6位へと順位を上げました。一方、12番手スタートの8号車はハートレーがスタートを担当。
コンウェイは素晴らしいペースで最初のスティントを走り抜け、1時間が経過した時点で3位と数秒差の6位と、表彰台を狙える位置につけて最初のピットへと向かいました。最初のピットストップで7号車はデ・フリースへ、8号車はハートレーからブエミへとドライバーを交代し、2台共に更なるポジションアップを目指し猛追を続けました。
過酷な暑さの中、ハイパーカーのライバルの何台かが脱落していき、7号車はデ・フリースの素晴らしい走りで2位へと浮上、2時間が経過したところでコンウェイへと交代。平川へと代わった8号車も8位へと順位を上げました。レースが折り返しを迎える頃には、コンウェイはさらにペースを上げ、首位を行くフェラーリ83号車に迫りました。
レースが折り返しを過ぎ、ドライバーはそれぞれデ・フリースとハートレーが再びコクピットへ。7号車のデ・フリースは首位の83号車のすぐ後方まで追いつき、プレッシャーをかけ続けました。8号車のハートレーも、ランキングを争うポルシェ6号車を攻め、6位の座を奪取しました。
攻めの戦略を採った7号車は、4時間を迎える前にやや早めにピットイン。小林へとドライバーを交代し、先行車がいないクリーンな状況で一気に首位奪還を狙いました。この戦略が功を奏し、83号車がピットを終えコースへ復帰した時、7号車は2秒差で首位に立ちました。
一方、6号車との6位争いを繰り広げていた8号車はブエミへと交代。6位でコースへ復帰した8号車は、アウトラップで6号車と接触し、左リアタイヤをパンク。また、この接触で30秒のストップ・アンド・ゴーのペナルティ、さらにその後、ブルーフラッグ無視によるペナルティも科され、8号車は15位へと大きく順位を落とし上位争いの望みは絶たれてしまいました。
7号車の小林は残り1時間、最後のピットストップを終えた時点でも2位に10秒以上の差をつけて首位を快走していましたが、残り40分のところで、イエローフラッグに適切な対応をしなかったという判定によりドライブスルーペナルティ。
ドライブスルーペナルティを消化したことで、首位と9秒差の2位へのポジションを落としてコースへ復帰した小林は、このタイムロスを挽回すべく猛プッシュを開始。周回毎に差を詰めていき、その鬼気迫る追い上げは、サーキットに集結した6万5千人を超えるレースファンの皆様を興奮のるつぼに巻き込みました。しかし、不運なタイミングで出されたフルコースイエローにも阻まれ、逆転は叶わず、7号車は首位の83号車に僅か1.780秒差の2位でチェッカーを受けることとなりました。
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
チームは懸命に働き、完璧な仕事をしてくれました。我々もドライビング、戦略、そしてピットストップと全ての面でできることはやり尽くしまし、優勝を狙える位置まで上がることが出来ました。しかし、ペナルティは残念で、正直なところとても驚いています。あの状況でペナルティを受けることになるとは考えてもいませんでしたが、これもレースです。レース自体は本当に楽しかったですし、オースティンのこの素晴らしいコースでまたレースを戦えたことは最高でした。次はホームレース富士でこの超接近戦を披露できるのが楽しみです。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
今日は優勝できるチャンスがあるとは思ってもいませんでしたが、レースが進むにつれ、我々のペースに競争力があることが分かり、タイヤの摩耗もどのスティントでも安定していました。最終的に優勝争いに加わり、勝てると思いましたが、残念ながらペナルティでそのチャンスは潰えてしまいました。しかし、可夢偉は最後まで諦めず戦い続けてくれました。エンジニアやピットクルー、チームメイトも含め、チーム全員が素晴らしい仕事をしてくれました。予想外の結果で、選手権争いで大きなポイントも獲得できたので、この勢いでプッシュを続け、富士でも良い結果を目指します。
ニック・デ・フリース(7号車 ドライバー):
レースウィークを通してのチームの素晴らしい仕事ぶり、特に決勝での働きに感謝しています。全てのピットストップや判断が的確で、完璧にレースを進めてくれました。我々全員が素晴らしい仕事をしたと思いますが、残念ながらドライブスルーペナルティで勝利を逃すことになってしまいました。すべてが明らかになったわけではなく、まだ調査は必要だと思いますが、それでもチームと選手権争いにおいて素晴らしい結果です。ほぼ手中にしていた勝利を逃してしまったのはちょっと複雑な気分です。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
ポルシェと接触してしまったことをチームに謝罪したいと思います。私のミスで、それが原因でレースを事実上終えることになってしまったのは本当に申し訳なく思っています。それまではチームが素晴らしい仕事をしてくれて、12番手スタートから追い上げを可能にしてくれていただけに、チームを失望させる結果になってしまい、言葉もありません。富士ではもっといいレースができることを願っています。最後にペナルティを受けてしまったのは少し残念ですが、素晴らしいパフォーマンスを見せた7号車には祝福を贈ります。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
厳しい一日でした。我々は後方からのスタートでしたが、セブがわずかなミスをするまでは順調に追い上げていました。チームは困難な状況でも素晴らしいパフォーマンスを発揮し、彼ら全員を本当に誇りに思います。7号車の戦いぶりは驚くべきものでした。戦略、ピットストップ、その全てが最高でした。ペナルティがなければ勝っていたでしょう。残念ながら8号車は我々の期待していたようには行きませんでしたが、ホームレースである次戦富士では巻き返して見せます。
平川亮(8号車 ドライバー):
難しいレースでした。追い上げて上位を争えるだけの良いペースを見せられましたし、それだけにアクシデントは残念です。7号車も同様でした。彼らは素晴らしい走りで勝利目前まで行きました。しかしこれもレースであり、前を向いて進むしかありません。次戦は我々のホームレースであり、1-2フィニッシュを果たせるよう、富士へ向けて気持ちを切り替えなくてはなりません。日本のファンの皆様の前で、それが実現できれば最高です。
WEC第6戦ローンスター・ル・マン 決勝結果
順位 | No. | ドライバー名 | チーム/車種 | 周回 | トップとの差 |
1 | 83 | ロバート・クビサ ロバート・シュワルツマン イーフェイ・イエ | AFコルセ/ フェラーリ 499P | 183 | |
2 | 7 | マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ニック・デ・フリース | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 183 | 1.780 |
3 | 50 | アントニオ・フオコ ミゲル・モリーナ ニクラス・ニールセン | フェラーリAFコルセ/ フェラーリ 499P | 183 | 26.282 |
4 | 2 | アール・バンバー アレックス・リン | キャデラック・レーシング/ キャデラック V-Series.R | 183 | 46.924 |
5 | 35 | ポール=ルー・シャタン フェルディナンド・ハプスブルク シャルル・ミレッシ | アルピーヌ・エンデュランス・チーム/ アルピーヌA424 | 183 | 1:10.513 |
15 | 8 | セバスチャン・ブエミ ブレンドン・ハートレー 平川亮 | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 181 | 2 Laps |