WEC

中嶋一貴×小林可夢偉 後編(2/2)

後編:ル・マン24時間レースはモナコ以上に特別なレース

メカニックとTS050 HYBRID 5号車

ル・マンへの思い。そして今シーズンの目標

ル・マン24時間レース。
僕にとっては、モナコ以上に特別感のあるレース中嶋一貴

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長いつき合いのおふたりが、今年はチームメイトとなり、WECそしてル・マン24時間を戦うわけですが、ル・マンに対する特別な思いはありますか?

中嶋

F1のモナコグランプリ、インディ500、そしてル・マン24時間の3つが一般的に世界三大レースと言われています。僕はインディ500には出たことがないのでわかりませんが、モナコグランプリに関しては、F1に出ていた時は18戦のうちの1戦という感覚しかなかった。でも、ル・マン24時間は、今はWECの1戦ですが、やはり特別なレースだし、あの雰囲気は実際に現場に行かないと分からないかもしれない。僕にとっては、モナコ以上に特別感のあるレースです。

小林

実際に出てみると楽しいしね。結果がどうであれ、ル・マンは完走しただけでも意外に気持ちいい。普通、レースは結果を残さないとモヤモヤするじゃないですか。でも、ル・マンの場合はたいした結果じゃなくても、走り切っただけでも達成感がある。普通のスプリントレースの場合、終わった後にもう1レースやれと言われたら、やれる体力は全然残っている。でも、ル・マンは体力的にもやり切った感があって、それが良さではないかと。 ドライバーだけでなく、エンジニアもメカニックも見る人も、みんな一緒になって最後までやり切った、達成感があるんです。だから、ああいう特別なレースになっているんじゃないかなと、個人的には思います。

  • ル・マン24時間レースのスタートシーン
  • ル・マン24時間レースのゴールシーン

ル・マンは完走しただけでも気持ちいい。
やり切った感が良さですね小林可夢偉

中嶋

ル・マンは1年に1回だけだし、WECでチャンピオンになる事よりも、ル・マンで勝つ事のほうが大事という人もいますよね。

小林

ル・マンで優勝するために僕たちはやっているし、その重要な立場にいる事もしっかりと理解している。万全の体制で行って、そこで最高の仕事をするしかないと思っています。でも、ル・マンはやはり特別で、一貴が2014年に辛い思い(トップを走りながらもリタイア)をしたように、勝つためには運も必要。そういう意味では出続けないといけないと思うし、やり続けたらいつか良いことが起こるんじゃないかなと。1回うまく行ったら、案外その後はポンポンと簡単に行くかもしれないし。

中嶋

そういう場合もありますね。

小林

でも、その1回目の壁がなかなかね。

中嶋

ドライバーとして、ル・マンに出る以上は絶対に優勝したいと思います。今、優勝を狙えるチームにいるのは特別な事ですが、それがトヨタだというのも自分にとっては大きなこと。トヨタとしては、もう30年以上挑戦している歴史があって、でも残念ながら勝ててはいない。勝つためにはやはり運も必要だし、続けることがすごい大事だと思うんです。これまで何度か勝つチャンスはありましたが、女神には見放されてきているので、あとは女神が振り向いてくれるまでやり続けるしかない。そして、やっぱり自分達がやっているうちに優勝したいですね。

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去年はル・マンだけでなく、WECでも勝つことができませんでした。

中嶋

本当にキツい1年でした。ドライバーにしてもスタッフにしても、開幕戦のシルバーストーンを除いて現実的に勝てると思えるレースはなかったし、表彰台に乗る事すら想像できなかった。そんな中でも、みんなやけになることなく、やる気を無くす訳でもなく、それぞれの仕事をしっかりとやり続けた。その経験は、きっと今年生きるはずだと思います。メンバーは少し変わりましたが、凄くいいチームになってきていると思いますし。

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最後に、今年の目標を教えてください。

中嶋

去年の事もあるので、あまり大きな事を言うのはどうかと思いますが、やる以上はやはり勝つ事が絶対的な目標です。そして、自分としては自分の仕事をしっかりやりきること。去年はミスもあったし、苦労したレースもあったので、まずは自分がしっかりとパフォーマンスを出す事が第1の目標です。

今年こそ、村田さんを泣かせたいね中嶋一貴&小林可夢偉

小林

僕の1番の目標は、WECでチャンピオンになることよりも、ル・マンで勝つ事。そこは絶対なんですけど、ル・マンで勝つことができればWECのチャンピオンも近づいてくるんじゃないかなと思うんです。 ここまでずっと長いプロジェクトをやってきて、苦労した人、悔しい思いをした人がいっぱいいると思うんですよね。例えば、前TMG社長の木下(美明)さんとか。木下さんはもう退任されたけれど、きっと勝てなくて無念だったはず。でも、村田(久武、モータースポーツユニット開発部部長)さんは最初から今までいるから、もし優勝したら泣いてくれるかな?

中嶋

泣かせるしかないね。

小林

では、村田さんを泣かせる事を目標に。そんなレースをしたいですね。

  • WEC 2016年シーズンに挑むTOYOTA GAZOO Racingの6名のドライバーたち
  • テスト走行中のTS050 HYBRID 5号車

中嶋一貴と小林可夢偉が紹介した今年のTOYOTA GAZOO Racing。

気心知れたふたりの絶妙な掛け合いながら、
その言葉には強い決意とチームの結束が感じられたのではないでしょうか?

今年もTOYOTA GAZOO Racingは、
ル・マン24時間レースの優勝を目指して頑張ります!

応援よろしくお願いします!

The challenge of Kazuki and Kamui