WEC ~FIA 世界耐久選手権~ の概要
多彩なスポーツカーが競う耐久レースの世界選手権
2025年もWECはル・マン(仏)、富士(日)など8カ国で全8戦を開催
FIA世界耐久選手権(FIA World Endurance Championship:WEC)は耐久レースの世界選手権シリーズです。2012年のスタート以来、プロトタイプカーとGTカーが混走する形式でレースが構成されてきました。開催13年目の2025年は昨年に引き続き、ハイパーカーとGTカーのためのクラスが設けられます。
総合優勝を争うハイバーカーのLMHクラスにはTOYOTA GAZOO Racingの他、ポルシェ、フェラーリ、BMW、キャデラックなど8メーカー、18台の車両が、またGTカーのLMGT3クラスはレクサスをはじめ、メルセデス、ポルシェ、フェラーリ、フォード、アストンマーチンなど9メーカー、18台がシーズンエントリーしています。選手権は全8戦で争われ、カタールでの開幕戦後は、イモラ、スパ・フランコルシャン、そしてル・マン24時間と続き、さらにブラジル、COTA(アメリカ合衆国テキサス州)と南北アメリカ大陸を転戦し、日本の富士スピードウェイを経て、バーレーンで最終戦を迎えます。
選手権とタイトル
各レースは最低6時間で争われることが競技規則に明記されており、最長がル・マンの24時間です。選手権は「LMH(ハイパーカー)」と「LMGT3」の2クラスで構成され、TOYOTA GAZOO Racingが参加するハイバーカークラスは3タイトル、LMGT3クラスには2つのカップが設定されており、選手権ポイントは下記の通り、レースの長さによって異なります。
FIA ハイパーカー世界耐久選手権に出場するマニュファクチャラー(メーカー)は、2台の車両をエントリーすることが義務付けられています。これを超える車両は、ハイパーカー・チーム・ワールドカップにエントリーする必要があります。メーカーごとに受け入れられる車両の最大数は、選考委員会が決定します。
なお、WECの競技規則には、“その特殊性を考慮し、ル・マン24時間はオーガナイザーによって供給される特別規則によって統轄される”、という一項があり、この特別規則がWECの競技規則より優先される、と規定されています。
FIAハイパーカー世界耐久ドライバー選手権
FIAハイパーカー世界耐久マニュファクチャラー選手権
FIAワールドカップ・ハイパーカーチーム部門
FIA耐久トロフィーLMGT3ドライバー部門
FIA耐久トロフィーLMGT3チーム部門
ポイント基準
順位 | 6時間レース | 8時間および10時間レース* | ル・マン24時間 |
---|---|---|---|
1位 | 25点 | 38点 | 50点 |
2位 | 18点 | 27点 | 36点 |
3位 | 15点 | 23点 | 30点 |
4位 | 12点 | 18点 | 24点 |
5位 | 10点 | 15点 | 20点 |
6位 | 8点 | 12点 | 16点 |
7位 | 6点 | 9点 | 12点 |
8位 | 4点 | 6点 | 8点 |
9位 | 2点 | 3点 | 4点 |
10位 | 1点 | 2点 | 2点 |
*または1812km
加えて各大会において、各カテゴリーのポールポジションには当該車両の全ドライバーに1ポイントが追加されます。
ドライバー
両クラスともドライバーは車両1台につき最大3名まで認められます。「FIAドライバー分類規定」により、戦績に従って「プラチナ」、「ゴールド」、「シルバー」、「ブロンズ」の4つに分類され、可能となる組み合わせが参加クラスごとに決められています。
予選
第4戦ル・マン24時間以外の予選方式は、各クラスそれぞれ12分間の予選が行われ、スターティンググリッド11位以下がここで決まります。そして予選の上位10位までは10分間のハイパーポールに進み、スターティンググリッド1〜10位を決定します。
今シーズンの第4戦ル・マン24時間では、予選セッションの上位15位まではハイパーポールに進み、16位以下はここでの結果でスターティンググリッドを決めます。
ハイパーポールも変更があり、ハイパーポール1(H1)、ハイパーポール2(H2)の2段階となります。H1は20分間で、このベストタイム10台がハイパーポール2に進出し、それ以下の車両は11~15位となります。そしてH2は15分間で行われ、この結果でレースのスターティンググリッド1~10位を決定します。
バーチャルセーフティカー
アクシデントが発生した際、レースディレクターが必要と判断した場合に宣言することができる手順です。バーチャルセーフティカー (VSC) は、セーフティカー(SC)導入まで約2周に渡って運用することができ、車両内のモニターにVSCが表示されると、各車両は80km/hまで減速し、一列になって前後の車間距離を維持しなければなりません。VSC中のピットレーンへのアクセスは可能です。
タイヤ
ハイパーカークラス、LMGT3クラスともに供給メーカーが指定されているワンメイク制で、それぞれミシュランとグッドイヤーが全車両に独占供給します。
各レースで利用可能なタイヤのスペック数は以下の通りです。
ドライタイヤのスペック数 | ウエットタイヤのスペック数 | |||
---|---|---|---|---|
ル・マン24時間 | その他のレース | シーズン全体 | ||
ハイパーカー | 3 | 2 | 3 | 1 |
LMGT3 | 2 | 2 | 2 | 1 |
各レースで使用できるドライタイヤ本数は以下の通りです。雨天用タイヤに使用本数の制限はありません。
競技開始時、使用するドライタイヤはすべて新品でなければなりません。また、ハイパーポールに割り当てられたタイヤは、ハイパーポールセッション専用に使用しなければならないと競技規則で定められています。
フリープラクティス | ハイパーポール | 予選 + 決勝 | |||
---|---|---|---|---|---|
6時間レース | 8時間レース | 10時間レース* | |||
ハイパーカー | 12 | 4 | 18 | 26 | 32 |
LMGT3 | 12 | 4 | 18 | 26 | 32 |
*または1812km
なおル・マン24時間のタイヤに関しては、後日発表されます。
クラスと参加車両
選手権は「ハイバーカー」、「LMGT3」の2クラスで構成されますが、ル・マン24時間に限り、2023年いっぱいで廃止された「LMP2」クラスの車両も参加できます。最上級クラスは「ハイバーカー」で、Toyota GR010 HYBRIDが参加するのもこのクラスです。「LMH」車両と「LMDh」車両に参加が認められています。「LMGT3」は2023年までの「LMGTE Am」に代わり2024年に誕生したクラスです。
WEC最上級クラス。「LMH」車両と「LMDh」車両に参加が認められています。エンジン+ハイブリッドシステムの最高出力は520kW。性能調整(BoP)が導入されます。ドライブシャフト・トルクセンサーの装着が義務付けられており、BoP出力を超えていないか、FIA/ACOによって常にモニターされます。ドライバー編成は自由ですが、ブロンズドライバーの参加はできません。ゼッケンベースはレッド。タイヤはミシュランが独占供給します。
Le Mans Hypercar (LMH)

FIAとACOによるLMH技術規則に適合する車両で、レース専用のプロトタイプカー、および実際に公道走行可能なハイパーカーのレース仕様車と規定されています。クローズドボディを備え、全長5,000mm以下、全幅2,000mm以下、全高はアンテナ等を除き、基準面より1,150mm以上で、最低車重は1,030kg。排気量、気筒数等は自由で、独自のハイブリッドシステムの搭載も認められており、搭載する場合は四輪駆動とすることも可能です。

Le Mans Daytona h(LMDh)
IMSAとACOによるLMDh技術規則に適合する車両。LMH車両は各マニュファクチャラーが独自に設計、製作できるのに対し、LMDh車両はオレカ、ダラーラ、リジェ、マルチマテックの4社が製作するシャシーを使用しなければならず、標準ハイブリッドシステムの搭載が義務付けられています。クローズドボディを備え、全長5,100mm以下、全幅2,000mm以下、全高はアンテナ等を除き、基準面より1,060mm以上で、最低車重は1,030kg。四輪駆動は認められません。
Le Mans Grand Touring Three(LMGT3)

LMGT3は世界各地のGTレースで主流となっているFIA GT3規定の車両がベースですが、ドライブシャフトのトルクセンサー、ディスプレイパネルシステムの装備等、WEC独自の規定もあり、性能調整(BoP)も導入されています。ドライバー編成にはブロンズドライバー最低1名と、ブロンズかシルバーのドライバー1名を含めなければなりません。また、選手権にエントリーする車両にはル・マン24時間を除き、サクセスバラスト(ウエイト)制が適用されます。ゼッケンベースはグリーン。タイヤはグッドイヤーのワンメイクです。

RACE
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カタール
第1戦
カタール1812kmレース -
イタリア
第2戦
イモラ6時間レース -
ベルギー
第3戦
スパ・フランコルシャン6時間レース -
フランス
第4戦
ル・マン24時間レース -
ブラジル
第5戦
サンパウロ6時間レース -
アメリカ
第6戦
ローン・スター・ル・マン -
日本
第7戦
富士6時間レース -
バーレーン
第8戦
バーレーン8時間レース