レース車両解説
燃料規制に挑戦すべく改良されたTS050 HYBRID
ル・マン24時間レースでの勝利を目指す
2018年仕様のTS050 HYBRIDは、最大1000馬力を誇るハイブリッド・パワートレーンの信頼性の向上と、更なる燃料規制に挑戦すべく改良されましたが、それ以外の部分は3連勝でシーズンを締めくくった2017年仕様と大きな変化はありません。
今季はあらゆる部品を一から徹底的に見直し、ボルトの一本にいたるまで、全てのコンポーネントに対して目を光らせ信頼性の向上を目指しました。
一番大きな変更点は、冷却系を含む電池システムの軽量化です。
TS050 HYBRIDの電池は約300kWというプリウスの10倍以上(参考:プリウスは30kW程度)の出力が出せる電池のため、発熱量も少なくありません。電池は電極自体が熱くなるため、電解液やセルの材質にまで踏み込んで開発を行いました。その結果電池の耐熱性が上がり、冷却システムが簡素化できましたので、水冷冷却装置を含めた電池システム全体の軽量化を行いました。
新たな技術規則では、同じLMP1クラスのライバルとなるノン・ハイブリッド車両には、1周あたり約69%多いエネルギー量(最大燃料量)が与えられます。 ル・マン24時間レースのサーキットの1周(13.6km)あたりでは、LMP1クラスのノン・ハイブリッド車両が、最大210.9MJのエネルギー量(約5.2kg/周の燃料量)になるのに対し、TS050 HYBRIDは、最大124.9MJ(約3.1kg/周の燃料量)となります。
また、エンジンに供給できる最大瞬時燃料流量は、TS050 HYBRIDが毎秒22.8g(毎時80.2kg相当)になるのに対し、LMP1ノン・ハイブリッドのライバルは毎秒30.5g(毎時110kg相当)。車両重量は、ハイブリッド車両に対しライバルは、45kg軽量となります。
これだけの制限を受けて戦うTS050 HYBRIDは、言い換えるとその高い技術力を物語る証とも言えます。
TOYOTA GAZOO Racingはこのチャレンジングな条件を肯定的に捉え、レースの現場という極限の条件下で、ハイブリッド・パワートレーンの更なる効率と性能を追求し、トヨタの「もっといいクルマづくり」というミッションに貢献していきます。
主要諸元
型式 | LMP1-H(ル・マン プロトタイプ 1 - ハイブリッド) |
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車体構造 | カーボンファイバー構造 |
ウインドスクリーン | ポリカーボネイト製 |
ギヤボックス | 横置きシーケンシャル6速 |
ギヤボックスケーシング | アルミニウム製 |
ドライブシャフト | CVジョイント式ドライブシャフト |
クラッチ | マルチディスク |
ディファレンシャル | ヴィスカス機械ロック式 |
サスペンション | プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後) |
スプリング | トーションバー |
アンチロールバー | 前/後 |
ステアリング | 油圧式パワーステアリング |
ブレーキキャリパー | 2系統油圧式ブレーキシステム、モノブロック軽合金キャリパー(前/後) |
ブレーキディスク | ベンチレーテッド・カーボンディスク(前/後) |
ホイール | レイズ製マグネシウム鍛造ホイール |
フロントホイール | 13 x 18インチ |
リアホイール | 13 x 18インチ |
タイヤ | ミシュラン |
フロントタイヤ | 31/71-18 |
リアタイヤ | 31/71-18 |
全長 | 4650mm |
全幅 | 1900mm |
全高 | 1050mm |
燃料積載量 | 35.2 Kg |
パワートレーン | トヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R) |
エンジン | V型6気筒直噴ツインターボチャージャー |
エンジン排気量 | 2400cc |
エンジン出力 | 367kW/500PS |
燃料 | ガソリン |
バルブ数 | 4/シリンダー |
ハイブリッドパワー | 前輪モーター+後輪モーター:367kW/500PS |
パワーユニット最高出力 | 735kW/1000PS(エンジン+ハイブリッドモーター) |
蓄電装置 | ハイパワー型リチウムイオン電池 |
前輪ハイブリッドモーター | アイシンAW製 |
後輪ハイブリッドモーター | デンソー製 |