6月12日(日)、フランス ル・マンのサルト・サーキットでFIA世界耐久選手権(WEC)第3戦 第90回ル・マン24時間の決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)のGR010 HYBRIDが1-2フィニッシュ。2018年の初優勝以来5連覇を達成しました。
今年のル・マン24時間はレース全体を通して好天に恵まれ、一時、部分的な低速走行区間(以下 スローゾーン)があったものの、セーフティカー出動は1回のみと波乱の少ない、クリーンなレースとなりました。
セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の3名が駆るGR010 HYBRID 8号車はポールポジションでのスタートから完璧なレースで380周を走破し、現地時間午後4時、スタンドを埋め尽くした熱狂的なファンが見守る中、トップでチェッカーを受けました。
昨年の勝者である小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスのGR010 HYBRID 7号車は8号車から遅れること2分1秒222の2位でフィニッシュ。TGRはル・マンで4度目の1-2フィニッシュを果たしました。
ブエミはこの勝利で自身のル・マン通算優勝記録を4回へと伸ばし、スイス人ドライバーとしての最多勝記録を更新。ハートレーも自身3度目の勝利でニュージーランド人の最多勝ドライバーになりました。平川は3度目のル・マン挑戦、TGRのメンバーとしては初めてのル・マンで見事に総合優勝を勝ち取り、日本人ドライバーとして表彰台中央に上った5人目のドライバーとなりました。
2台のハイパーカー GR010 HYBRIDは、コース上の混雑やスローゾーン、コース条件の変化などに見舞われる中、何度も互いの順位を入れ替えながら、僅差での首位争いを繰り広げました。
TGRの2台による数秒差での首位争いは16時間にも及びました。しかし、256周目に首位を走行していたロペスの7号車がフロントモーター関連の電装系トラブルに見舞われたことで、このバトルは終焉を迎えました。
一旦はコース脇に車両を停めたロペスでしたが、システム再起動で走行を再開しピットイン。さらなる再起動作業などでこのトラブルを解決した7号車はそれまでのスピードを取り戻しましたが、このタイムロスにより、首位に立ったハートレーの8号車からは約1周分の差をつけられてしまいました。
車両性能が拮抗した2台においてこの差はあまりに大きく、ロペスは最後の30分に、最速ラップを叩き出す走りで追い上げたものの、再び追いつくまでには到りませんでした。
9日(木)のハイパーポールで、最終盤にドラマティックな逆転アタックを見せてポールポジションを獲得したハートレーが、8号車の最終走者を担当し、第90回ル・マン24時間レースの栄光のチェッカーをトップで受けました。ロペスの7号車がこれに続き、計5,177kmもの長い戦いをTGRの2台は同一周回の1-2で走り抜きました。
WECのシーズン選手権争いでは、他のレースの倍のポイントを獲得できるル・マンで1-2フィニッシュを果たしたことで、TGRはマニュファクチャラーズランキングで2位のアルピーヌに22ポイント差をつける首位に浮上。ドライバーズポイントでも、8号車の3人は首位のアルピーヌ36号車に3ポイント差の2位と大きく躍進、7号車の3人は首位と20ポイント差の4位につけています。
チームはル・マン5連覇の喜びもつかの間に、2022年シーズンの世界チャンピオンをかけた戦いを続けるべく、7月10日(日)に行われる第4戦、イタリア・モンツァでの6時間レースに臨みます。
豊田章男(TOYOTA GAZOO Racingチームオーナー)
8号車のみんな優勝おめでとう!
7号車のみんなもワンツーフィニッシュをありがとう!
今回のル・マンは終始ワンツーを走ったレースでした。
しかし、ドライバーたちは気持ち良く走り続けられたわけではありません。
むしろ、気持ちをすり減らしながら走ってくれていたと思います。
スタートから16時間経つまで、2台に大きなトラブルはなく、数秒の差で競り合っていました。
長く競り合えたのは2台が同じレベルにつくり上げられノートラブルで走れていたからです。
ドライバーたちもこのことに感謝してくれていました。
一方で、同じチームの2台が、長い間競り合うことはドライバーにとって大きな負担だったと思います。
本当に大変だったと思いますが、ドライバーたちは素晴らしい戦いを続けてくれました。
6人に感謝したいと思います。
しかし、その後、我々のクルマづくりが至らなかったせいで、競り合いを終わらせてしまいました。
残り8時間という時に7号車が路上でストップしました。
再び走り出せましたが、これによってドライバーたちは「いつ止まるかもわからない」という想いと共に
走らざるを得なくなってしまいます。
極限の想いをしながら戦いを続けてくれるドライバーたちに申し訳ない気持ちになりました。
最後までクルマを走らせ続けてくれてみんな本当にありがとう。
可夢偉は、これに加えてチーム代表という役割も背負っての戦いでした。
代表として上に立つのではなく、自らが現場に降りてエンジニアやメカニックたちと話し、みんなから出てくる課題に向き合ってくれていると聞きました。
まだ全てのメンバーと気持ちが通じ合うまでにはいかず、チームづくりは道半ばと言っていましたが徐々にチームは変わってきていると思います。
代表としての仕事にも全力であたってくれてありがとう。
だけど今回、ドライバーとしては本当に悔しかったし、勝ちたかったという気持ちもわかります。
終盤の可夢偉がファステストを出し、最後にホセがそれを塗り替えて…
ゴール目前の7号車は不思議と速いクルマになっていました。
8号車に早く無事にゴールしてほしいという気持ちもありながら…
もう一度7号車に追いついてほしい…
私でさえ、そんな気持ちにさせられました。
最後まで勝利にこだわって走り続けてくれてありがとう。
ドライバーと代表の兼務は、複雑な気持ちになる役割だと思います。
ですが、こうして2台が最後までフェアに戦ってくれていたのも可夢偉がチーム代表でいてくれているおかげだと思っています。
大変な役割を本当にありがとう。
今までとは違う役割を持った一貴と可夢偉が揃って表彰台に立つ姿も見られてとても嬉しく思いました。
クルマづくりもチームづくりも終わりのない戦いです。
二人には、これからもチームを、よろしく頼みます。
そして可夢偉は引き続き、ドライバーとしてもよろしくお願いします。
TOYOTA GAZOO Racingはル・マンを5回連続で勝利することができました。
多くのファンとパートナーの皆様が一緒に戦い続けてくださるおかげです。
皆さま、ありがとうございます。
引き続き、ご声援、ご支援をよろしくお願いいたします。
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
8号車で優勝を果たしたセバスチャン、ブレンドン、亮の3人を祝福します。残念ながら我々の7号車は朝方、トラブルに見舞われリードを失ってしまいました。8号車とはそれまでずっと僅差の良いバトルを繰り広げていただけに、トラブルは本当に残念です。24時間レースではこういうことも時々起こります。とはいえ、7号車が無事にレースに復帰し、TOYOTA GAZOO Racingの2台が同一周回の1-2でフィニッシュできたことはチームによる素晴らしい努力のおかげです。このレースウィーク、本当に頑張ってくれたマイクとホセ、そして、7号車のクルーにも感謝します。1-2フィニッシュを目指してル・マンに挑みましたが、チーム全員の頑張りによりそれを達成することができ、本当に感謝しています。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
ここル・マンにはあまり好かれていない気がします。いつも何かが起こってしまいます。昨年は勝つことができましたが、それまで何度もここで厳しい思いをしてきました。優勝したチームメイトの8号車、特に亮はおめでとう。初挑戦で優勝できるというのは格別でしょう。可夢偉とホセと共にレースを戦うのはいつも喜びであり、ル・マン勝利に全てを捧げてきましたが、あと一歩届きませんでした。とはいえ、チームの1-2フィニッシュと、TOYOTA GAZOO Racingの5連覇は素晴らしい結果で誇りに思いますし、東富士やドイツ・ケルンのチーム関係者全員に感謝します。まだWECのチャンピオン争いは3戦残っているので、気持ちを切り替えてプッシュしていきます。
ホセ・マリア・ロペス(7号車 ドライバー):
ル・マンで優勝できなかったのは悔しいです。しかし、我々はチーム全員が勝利を目指して戦っており、負けを認めてチームが1-2フィニッシュを果たせたという好結果を素直に喜びたいと思います。8号車のクルー、おめでとう。素晴らしい戦いぶりでした。ほぼ完璧なレースを戦う中、ハイパーカークラスのライバルは皆、何らかのトラブルに見舞われたこともあり、我々2台は大きく差を広げることができました。その後も完璧を目指して戦い続け、GR010 HYBRIDの速さも示せて勝利も見えていただけに、トラブルに見舞われたのは本当に悔しいです。しかし、チームのおかげでコースに復帰し、戦い続けることができました。TOYOTA GAZOO Racingの1-2フィニッシュに貢献できたことには満足しています。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
亮とブレンドンと共に、表彰台の中央に立つという格別な瞬間を味わい、その後の自分を言葉で表すのは難しいです。初めて8号車のクルーとしてル・マンに出場した亮と共に優勝できたのは最高です。彼は本当に素晴らしい走りで、その功績を称えたいと思います。チーム全員、そして、我々8号車のクルーも一切ミスすることなく、車両にもダメージを負わず、完璧なレースを戦い抜きました。私にとってル・マンでの4度目の勝利、また、TOYOTA GAZOO Racingの5連覇を勝ち取ることができ、信じられない気持ちです。今日達成した偉業を実感するには少し時間が必要になりそうです。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
TOYOTA GAZOO Racingのル・マンでの1-2フィニッシュを達成できて嬉しいです。ハイパーポールでアタックを担当し、ポールポジションを獲得した時も素晴らしい気分でしたが、決勝のチェッカーを受けたときはさらに最高でした。ル・マンで最後のドライバーを担当しトップでチェッカーを受けたのは初めての体験だったので、フィニッシュラインを越えたときは感無量でした。レース中は結果については考えないようにしています。レースは、特にトヨタにとっては、最後の最後まで何が起こるかわからないからです。だからこそチェッカーを受けたときには全ての感情があふれ出し、信じられない気分でした。亮は本当に良いドライバーで、彼が初優勝を果たせたことも嬉しいです。我々は皆、彼のことが大好きで、既に彼は強力なチームの一員です。また、7号車のクルーとの関係も良く、レースの大半で、素晴らしいバトルを楽しむことができました。バトルの間はずっと全開でしたが、彼らにトラブルが発生したあとは、リスクを最小限に抑えて走りました。
平川亮(8号車 ドライバー):
伝説のドライバーが並ぶ、ル・マンウィナーのメンバーリストに名を連ねることができ、光栄です。正直なところ、まだ夢が叶ったという実感がありません。ずっと接戦で、特に7号車とは素晴らしいバトルができました。私がチームに加わって以来、沢山助けてくれたセバスチャンとブレンドンには本当に感謝していますし、彼らと同じチームでドライブでき光栄でした。TGRのメンバーとして初めてのル・マンで1-2フィニッシュを飾れたというのも最高ですし、ハードワークを続けてくれたチーム全員に感謝します。我々8号車は戦略もピットワークも完璧でしたし、一切トラブルも起こらないレースでした。これ以上のものは望めないと思います。
WEC第3戦ル・マン24時間 決勝最終結果(総合順位)
順位 | No. | ドライバー名 | チーム/車種 | 周回 | トップとの差 |
1 | 8 | セバスチャン・ブエミ ブレンドン・ハートレー 平川亮 | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 380 | |
2 | 7 | マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ホセ・マリア・ロペス | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 380 | 2:01.222 |
3 | 709 | ライアン・ブリスコー リチャード・ウェストブルック フランク・マイルー | グリッケンハウス・レーシング/ グリッケンハウス 007 LMH | 375 | 5 Laps |
4 | 708 | オリビエ・プラ ロマン・デュマ ルイス・フェリペ・デラーニ | グリッケンハウス・レーシング/ グリッケンハウス 007 LMH | 370 | 10 Laps |
5 | 38 | ロベルト・ゴンザレス アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ ウィル・スティーブンス | JOTA/ Oreca 07-Gibson | 369 | 11 Laps |