新居レポート - 2009 第3戦 中国GP

中国GP 新居レポート

2009年4月20日

いつもご声援ありがとうございます。開幕2連戦を終えた09年のF1は、1週間のインターバルを置いて、再び2週連続での開催を迎えました。その緒戦は中国GP。04年に初めて開催された中国GPも今年で6年目ですが、春に開催されるのは初めて。それではさっそく中国GPの模様を報告しましょう。

ディフューザー問題が落着し、コース上での戦いに集中

前輪で発生した乱気流を整えて後方へ流し、空力効果を高める役割を持つターニングベーンに新しくフィンを追加した。写真のフロントタイヤ後方にある縦長のターニングベーンの、下のほうに取り付けられている黒い水平の羽根状のもの。

オーストラリアGPで提訴されていた、我々が使用するディフューザーに対するルール解釈についての問題が、4月14日に国際控訴裁判所で審議され、翌15日に我々の考えどおり適法という決定が出たので、この中国GPはすっきりした気持ちで臨むことができました。
3戦目となる中国GPには、予定していたさまざまな改良を行いました。見えるところではサイドポッド前方に装着しているターニングベーンに新たなフィンを追加しました。見えないところでは足回りなどに変更を加え、開幕2戦で課題となっていた低速コーナー立ち上がりでのトラクションを改善しました。
今年の中国GPは秋から春へ開催時期が変更されましたが、すでに過去5年間分の走行データがありましたので、セットアップの準備に特に苦労するようなことはありませんでした。ただ、昨年まで使用していたタイヤがミディアム、ハードと硬めの2スペックだったのに対し、今年はスリックタイヤへの変更に加えて、スーパーソフト、ミディアムという軟らかめの組み合わせになったので、その点がポイントになるとにらみながら、グランプリに臨みました。

新パーツの評価も上々。ポールポジションへの手応えを感じた初日

低速コーナーからの立ち上がりの改善を課題に、足まわりにも変更を加えた。さらにタイヤもこれまでとは異なる軟らかめになるなど、変更点は多かったが、金曜走行の時点で期待通りの性能を確認することができていた。

今回、上海インターナショナルサーキットで初めて使用することとなったスーパーソフトタイヤですが、走り出してみると比較的安定していたので、安心しました。金曜午前中はエアロダイナミクスの比較を行い、改良を加えた足回りの確認も行いました。その結果、期待していた効果が実走でも得られたので、午後のフリー走行では空力と足回りともに新しい仕様で、走り込みを行いました。
残念だったのは、午前中のフリー走行でヤルノのクルマに標準ECU(エンジン・コントロール・ユニット)のトラブルが発生してしまったことです。レギュレーションで定められているように昨年からどのチームも同じ仕様のECUを使用しているのですが、走行中に突然にリセットがかかり、交換を余儀なくされました。そのため、ヤルノ(トゥルーリ)が走行を中断しなければならなくなっただけでなく、チームメートのティモ(グロック)も確認のためにしばらくピットガレージにとどまらなくてはなりませんでした。
そのことを除けば、新しく投入したアイテムが期待していたとおりのパフォーマンスを披露してくれたので、とても有意義な初日でした。順位的にはそれほど上位ではありませんでしたが、手応えは感じていたので、土曜日の予選ではポールポジションを目指したタイムアタックができるだろうと期待していました。

路面コンディションの変化に戸惑い、不本意な予選結果

予選ではまずまずの位置につけたヤルノだったが、雨の中での決勝では徐々にタイヤのグリップ不足に悩まされるようになった。結局他車との接触によりクルマにダメージを負い残念なリタイヤとなってしまった。

土曜日午前中のフリー走行では、まだ残り時間が15分以上ある時点でヤルノがニュータイヤを装着してトップタイムを記録。その後、路面にラバーがのった状態になったセッション後半に、タイムを更新されて2番手で終えることになりましたが、これはコンディションによる差でしたので、予選に向けて自信を持って臨みました。
ところが、予選に入ると、突然ヤルノはグリップ不足に悩まされてしまいました。これは開幕戦のオーストラリアGPとまったく同じ症状で、コースのあらゆるコーナーでクルマがスライドしていたようです。はっきりとした理由は解明できていませんが、日が照って路面温度が40℃以上に上がったことが要因ではないかと考えています。
いずれにしても、そんな理由から今回の予選は第1ピリオドから苦しい戦いを強いられました。スーパーソフトを装着した第1ピリオドの最後のアタックで、なんとか2台ともトップ15に入って第2ピリオドに進出しましたが、ライバル勢との差は非常に僅差。第2ピリオドでティモがコンマ1秒差でトップ10を逃したのは、本当に悔やまれました。ティモは午前中のフリー走行中にギアボックスにトラブルが生じ、交換を余儀なくされて5番手降格が決まっていたので、少しでも上のポジションを狙わせていただけに残念です。最後のアタックでは13コーナーでわずかにミス。あれがなければトップ10に入っていたでしょう。
それでも、最終ピリオドの最後のアタックでヤルノがようやく本来の力を発揮できたことは明るい材料でした。ヤルノのスタートポジションは6番手でしたが、前からスタートする何台かは我々と異なる作戦を採っている可能性が高く、十分表彰台を狙えるスピードはあると思っていたので、チーム初となる3戦連続表彰台を目指していました。

ティモがピットレーンスタートから7位入賞を果たす

ティモはピットレーンからのスタートを選択したものの、こちらも接触により作戦の利点はほぼゼロになった。それでも「目隠しして運転しているようだった」(ティモ談)という過酷なレースでのポイント獲得は大きい。

日曜日のパナソニック・トヨタ・レーシングは雨に翻弄されたグランプリとなりました。
日曜日のレースでは降水確率が高かったため、通常であれば後方からスタートするティモには、燃料を多く搭載させるというのが定石です。しかしそのような作戦を敷くチームが多いだろうという予測から、土曜日の時点からあえてティモの燃料搭載量を軽くするという、アグレッシブな作戦を採りました。しかし、レーススタート前に雨脚が強くなったために、その作戦は功を奏さないと判断。ダミーグリッドにつかず、スタート時の燃料を増やすため、ピットレーンからスタートするという作戦に切り替えたのです。
その作戦自体はうまく機能して、22周目には9番手までポジションアップしたのですが、13周目のヘアピンで他車と接触した際に受けた、フロントノーズのウイング部分のダメージがひどくなり、予定よりも早くピットインした結果、戦略によるアドバンテージがほとんどなくなりました。それでも、ピットインしてきたティモのフロントノーズをメカニックたちが素早く交換。ティモも最後まで粘り強く走ってくれたおかげで7位入賞することができました。
一方、6番手からスタートしたヤルノは、セーフティカーランが終了してレースが再開された直後からタイヤの発熱不足に苦しみ、思うようなペースで走ることができませんでした。そこへ他車からの追突。チームはヤルノのリアウイングを修復して、レースは続けようとピットインを命じたのですが、戻ってきたヤルノのリアウイングの付け根を見ると、接合部にも損傷が及んでいることが判明したため、リタイヤを余儀なくされました。
入賞してポイントを取ることはできましたが、改良パーツを投入して、もっと高い目標を設定していただけに、今回の中国GPはとても悔しい結果でした。次戦バーレーンGPは今週末。既に気持ちは切り替えました。次こそ勝利を目指す戦いを行いたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。


上海国際サーキットでの新居章年。高い目標を掲げて臨むも、雨の中、実力発揮ならず悔しさが残る結果になった。気持ちを切り替え、バーレーンで初勝利を目指す。

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2009 チャンピオンシップポイント

ヤルノ・トゥルーリ
32.5pt / 8th
ティモ・グロック
24pt / 10th
小林 可夢偉
3pt / 18th
59.5pt / 5th

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