ハイブリッドLMP1の時代。日本人初のポールポジション
2014年以降もトップカテゴリーはハイブリッドLMP1が覇を競う時代が続いた。ガソリンターボのトヨタとディーゼルターボのアウディに、2014年になるとポルシェが2.0L V4ガソリン・シングルターボのハイブリッド車両で、さらに2015年には日産も特徴的なコンセプトのLMP1車両でル・マン制覇を目指した。
一方、GTカテゴリーではフェラーリ、アストンマーチン、ポルシェ、そしてコルベットのワークスチームによる激しいバトルが繰り返された。
2014年、トヨタの中嶋一貴が日本人初のポールポジションを獲得。日本人ドライバーが日本車でル・マン優勝という日本人ファンの夢は、もはや夢ではないとの期待が高まった。
またこの年、セーフティカーの導入を減らすことを目的に、コースの一部に低速走行区間を設ける「スローゾーン」と呼ばれる手順が導入された。
そして2016年になるとレース出走台数が60台に拡大される。その一方で、最上級クラスに参戦していたアウディとポルシェが、それぞれ2016年、2017年を最後にル・マン24時間から撤退。TOYOTA GAZOO Racingのライバルは、性能調整でパフォーマンスを拮抗させたマシンを擁する有力プライベートチームとなった。
2016年、初優勝目前のトヨタ陣営に悲劇が襲う。レース終了まで残り約6分、首位を力走する中嶋一貴のTS050 HYBRIDが突如スローダウンし、メインストレート上でストップしてしまったのだ。どうにか再走を果たした中嶋は11分以上を要してフィニッシュラインを通過するが、ル・マン24時間の特別規則では、最終周は6分以内に周回と規定されている。そのため優勝したポルシェ919 Hybridと同周回を走破しながら、このTS050 HYBRIDは完走扱いにすらならなかった。この規定は翌年に変更された。