第5戦 モントレー2013 in 群馬
雨が翻弄した伝統のモントレー奴田原選手が昨年に続き2連覇 GAZOO Racing ラック86が第4戦に続きJN3クラス2連勝
全日本ラリー選手権第5戦「モントレー2013 in 群馬」が、7月26日(金)~28日(日)に、群馬県渋川市を中心に開催された。赤城山や榛名山など群馬の山々を駆け巡り、かつて“伝統の一戦”と呼ばれていたこのラリーは、昨年9年ぶりに全日本ラリーに復活。今年は、昨年のステージに加え渋川市の北に位置するみなかみ町の群馬サイクルスポーツセンターに、観戦可能な特設ギャラリーステージが追加されるなど、新たなステージも用意された。
また、ラリーの拠点となる渋川市総合運動公園には、公園内のアクセス道路を利用したギャラリーステージとともに、昨年も好評だった渋川・伊香保ラリーパークを設置。パーク内には地元企業や自動車関連企業などのブースが数多く立ち並び、ラリードライバーやレーシングドライバー、ジムカーナドライバーのトークショーやデモラン、同乗走行など数多くのイベントが開催された。
今年は、寒気を伴った低気圧の影響で2日間とも突然雷雨に見舞われる荒れた天候だったにもかかわらず、大会期間中には昨年の来場数を超える約2万6000人の観客が会場に足を運び、ラリーを楽しんでいた。
開幕戦以来となるターマック(舗装路)戦となった今回のラリーは、2日間にわたって15本のスペシャルステージ(SS)を設定。SSの総距離は78.787kmで、そのなかにはわずか323mや789mという1kmに満たない距離のSSも数多く用意されている。
昨年は、連日気温が35度を超える猛暑のなかで戦われたこのラリーだが、今年は最高気温が30度前後と、比較的過ごしやすい気温のなかでの戦いとなった。ただし、晴れたかと思ったら突然激しい雷雨が襲うという、大荒れの空模様だ。そんななか、初日に前が見えないほどの激しい雨のなかでベストタイムを奪った奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューション)が、ライバルたちを大きくリードする。
さらに2日目も、まだ路面が乾き切らないハーフウェット状態のステージを果敢にアタックし、2位につける勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)との差を27秒まで拡大。最終SSは勝田が意地のベストタイムを奪うが、最後までリードを守り切った奴田原が、今季3勝目を挙げるとともに、大会2連覇を達成する結果となった。
奴田原と勝田の逆転に次ぐ逆転劇
大会前日の深夜に激しく降った雨の影響で、初日のステージは前日の雨が乾き切らない上に、路面の一部には雨とともに流れ出た泥や石が覆うという厳しいコンディションとなった。その状況のなかでトップを快走した奴田原だったが、路面が乾きドライコンディションとなるとともに勝田がベストタイムを連発して奴田原を逆転してトップを奪取。しかし夕方、雷とともに突然激しく降り出した豪雨のなかを果敢にアタックした奴田原が再びトップを奪い返すという、刻々と変わる天候とともにめまぐるしく変わったトップ争いは、雨を味方につけた奴田原に勝利の女神が微笑む結果となった。2位には勝田、そして3位には2日目にクラッチトラブルを抱えながらも最後まで走り切った石田正史/草加浩平組(三菱ランサーエボリューションX)が入った。
86とBRZがトップ争いを展開
第4戦で今季初優勝を遂げた横尾芳則/木村裕介組(トヨタ86)だが、今回も序盤からベストタイムを連発し、リードを築き上げる。その横尾を追いかけたのが、今大会からスバルBRZを投入してきた鎌田卓麻/竹原静香組だ。初日の前半は1秒を争う好勝負となったが、夕方に降った豪雨の影響で鎌田がタイムダウン。3位につけていた三好秀昌/保井隆宏組(トヨタ86)が鎌田を捉え2位に浮上し、初日を終えた。2日目は、初日の雨のステージで大量リードを築き上げた横尾が、そのマージンを活かし今季2勝目を獲得した。初日2番手の三好が最後までしっかりとポジションをキープして2位に入賞。終盤のギャラリーステージで大きくタイムロスした鎌田が3位となり、表彰台はトヨタ86とスバルBRZが独占した。
ベテランの石田雅之が逆転優勝
JN2クラスは、第3戦から2連勝を挙げている川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)が、今回も好調をキープしてSS1からベストタイムを次々と重ね、リードを広げる。だが、豪雨に見舞われたSS9で大きくタイムダウン。それまで2番手につけていた石田雅之/遠山裕美子組(トヨタ・ヴィッツRS)に逆転を許し、2番手で初日を終えた。6.6秒差で迎えた2日目、川名は再びベストタイムを連発して、石田との差を0.9秒差まで詰め寄ってくる。最後まで息詰まる勝負となった優勝争いは、終盤の2本のSSで石田がベストタイムを連発。リードを4.7秒差まで広げた石田が、4年ぶりの出場となる全日本ラリーで優勝を獲得した。2位には川名、3位にはベテランの岡田孝一/漆戸あゆみ組(マツダ・デミオ)がそれぞれ入賞した。
RX-8が全日本ラリー初優勝
初日の序盤は、JN2クラスからJN1クラスに移ってきた中西昌人/北川紗衣組(ダイハツ・ストーリア)がリードしたJN1クラスは、開幕戦にマツダRX-8を投入した難波巧/石下谷美津雄が中西を逆転してトップに浮上してくる。「開幕戦は暫定仕様でしたが、今回はサスペンションを中心にかなりセッティングが進みました」という難波が、2日目も逃げ切り今季初優勝。さらに、RX-8の全日本ラリー初優勝を獲得する結果となった。一方、シリーズランキングトップの松岡竜也/縄田幸裕組は、SS1で3速ギヤと4速ギヤを破損。1速と2速と5速ギヤしか使えないという状況だったが、しっかりと2位に入賞してシリーズポイントを重ねた。また、3位には豪雨のステージでベストポイントを獲得した鷲尾俊一/内田園美組が入賞した。
昨年の開幕戦以来、着々と参加台数を伸ばしてきているトヨタ86だが、ついにスバルBRZも全日本ラリーに出場してきた。昨年はオープンクラスに出場したことはあるBRZだが、選手権クラスのJN3クラスでは初となる。ステアリングを握る鎌田卓麻は、かつて海外ラリーで腕を鍛えたドライバーのひとりだ。
「まだ暫定的なセッティングの状態なのですが、予想通りのパフォーマンスを発揮することができて、まずはひと安心しています。本当は3位じゃなく優勝したかったんですけどね(笑)。今までFRでラリーを走ったことはありませんが、それほどドライビングに苦労することはなかったですね。全日本ラリーでは、トラクション性能をうまく活かしたスムーズな走りのドライバーが多いですけど、僕は自分の持ち味でもある積極的にクルマを動かしてドリフトするような走り方でタイムを出していきたいです。期待してください」と鎌田。
一方、雨のステージで好タイムを連発して優勝したGAZOO Racingラック86の横尾芳則に、ウエット路面での86の走り方を聞いてみた。「ウエット路面といっても、雨の降り方によって走り方が少し違ってきますが、基本的には雨の場合は、“急”な操作はしないように心掛けています。それと、今回のようなヘビーウエット路面の場合は、攻めるコーナーと抑えるコーナーをしっかりと見極めることが大切だと思います。それと、少しでも短い時間で見極めること。素早く判断することがタイムに直結するし、抑えるのか攻めるのかどちらでもない中途半場な走り方が、一番タイムが出ない走り方だと思いますね」と横尾。
全日本ラリーで着々と台数を増やし、優勝争いを展開している86/BRZ。今後はその活躍とともに、“兄弟車対決”にも注目だ。
※クラス区分の説明については、こちらを参照
クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
---|---|---|---|
JN4 | 1 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX |
2 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ | |
3 | 石田 正史/草加 浩平 | 三菱ランサーエボリューションX | |
JN3 | 1 | 横尾 芳則/木村 裕介 | トヨタ86 |
2 | 三好 秀昌/保井 隆宏 | トヨタ86 | |
3 | 鎌田 卓麻/竹原 静香 | スバルBRZ | |
JN2 | 1 | 石田 雅之/遠山 裕美子 | トヨタ・ヴィッツRS |
2 | 川名 賢/小坂 典嵩 | トヨタ・ヴィッツRS | |
3 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 難波 巧/石下谷 美津雄 | マツダRX-8 |
2 | 松岡 竜也/縄田 幸裕 | ダイハツ・ストーリア X4 | |
3 | 葛西 一省/内田 園美 | ダイハツ・ストーリア |