第6戦 第49回大阪電通大チャリティラリー 丹後半島ラリー2013
逆転に次ぐ逆転劇 奴田原選手が今季3勝目を獲得 JN3クラスはGAZOO Racingラック86が3連勝を達成
第6戦を迎えた全日本ラリー選手権は、8月23日(金)~25日(日)に京都府の北に位置する京丹後市で開催された。昨年、全日本の1戦として新たにスケジュールに加えられたこのラリーは、丹後半島を縦断するターマック(舗装路)の林道を舞台に戦われる。
昨年は道幅が広い2車線の林道にスペシャルステージ(SS)を多く設定していたが、今年は新たに道幅が狭くトリッキーなコーナーが連続する林道ステージを用意。特徴が異なるステージが組み合わされ、昨年以上に攻略が難しいラリーとなった。
加えて、今年はラリー前日にコースを下見する「レッキ」が終わった後にゲリラ豪雨に襲われたため、路面コンディションが一変。特に新ステージには豪雨によって流れ出た土砂や枯葉などが路面に堆積してしまったため、今回のラリーの最大の難所ともなった。大会本番2日間の天気予報は雨。路面コンディションの難しさとともに、予報に対しラリー本番の天候をどう読むかも、勝敗の行方の大きな鍵を握ることとなった。
初日は、「雨が降る」と予想してウエット用タイヤを選択した奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)が、ゲリラ豪雨の影響が残りハーフウエット状態のSSで好タイムを連発し、ラリーをリードする。しかし路面が乾いたラリー中盤からはドライ用タイヤを装着した勝田範彦/足立さやか組(スバル・インプレッサ)が奴田原を逆転してトップに立つ。さらに初日の後半に入っても雨は降らず、ふたりの差は9.1秒まで拡大し、初日を折り返す。
2日目に入っても両者の作戦は変わらず、奴田原はウエット用タイヤ、勝田はドライ用タイヤを選択する。初日は路面コンディションが変わるほどの強い雨は降らなかったが、2日目は1本目のSS9スタート直前に強い雨が降り、路面コンディションが一気にウエットへと急変する。
ここで奴田原がベストタイムを奪う一方で、ドライ用タイヤの勝田はゴール直前で痛恨のスピンを喫しタイムダウン。初日のリードを一気にはき出すどころか、逆に奴田原に5.1秒のリードを許してしまう。ふたたびトップに立った奴田原はその後も勝田とのリードを広げ、トータル7.5秒差で今季3勝目を挙げた。
天候を読み切るが、勝負に負けた勝田
「まさか、勝田選手の得意なターマックラリーで2連勝できるとは思わなかった」と奴田原。一方の勝田は、逆転を信じていたチームのメカニックたちを気遣い「……ごめんなさい」と一言だけ言い残したが、その表情は悔しさに満ち溢れていた。結果的にはラリーの本番中に降った雨は勝田がスピンした2日目の早朝だけで、路面コンディション的にはドライ用タイヤを選択した勝田にも十分勝機はあっただけに、悔しい1戦となった。また、シリーズポイントで3位につける柳澤宏至/中原祥雅(スバル・インプレッサ)は、ブレーキトラブルとタイヤバーストのため今回は5位と低迷。同4位の石田もコースアウトでリタイアとなったため、タイトル争いは奴田原と勝田のふたりに絞り込まれることとなった。
2連勝中の横尾芳則が独走
初日のラリー前半は、第4戦から2連勝中の横尾芳則/船木一祥組(トヨタ86)と、昨年はシリーズ最終戦までタイトル争いを展開した三好秀昌/竹下紀子組(トヨタ86)と山口清司/島津雅彦組(トヨタ・カローラレビン)が1秒を争う好勝負となった。だが、山口がSS3終了後のラリーパークで体調不良を訴えリタイア。かわってトップに立った三好もSS6でコースアウトという波乱の展開となった。これで横尾がトップに立ち、曽根崇仁/桝谷知彦組(トヨタ86)が18秒差で追いかける展開となったが、2日目に入って横尾が一気にスパート。ウエット路面にタイヤが合わずペースが落ちた曽根との差を約1分に広げ、今季3勝目を挙げた。また3位には、初日の4位からひとつポジションを上げた香川秀樹/浦雅史組(ホンダ・インテグラ)が入賞した。
天野と川名が一歩も譲らぬ好勝負
JN2クラスは、第3戦から3連勝中の川名賢/小坂典嵩組(トヨタ・ヴィッツRS)に対し、3年連続チャンピオンの天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツG's RS)が、一歩も譲らぬ好勝負をみせた。SS1は天野がベストタイムを奪い、SS2は川名、SS3は天野といったようなふたりのスクラッチ・ファイトとなったが、初日は「マシンのセッティングを見直してきた」という天野が川名に対し2.8秒差のリードで折り返す。だが、2日目は「ドライ用タイヤで勝負に行きます」という川名が、最終SS手前のSS12で天野を捉えトップ奪取に成功。だが、「高速コーナーが多い最終SSはNCP131ヴィッツが最も得意とするところ」という天野が川名を逆転し、トップの座を奪還。最終的には3.3秒差という僅差で天野が今季2勝目を挙げた。
RX-8の難波巧が連勝、リーフが3位に
後輪駆動車、前輪駆動車、四輪駆動車、そして電気自動車という、駆動方式やクルマの性格が異なる5台で争われたJN1クラスは、中西昌人/北川紗衣組(スズキ・スイフト)がSS2で側溝に落ちてしまいリタイア。さらに小泉茂/小泉由起組(日産マーチ)が、TCで合計4分の遅着ペナルティを受けてしまい順位を下げるなか、「ノートラブルで走り切ることができました」と難波巧/石下谷美津雄組(マツダ・RX-8)が第5戦に続き2連勝を挙げた。また、2位にはパワーステアリングが効かなくなるというトラブルを抱えながらも最後まで走り切った鷲尾俊一/内田園美組(ダイハツ・ストーリアX4)が入賞。3位には、国沢光宏/木原雅彦組(日産リーフ)が入賞し、電気自動車が全日本で初の表彰台獲得という結果となった。
三好秀昌、粟津原豊、鎌田卓麻、横尾芳則、曽根崇仁、増川智など、全日本ラリーに出場しているトヨタ86/スバルBRZ勢は経験も実績も抱負なベテランドライバーが多い中で、異彩を放つ存在が、今年27歳になる阪口知洋だ。2010年に近畿ラリーチャンピオンシリーズのシリーズタイトルを獲得した阪口は、アジア・パシフィックラリーや全日本ラリーに参戦する「ハセプロワールドラリーチーム」の若手育成ドライバーに抜擢。昨年末からトヨタ86で全日本ラリーにスポット参戦している。
「FFでモータースポーツを覚え、4WDでタイトルを獲ることができましたが、FRに乗るのはトヨタ86が初めてなんです」という阪口は、「ハンドリングマシンと言われているだけあって、トヨタ86は本当によく曲がると思います。操縦性もクセがなく乗りやすいクルマですね」とトヨタ86の印象を語る。「でも、僕自身が経験不足ということもあって、どう走らせれば速く走れるのかというところは、まだまだ勉強中です」ということだ。
「ターマックが得意なんですが、逆にターマックで荒れた道は苦手なんです。今回のラリーもそういう道が多く、なかなか思うように走ることができませんでした」と、残念ながら今回は入賞まであと一歩のクラス7位という結果だった。
師匠役で、自らスバル・インプレッサでJN4クラスに出場している福永修は、「もっとアクセルを踏んでコントロールできるようにならないと、今の段階では上位入賞は難しいと思います。ターマックで育ってきているドライバーなのですが、クルマのコントロールを身につけるためには、グラベルを経験するのも良いんじゃないかと思っています。本人は楽しく走っているようなので、さらに楽しい方向で走れるように頑張ってほしいですね」とアドバイスを送る。「いつかは全日本の表彰台に上がれるドライバーになりたいです」と阪口。全日本を舞台に奮闘する若手ドライバーの成長に期待したい。
※クラス区分の説明については、こちらを参照
クラス | 順位 | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 |
---|---|---|---|
JN4 | 1 | 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 | 三菱ランサーエボリューションX |
2 | 勝田 範彦/足立 さやか | スバル・インプレッサ | |
3 | 高山 仁/河野 洋志 | スバル・インプレッサ | |
JN3 | 1 | 横尾 芳則/船木 一祥 | トヨタ86 |
2 | 曽根 崇仁/桝谷 知彦 | トヨタ86 | |
3 | 香川 秀樹/浦 雅史 | ホンダ・インテグラ | |
JN2 | 1 | 天野 智之/井上 裕紀子 | トヨタ・ヴィッツRS G's |
2 | 川名 賢/小坂 典嵩 | トヨタ・ヴィッツRS | |
3 | 岡田 孝一/漆戸 あゆみ | マツダ・デミオ | |
JN1 | 1 | 難波 巧/石下谷 美津雄 | マツダRX-8 |
2 | 鷲尾 俊一/内田 園美 | ダイハツ・ストーリア X4 | |
3 | 国沢 光宏/木原 雅彦 | 日産リーフ |