〜片山右京/鈴木利男/土屋圭市+由良拓也対談〜1999年レジェンドトリオがル・マンを語る 第2回(2/2)

「再び走り出した瞬間、グランドスタンドから
「ゴー」ってすごい音が聞こえた」

由良拓也

土屋 あの時は2位もなくなったと思ったな。『終わった。ああ、終わりだ。終わっちゃった』って。ミュルサンヌの先でバーストして、帰って来られるわけがないから。

由良 でも、無事にピットに戻りクルマの修復作業が始まりましたね。

片山 僕はコクピット内で待機していたんですが、すごくゆっくり作業をやっているような気がして、その時間が永遠に感じられた。実際には後ろとの差は十分あって大丈夫だったみたいですが。そしてクルマが直り「無理をするな、何かあったらもう1回ピットに入ってこい。多分大丈夫だから」ってドアを閉められて再び走り出した瞬間、グランドスタンドの方から「ワーッ」ていう大歓声が聞こえて、すごい鳥肌が立ちました。

由良 放送席の僕らも鳥肌でしたよ。グランドスタンドから「ゴー」ってすごい音が聞こえた。

片山 スタンディングオベーションみたいに立って拍手をしてくれる姿も見えて、あれは嬉しかったですね。(ピットから)出る前に計時モニターを見たら順位が下がっていないから『え?』って。もっと下がってると思っていましたから。

鈴木 オレなんか、あそこまでやったんだから順位はもうどうでもいいやという感じでしたけどね。

片山右京

「最後まで完走できるのかと、
最後のほうはもうヒヤヒヤドキドキでしたよ」

片山右京

片山 ちゃんと全部直ってると思い、また追っかけてもう1回トップのクルマを抜いてやろうと考えていたんです。だけど、走り出してすぐパワーがまるでないことがわかった。バーストした時に左のターボをやっちゃったんです。ピットでタービン交換をすると言ってたけど、結局直らずシングルターボのままだった。 がんばっても3分53秒とかしか出なかったけど、走りかたを変えスムーズにしたら3分47秒とか出て、最後は3分43秒までいったかな?

由良 シングルターボの状態でですか!?

片山 "意外と俺速いな"って(笑)。でも、後ろがどれぐらい離れてるのかとか、本当に最後まで完走できるのかとか、どっかで止まったりはしないのかとか心配でしかたなかった。最後のほうはもうヒヤヒヤドキドキでしたよ。

由良 ピットからのインフォメーションはなかったんですか?

片山 なかったですね(笑)。