WEC

世界と戦うジャパンパワー 中嶋一貴編 vol.8

バーレーンでも良いレースができるはず

世界と戦うジャパンパワー 中嶋一貴編 vol.8 バーレーンでも良いレースができるはず

こんにちは、中嶋一貴です。先日、中国の上海でおこなわれたFIA世界耐久選手権(WEC)第8戦上海6時間レースは、僕たちTS050 HYBRID#5号車のスタッフにとっては今シーズン最高のレースになりました。今年は苦しいレースばかりが続いたのですが、やっと表彰台に上ることができました。やはりレースは勝たないと駄目ですね。その点、今年はフラストレーションの溜まった年でしたが、上海の表彰台で少し気分が持ち直した感じです。

実は、上海国際サーキットは僕らのTS050 HYBRIDにはあまり向いているサーキットとは言えないかもしれません。富士のレースでは僕らも過去、素晴らしい成績を残していますし、今年は#6号車が今季初優勝を飾ってくれました。そう、この成績に見るように富士スピードウェイは我々の車両に適したコースなんです。でも、上海のコースはどうも苦手のようです。2本の長いストレートとリズムをとるのが難しそうなコーナーの組み合わせで、どちらかと言うと低ドラッグ(空気抵抗)のTS050 HYBRIDはストレートは速いんですが、コーナーでももう少し速さを上げる必要があり、本来の持てる力を全部出し切ることが難しいコースです。

それでも、金曜日から始まった公式練習で、少しずつコースに合う車両セッティングを進めることが出来るようになってきました。午前中の公式練習1回目はタイムも全体で3番手の1分47秒445を記録でき、#6号車の前に付けることが出来ました。トップタイムはポルシェの#1号車で、彼らは走りはじめから速く、ここでも0.7秒ほど差を付けられました。

上海サーキットはタイヤにきついサーキットで、公式練習での走行時間のほとんどが用意されたタイヤの評価とタイヤに合わせた車両のセッティングに費やされました。走行が続くと、タイヤのゴムが削られたカス、僕たちはマーブルというのですが、そのマーブルが沢山落ちます。走行ラインを外すとそのマーブルがタイヤに付着して、グリップが無くなり、とてもタイムアタックを行える状態ではなくなります。ですから、予選でタイムアタックをするときはもちろん、練習走行でも気をつけて走行ラインを外さないように走ることが重要なんです。

金曜日の午後の公式練習2回目では1分46秒812で4番手タイム、#6号車は6番手でした。トップは相変わらずポルシェ#1号車。我々のタイムより2秒以上速いタイムでした。

土曜日には公式練習3回目と予選がありました。土曜日の午前中の公式練習3回目の時点では、まだ満足いく車両のセッティングを仕上げきれなかったため、トップのアウディ#8号車から1.1秒遅れの1分45秒663で6番手に甘んじ、3メーカーの競争の熾烈さを痛感。午後の予選に向けては、公式練習3回目でタイムが良かった#6号車とデーターを突き合わせて情報共有しながら車両を調整し直した結果、今期、予選で最上位の2番手グリッドを獲得することができました。予選は2人のドライバーのベストタイムの平均です。まずセバスチャン(・ブエミ)がアタックして1分44秒902をマーク、そして次に僕が引き継ぎ1分44秒677のタイムを出すことが出来ました。路面コンディション良くなったので、もう一度セバスチャンがアタックを行ったところ、1分44秒368までタイムを伸ばし、最終的に1分44秒522の平均タイムでトップと0.06秒という僅差で2番手グリッドが手に入ったのです。ほんの僅かの差でポールポジションを逃したのは少々残念かなという気もしますが、一方、6時間という長いレースでは予選順位はそれほど重要ではないという考えもあり、いずれにせよ、久しぶりの最前列からのスタートになり、少し気持ちが良かったです。

さて、決勝レースが、結果からお知らせすると3位入賞! 今年初めての表彰台でした。スタートはセバスチャンが担当でしたが、第1コーナーまでにハイブリッド・ブーストを使ってポールポジションのポルシェ#1号車を抜き去って先頭に立ちました。ピットのガレージにいたチームスタッフは全員が大喜び。その後の直線でポルシェに抜き返されましたが、我々の車両が十分な速さを持っていることが証明されたわけです。

レースは最後まで厳しい接戦でした。途中、特にタイヤが摩耗し始めてくると#6号車のペースが良く、僕らを抜き去り、トップを追走して行きました。彼らの気合いを感じる走りでした。第8戦を控えて、#6号車の3人のドライバーはポルシェ#2号車のドライバーから遅れること23点でドライバーズ選手権2位に着けていました。チャンピオンを取るためには彼らは最大限のポイントを取る必要があります。

今回、その成果が出て#6号車は見事2位でゴールし、ポルシェ#2号車との差を17点に縮めました。次の最終戦バーレーンでは、TOYOTA GAZOO Racingの2台はどちらも勝てる位置にいなくてはいけません。ここまで来ると#6号車には是非頑張って欲しいと思います。

上海6時間レースはポルシェ#1号車の勝利で幕を閉じました。しかし、1分足らずの差で#6号車が2位に入り、僕たちの#5号車はその後ろで3位に入賞しました。#6号車との差は僅か6秒2でした。最後まで接戦の厳しいレースでしたが、今年初めて表彰台に上ることができて最高に嬉しかったです。次のバーレーンはTS050 HYBRIDにとって得意なコースです。僕らももう少し良いレースができるはずです。応援よろしくお願いします。

  • 上海インターナショナルサーキットを走行するTS050 HYBRID 5号車
  • 夕焼けの上海インターナショナルサーキットを走行するTS050 HYBRID 5号車
  • ピットアウトするTS050 HYBRID 5号車
  • 上海インターナショナルサーキットを走行するTS050 HYBRID 5号車
  • ドライバー交代をするTS050 HYBRID 5号車
  • WEC上海スタートシーン
  • 決勝レースを戦うTS050 HYBRID 5号車
  • 表彰台へ向かうTOYOTA GAZOO Racingのドライバーたち

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