WRC

2017シーズン インタビュー Vol.4

Esapekka Lappi

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team
ドライバー エサペッカ・ラッピ

“フィンランドは表彰台くらいは期待していた。まさか勝てるなんて夢にも思っていなかったよ”

「まだまだ学習中」

─シーズン前半は、ヤリスWRCに慣れるための1年と話していました。実際、どれくらいのタイミングでWRカーを自在に操れるようになりましたか?
「2戦目となったサルディニアのオープニングステージでベストを獲った。つまり、慣れるまでにそれほど時間がかからなかったってことだね(笑)。同時にヤリスWRCがドライブしやすいマシンという証明にもなると思う。僕はこれまでも比較的早く、新しいマシンに自分のドライビングスタイルを順応させてきた方だと思うけど、ヤリスWRCには難なく移行できた。本当に乗りやすいマシンだよ」

─ヤリスWRCの長所を教えてください。
「長所はふたつある。ひとつはエンジン、もうひとつはエアロダイナミクスだね。エンジンは言うまでもないけど、本当にパワフル。そして、エアロダイナミクスの効率も素晴らしいよ。来シーズンは特にフロントの空力パッケージが変更される。フロントのダウンフォースがかなり増えるんじゃないかな。実はリヤと比較すると、フロントのダウンフォースに少し不満があった。18年仕様はそのあたりがかなり改善される」

─課題はフロントの空力以外に何かありますか?
「フロントのダウンフォースも課題と言うほどじゃない。基本的にすべてのコンポーネンツが高いレベルを持っている。これからはもっとディテールにこだわっていくことになるだろうね。例えば、ヤリスWRCはミッキーマウスステージ(ツイスティな市街地SSなど)を苦手としている。短いステージだし、大した問題じゃないかもしれないが、ああいったステージではまずベストを獲れないんだよ」

─ドイツで顕著でしたね。
「そうだね。あとはオーストラリアも厳しかったよ。あのテのステージを5回も走る必要があったからね。あの短いステージだけで、トータル10秒くらい失ってしまった」

─改善策は見えていますか?
「センターデフの改良だね。かなり真剣に取り組む必要がある。センターデフの進化が、来シーズン成功のキーポイントになるはずだ」

─18年仕様はテストしましたか?
「スペインでテストしたよ。前後のバランスがかなり変わったのは確かだ。ステアリングを少し切れば、フロントに大きなダウンフォースが発生するのが分かる。セットアップとマシンバランスをかなり変える必要がありそうだ。オーストラリア前に1日テストしただけだから、まだ分からないことは多いけどね」

─18年はオット・タナクがチームに加入しますね。
「今年、3人のフィンランド人ドライバー間にあった、独特で特別な空気感はなくなるのかもしれない。なぜだか分からないけど僕ら3人はすごく相性が良かったんだ。ただ楽しくて、居心地が良くて、必要な時は真剣に向き合った」

─トヨタの3人は、いつも笑い合っている印象がありました。
「数分の休憩時間でもくだらない冗談を言い合ったりしていたんだ。少しの間ラリーのことを忘れることも、時には重要なことだからね。オットも似たような感じの人物だと思う。エストニア人とフィンランド人は本当によく似ているんだよ。だから問題にはならないはず。オットはスピードを持ったドライバーだから、チーム内の競争は激しくなるだろうな」

─色々な影響をチームにもたらしそうですね。
「そうだといいね。秘密があっても、シェアしてもらわないといけないな(笑)。それがこのチームの哲学なんだ。今年の僕らは何もかもをシェアしていた。ヤリ-マティは『僕らはすべてをシェアし、互いに助け合おう。裏ではなく、ステージで違いを見せよう。そうでなければチームのためにならない』と言ってくれた」

─あなた自身、タイトルを狙っていきますか?
「まだ学習中の身だよ(笑)。実はメキシコやアルゼンチンに参戦したことがないからね。レッキはやったけど、WRC2でも走ったことがないから、実戦は完全に初体験になる。経験豊富なドライバーに対抗するのはかなり難しいだろう。それを忘れないようにしないといけない。でも、どこかで優勝はしたい。もう一度、フィンランドで勝ちたいんだ」

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