ヤリスWRC 大図解~380馬力オーバーのモンスターVitz~
エアロパーツ
2017年の学びを活かし、
進化した大迫力デザイン
大きく張り出したサイドシル(ドアの下の部分)、巨大なリアウィングなど、大迫力のエアロパーツに身を包んだヤリスWRC。その形状にはひとつひとつ、重要な役割があります。
前方がえぐられたサイドシル(ドアの下の部分)は、車体と地面の間に入り込んだ空気をサイドに逃がして、車体の浮き上がりを抑えます。二重になったリアウィングはルーフに沿って流れた空気を捉え、強力なダウンフォース(地面に押さえつける力)を発生。空気の力によってタイヤを地面に押さえつけることで、エンジンから絞り出される大出力を可能な限り路面に伝えます。
また、2018年には、フロント周りの空力パッケージ改良し、更なるダウンフォースを得ることで走行安定性を向上しています。
競技用ヘッドライト
道路の起伏を描き出す6連ライト
競技が夜間に行われる場合は、ほとんど灯りのない真っ暗闇の中を時には時速200km近くで駆け抜けなくてはなりません。
そこで、ボンネットの上に「ライトポッド」を装着。6つのライトと左右のコーナリングライトで進路を照らします。
一般車のヘッドライトより遠くまで、道路の起伏を分かりやすく描き出すような配光が工夫されています。
エアコン
天井から取り入れる風がエアコン代わり
ラリーに必要ない装備は一切なし。ということで、もちろんWRカーにエアコンはありません。
さらに、ドアの窓も市販車のように大きく開かない構造。
そこで屋根に取り付けられた空気取り入れ口(ルーフベンチレーター)からの外気で室内を冷やします。
さらにシート脇には、トレーナーが用意したスポーツドリンクを入れた水筒を装着。
いつでもストローで飲めるようになっています。
ブレーキ
コースに合わせてブレーキを選択
コースや路面の状態によってブレーキに求められる性能は異なります。舗装路(ターマック)では制動力が強いブレーキディスクを装着。一方、路面が滑りやすく大きな制動力を必要としないグラベルでは、ターマックよりも小さいブレーキディスクを装着します。
シートベルト
強力な
シートベルトで
全身をがっちり固定
フル加速やハードなブレーキング、高速でのコーナリング、そして大ジャンプと、前後左右上下、あらゆる方向から大きな力が加わるWRカー。どんな状況でも正確に運転するため、肩、腰、そして大腿部を固定するシートベルトでドライバーをしっかりとシートに固定します。
車載工具
走行中のトラブルはドライバーが応急処置
走行中のアクシデントに対応するため、工具、スペアタイヤ、消火器などの搭載が義務づけられています。競技中に故障やパンクなどのアクシデントが発生した場合、基本的にメカニックが助けることはできません。ドライバーとコ・ドライバーが協力し、自らのマシンを修理して走行を続けることもあります。
メカニック
足回り交換は5分程度!
整備性も大事な性能のひとつ
悪路を走るラリーでは、走行中に障害物にヒットしたり、マシンにトラブルが発生したりすることも少なくありません。そんなときは次のスタート時間までの短時間に、大急ぎの修理がはじまります。
WRカーは、修理や整備がしやすいよう設計段階から考えられています。例えば、ナットを締める箇所には工具を差し込む隙間も確保。短時間で修理やパーツ交換ができるよう考えられています。このため、訓練されたメカニックなら、5分程度でフロントの足回り一式を交換してしまいます。
普段は一般車が行き交う舗装路から、荒れた砂利道、雪道まで。世界中の道路を舞台に戦う世界最高峰のレースWRC。走行性能はもちろんのこと、
あらゆる路面に対応する柔軟性や、最後まで走りきる耐久性など、クルマの総合力が問われます。そして、それこそがクルマを磨き上げるために最高の試練となるのです。「もっといいクルマ」を作るために。それが、TOYOTA GAZOO Racingがこの過酷なレースに挑戦する理由です。