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スーパーフォーミュラ 2017年 レース車両解説

スーパーフォーミュラ 2017年 レース車両解説

"クイック&ライト"のSF14を2017年も使用
ADVANタイヤも2年目となり、さらに進化する

 スーパーフォーミュラ車両は2014年にSF14のパッケージなってから、テクニカルレギュレーション(車両規定)は基本的に変更がない。レース車両はイタリアの有力コンストラクターであるダラーラ社が製造するSF14シャシーに、NRE(ニッポン・レーシング・エンジン)と呼ばれる2000ccの直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載する。
 車両自体には大きな変更は無かったが、昨年からタイヤのオフィシャルサプライヤーが横浜ゴムとなり、参戦全車が同社製の"ADVAN(アドバン)"タイヤを装着することになった。このため、2016年シーズンは新たなタイヤの特性をドライバーやエンジニアが理解する苦労があった。だが2シーズン目となる2017年は、データの蓄積が進みよりハイレベルな戦いになっていきそうだ。
 スーパーフォーミュラを統括する日本レースプロモーション(JRP)が掲げたSF14の基本コンセプトは"クイック&ライト"。つまり、よりフォーミュラカーらしい軽量(ライト)で俊敏(クイック)な運動特性を重視している。
 フォーミュラ・ニッポン時代の2009年からスーパーフォーミュラ初年の2013年まで使用されたFN09/SF13では、エンジンは3400ccのV型8気筒を搭載し、空力重視から幅広な車両であった。これに対し、直列4気筒2000ccターボのSF14は非常にスリムだ。車両重量においても、SF13が最低712㎏(ドライバー体重込み)に対し、SF14の最低重量は660㎏と50㎏以上も軽くなっている。

 SF14の直列4気筒2000ccターボエンジンの最高出力は550馬力以上とされ、SF13での3400ccのV型8気筒より少し低い。だが、車両全体としては軽量化のメリットもあり、2年間で全サーキットのコースレコードが更新された。このエンジンは1シーズンの途中で1回だけハード的なバージョンアップが許されている。
 パワーの制限に関しては、燃料流量リストリクターを使用。NREでは、これまでの回転数の最高を制限するやり方ではなく、エンジンに供給される燃料の流量を制限することでパフォーマンスの制限を行っている。これは、ガソリンをより多く燃やすことでパワーアップを図るのではなく、燃焼効率(熱効率)を高めることでパワーアップを図る技術だ。そして、この技術が市販車エンジンの環境技術にフィードバックされることになる。
 またスーパーフォーミュラ独自の「オーバーテイク・システム」でも、この燃料リストリクターを活用。ドライバーがボタンを押した後、燃料流量を20秒間、一定量引き上げることで出力を増大する仕組みになっている。

 2017年シーズンもトヨタはスーパーフォーミュラの規定に合わせたNRE、2000cc直列4気筒の直噴ターボの"RI4A"を供給し、ユーザーチームのタイトル獲得を支援する。
 4年目を迎えたNREでは、ターボが1サイズ拡大され、RI4Aもこれに準じている。NREは燃焼効率を高める3年間の開発により、これまでのターボでは空気が足りない状況までになった為、ターボが大型化された。そのためサイドポンツーン上に煙突のように飛び出す"チムニー"と呼ばれるエンジン吸気孔の形状を変更。また、サイドポンツーンのラジエーター開口部を大型化し冷却効果を向上させるなど、出力アップに対応する改良も実施した。さらに燃料噴射ポンプのカムもSUPER GTと同じパーツを使用することになり、低回転域でのトルク特性が変更された。
 ターボの大型化は、ターボラグ(アクセル開閉のレスポンス遅延)拡大も懸念されたが、シーズン前のTOYOTA GAZOO Racingによる研究開発で、この部分の対策が進められ、3月の事前テストでドライバーから根本的なドライバビリティに対する不満は聞かれなかった。

2017年シーズンを戦うSF14

エンジン

  • エンジン型式

    RI4A

  • 排気量

    2,000cc

  • 気筒数

    直列4気筒直噴

  • 過給器

    ターボチャージャー(ギャレット製)

  • 重量

    85kg

  • 出力

    550馬力(405kw)以上

  • 出力制限方法

    燃料リストリクターによる燃料流量制限

シャシー

  • 車両名称

    ダラーラSF14

  • 全長

    5,268mm

  • ホイールベース

    3,165mm

  • 全幅

    1,910mm

  • 全高

    960mm

  • 最低重量

    660kg(ドライバー搭乗時)

  • ギアボックス

    リカルド前進6速/パドルシステム

  • ブレーキ

    ブレンボキャリパー&ブレンボカーボン製ディスク

  • ステアリングシステム

    KYB電動パワーステアリングシステム

  • フロントサスペンション

    プッシュロッドトーションバースプリング

  • リアサスペンション

    プッシュロッド