RACING CAR
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スーパーフォーミュラ 2017年 レース車両解説

エンジン
エンジン型式
RI4A
排気量
2,000cc
気筒数
直列4気筒直噴
過給器
ターボチャージャー(ギャレット製)
重量
85kg
出力
550馬力(405kw)以上
出力制限方法
燃料リストリクターによる燃料流量制限
シャシー
車両名称
ダラーラSF14
全長
5,268mm
ホイールベース
3,165mm
全幅
1,910mm
全高
960mm
最低重量
660kg(ドライバー搭乗時)
ギアボックス
リカルド前進6速/パドルシステム
ブレーキ
ブレンボキャリパー&ブレンボカーボン製ディスク
ステアリングシステム
KYB電動パワーステアリングシステム
フロントサスペンション
プッシュロッドトーションバースプリング
リアサスペンション
プッシュロッド
"クイック&ライト"のSF14を2017年も使用
ADVANタイヤも2年目となり、さらに進化する
スーパーフォーミュラ車両は2014年にSF14のパッケージなってから、テクニカルレギュレーション(車両規定)は基本的に変更がない。レース車両はイタリアの有力コンストラクターであるダラーラ社が製造するSF14シャシーに、NRE(ニッポン・レーシング・エンジン)と呼ばれる2000ccの直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載する。
車両自体には大きな変更は無かったが、昨年からタイヤのオフィシャルサプライヤーが横浜ゴムとなり、参戦全車が同社製の"ADVAN(アドバン)"タイヤを装着することになった。このため、2016年シーズンは新たなタイヤの特性をドライバーやエンジニアが理解する苦労があった。だが2シーズン目となる2017年は、データの蓄積が進みよりハイレベルな戦いになっていきそうだ。
スーパーフォーミュラを統括する日本レースプロモーション(JRP)が掲げたSF14の基本コンセプトは"クイック&ライト"。つまり、よりフォーミュラカーらしい軽量(ライト)で俊敏(クイック)な運動特性を重視している。
フォーミュラ・ニッポン時代の2009年からスーパーフォーミュラ初年の2013年まで使用されたFN09/SF13では、エンジンは3400ccのV型8気筒を搭載し、空力重視から幅広な車両であった。これに対し、直列4気筒2000ccターボのSF14は非常にスリムだ。車両重量においても、SF13が最低712㎏(ドライバー体重込み)に対し、SF14の最低重量は660㎏と50㎏以上も軽くなっている。
SF14の直列4気筒2000ccターボエンジンの最高出力は550馬力以上とされ、SF13での3400ccのV型8気筒より少し低い。だが、車両全体としては軽量化のメリットもあり、2年間で全サーキットのコースレコードが更新された。このエンジンは1シーズンの途中で1回だけハード的なバージョンアップが許されている。
パワーの制限に関しては、燃料流量リストリクターを使用。NREでは、これまでの回転数の最高を制限するやり方ではなく、エンジンに供給される燃料の流量を制限することでパフォーマンスの制限を行っている。これは、ガソリンをより多く燃やすことでパワーアップを図るのではなく、燃焼効率(熱効率)を高めることでパワーアップを図る技術だ。そして、この技術が市販車エンジンの環境技術にフィードバックされることになる。
またスーパーフォーミュラ独自の「オーバーテイク・システム」でも、この燃料リストリクターを活用。ドライバーがボタンを押した後、燃料流量を20秒間、一定量引き上げることで出力を増大する仕組みになっている。
2017年シーズンもトヨタはスーパーフォーミュラの規定に合わせたNRE、2000cc直列4気筒の直噴ターボの"RI4A"を供給し、ユーザーチームのタイトル獲得を支援する。
4年目を迎えたNREでは、ターボが1サイズ拡大され、RI4Aもこれに準じている。NREは燃焼効率を高める3年間の開発により、これまでのターボでは空気が足りない状況までになった為、ターボが大型化された。そのためサイドポンツーン上に煙突のように飛び出す"チムニー"と呼ばれるエンジン吸気孔の形状を変更。また、サイドポンツーンのラジエーター開口部を大型化し冷却効果を向上させるなど、出力アップに対応する改良も実施した。さらに燃料噴射ポンプのカムもSUPER GTと同じパーツを使用することになり、低回転域でのトルク特性が変更された。
ターボの大型化は、ターボラグ(アクセル開閉のレスポンス遅延)拡大も懸念されたが、シーズン前のTOYOTA GAZOO Racingによる研究開発で、この部分の対策が進められ、3月の事前テストでドライバーから根本的なドライバビリティに対する不満は聞かれなかった。