WEC 参戦記 2017 中嶋一貴編 vol.3
「来年は必ず表彰台の真ん中に社長とともに立ちたい」
中嶋一貴です。必勝を期して望んだ今年のル・マンでしたが、またまた残念な結果に終わってしまいました。今年こそ行けると見ていましたが、甘くありませんね。
6月4日(日)に行われたテスト・デーでは良い感触を掴んでいました。走行1日目、14日(水)の公式練習では、自分の最初のアタックで遅い車両に引っかかったのですが、2回目のアタックは上手くタイムを上げることが出来ました。テスト・デーと路面が変わり、もう少しタイムを期待したかったところですが、クルマは行けそうな感触は掴みました。ただ、ライバルも調子を上げてきました。レースは厳しいものになりそうです。公式練習走行の時間帯は気温が凄く高かったせいだろうと思いますが、あまりタイムは伸びませんでした。温度が少し違うだけでタイヤを含めたクルマの調子は変わってしまいます。
夜の公式予選1回目では気温も下がり、結果はまずまずで、7号車に次いで2番目のグリッドを獲得出来ました。長い耐久レースで予選グリッドはあまり重要ではないとも思いますが、やっぱり、これから戦うぞというときに前の方にいることは、気分的に違います。今回は2台のTS050 HYBRIDが最前列を独占で、ライバルを上回ることが出来たのは良い気分でした。
しかし、走行2日目夕方の予選2回目、開始早々に、セバスチャン(・ブエミ)のタイムアタック中にエンジン不調に見舞われて、ユノディエールの直線の終わりでスローダウン。後ろから速いクルマがどんどん来るので、セバスチャンは怖かったと思います。でも、無事にモーター走行でピットまで帰って来られたので、夜の予選3回目に向けてエンジン交換ができました。あのタイミングでよかったと思います。
それにしても、コース上に遅いクルマが多いこととイエローゾーンの多さには閉口しました。セバスチャンが、どうして他のレース同様にLMPとGTを分けて予選をやらないんだと怒っていました。まったくその通りだと思います。ストレートはまだしも、コーナーで前に遅いGTがいるとアクセルを閉じざるを得ません。今回の予選は滅茶苦茶でした。
エンジン交換のせいで予選2回目の走行時間帯で予定していたプログラムを幾つか行うことができませんでした。でも、クルマの調子もよかったし、最終的にレースのスタート位置も最前列でしたので、良い形で予選を纏められたと思います。
しかし、決勝レースは期待通りにいきませんでした。実は、今年のレースでは参加したLMP1-Hの5台、トヨタ3台とライバルの2台ですが、全車トラブルに見舞われました。今年は昨年に比べて空力性能を大幅に落とすようなレギュレーションで、タイムは落ちるはずだったのが、実際には昨年のタイムを遙かに上回るタイムが出ました。これに見るように、LMP1-Hを開発しているメーカーは、本当にギリギリまで限界を詰めて来たのだと思います。それが、予測しなかったトラブルを引き起こしたとしか考えられません。
決勝レースは予選に輪をかけた厳しさでした。日没後すぐにフロント・モーターが壊れて、交換に随分と時間がかかりました。安全を配慮してフロント・モーターは奥まった場所に搭載されており、その交換には時間がかかります。しかし、その時間が長くかかるということで、その間に念のためにバッテリーも交換しました。バッテリー自体にはトラブルがあったわけではありませんが、念のためです。結局2時間近くが修理に費やされました。他の2台がリタイアしたので、我々の8号車1台だけでも完走したことは喜ばしいことだと思うようにしています。3台とも潰れていたら本当に辛い結果になってしまうところでした。
修理からレースに復帰したときはほとんど最下位に近かったのですが、チーム全員の努力で9位(最終的には上位車の失格があり8位)まで挽回、LMP1-Hクラスの2位に入りました。といっても完走したのは総合優勝のライバルと我々の2台だけでしたが...。クラス表彰のときには豊田章男社長に一緒に表彰台に上がってもらいました。中央には立てませんでしたが、次は必ず表彰台の真ん中に社長とともに立ちたいと考えています。来年のル・マンには全力を尽くして臨みます。応援、宜しくお願いします。